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■ 風雲相討学園フラット

18禁を求める奴は、こうだ!
作者[ yizumi さま (相討ちネガティブギャング) ]
ジャンル[ トンデモ学園恋愛ADV ]
容量・圧縮形式[ 33.6MB・ZIP ]
使用ツール[ NScripter ]
ダウンロード 作者様HPへ

サービスシーン・その1 サービスシーン・その2 我らが番長は、ピンでサービスだ!

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 10/10 7 /10 103/120 B
ckck 7 /10 10/10 6 /10
或野 吟山 9 /10 10/10 8 /10
赤松弥太郎 9 /10 10/10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:10 サウンド:7

恋愛とは闘い!心と心のぶつかり合いだ!!

ハマリ度:9/10
ブッ飛んだストーリー、ブッ飛んだキャラクター、それでいて恋愛ADVの基本は余すところなく備えている。
ギャルゲー初心者も、ギャルゲーマスターJも楽しめること請け合いである。
…ちなみに、「ギャルゲーって全部こんなのなんだ。」と思ってもらっては困りますよ。管理人も良く知りませんが。
グラフィック:10/10
理屈抜きで、これには満点を挙げるべき。
健康的にヤらしさを見せる作者の手腕は、純粋に賞賛に値する。
サウンド:7/10
あまり印象に残らないのは、他の作品でも使われているフリー素材ばかりを使用しているためであろうか。
それとも、他の部分が強すぎるからであろうか。

■ マンガチックな序文

恋愛モノと言うジャンルは、(他のジャンルと比べて)比較的書きやすいものです。セオリーに則って書いても、いや、むしろセオリーをセオリー通りに書いた方がファンの人気が高くなるジャンルです。
「AIがとまらない」→「ネギま!」のシリーズなんか、まさにソノモノですし、かつて禁断の錬金術に手を出した某漫画家が、現在ラブコメで大絶賛を浴びていることからも明らかでしょう。

しかし、それ故の個性の出しづらさも、恋愛モノの特徴です。
あらゆる雛形が同ジャンルおよびより過激なジャンルで発表されている昨今、「個性」と呼べる物を出すには、それこそヒロインを父親または右手にする以外にありません。

今回紹介する「風雲相討学園フラット」(以下、「フラット」)も、作者の個性をバリバリに出した、ブッ飛んだ作品です。
どのくらいブッ飛んでいるのかは、赤松氏のレビューを読めば、イヤと言うほど痛感できると思いますので、私からは余り触れません。
それと同時に、「フラット」は、恋愛シミュレーションを、よりマンガチックに(リアルに、ではない)楽しめるようにした意欲作でもあります。
私からは、その「マンガチック」な点を中心にレビューしたいと思います。

■ マンガチックなキャラクター

所詮、ゲームキャラはCGと数値の構造体。その点で言えば、「フラット」のキャラクターは限りなく記号的だと言えます。
何しろ、本来なら出逢った瞬間顔を赤らめたりヤらせてくれたり(注:本作品は非18禁です!ヤるシーンはありません!!)と言った行動面でしか見せてくれない「好感度」を、堂々とプレイヤーの前にさらけ出す豪快さです。

そんな代物に対し、どれくらい感情移入できるかは、それこそ製作者の腕一つに掛かっていると言っても過言ではありません。
その点から見れば、フラットのキャラクターはかなり感情移入しやすく作られています。属性をざっと挙げてみるだけでも、

…と言うすさまじさ。誰もが出逢った瞬間忘れられなくなること確実です。
こんなキャラクター勢ならば、同人アンソロジーが出てもおかしくないと考える反面、同人を書くのは不可能とも思えてきます。
前者の理由は言うまでもないことです。後者の理由は、ただ一つ、本作を超えるネタを書ける人物が存在するのかと言うことなのですが。

■ マンガチックなシステム

恋愛ゲームに限らず、ADVと言う物は、選択肢によるフラグ管理で物事が進んでいきます。恋愛ゲームによくある

  1. 好きだ!
  2. 愛してる!
  3. ヤらせろ! (C.V.大塚明夫)

と言う選択肢も、裏を返せば

  1. 右へ
  2. 左へ
  3. まっすぐ

と言う、通常のADVの選択肢と全く変わりありません。選択肢によって進んだページと、現在のパラメータで展開が決まる非常にゲームブックに近いジャンルなのです。

「フラット」では、普通のADVと同様の選択肢の他に、「たたみかけモード」というシステムがあります。セーブ不可で選択肢を連続して選び、対象の好感度を連続して上げていく(もしくは下がってしまう)モードです。
普通、選択肢を増やすことは、プレイヤー・製作者の双方にとって喜ばしいことではありません。
プレイヤーにとっては、とにかくコンプリートの手間が掛かり、途中で飽きられてしまう可能性が高くなります。
製作者にとっては、フラグ管理の手間が大きくなります。まあ、基本のADVでもフラグ管理がお粗末な輩が商業作品を作っているような言語道断な例もありますが、それは置いといて。

しかし、「フラット」では、「好感度表示」と言う、もう一つのシステムで、この欠点を解消しています。
製作者にとっては、選択肢ごとに好感度のプラスマイナスを設定し、終了時の好感度に従って、その後のイベントを変更すればいいのです。
(実際にどうなっているのかは、一プレイヤーの私が知りうることではないのですが。)
プレイヤーにとっては、パラメータを上下を把握することで、攻略手順を分かりやすくして、なおかつ実際にモニター向かいのキャラクターの生の反応を楽しめると言うメリットがあります。

それ故、この「フラット」は、攻略法なんて見ないで楽しんで欲しいと、私は心から願います。
攻略法を知らないからこそ、キャラの一挙動にドギマギして、感情移入度が高まるのです。
このゲームは、単なる選択肢のクリックで楽しめるゲームではありません。選択肢の先にあるストーリーの広がり方を楽しむゲームです。
このゲームが、貴方にとって、単なるパラメータのやり取りではない、真の意味で楽しめる作品であることを願って…。

■ マンガチックなオチ

私が最初に攻略したキャラは、キンバリー嬢でした、まる。

 《 ckck 》  ハマリ度:7 グラフィック:10 サウンド:6

んじゃあ今から編入願いを…え?無理?

ハマリ度7/10
番長シナリオは共通パートが長いし、シリアスとギャグの配分がどうにも。
純粋に恋愛ゲームでも良かった気が。それだったらもう1~2点…。
グラフィック10/10
好みが分かれる塗りかもしれないが、コレは断言しよう。
ヘタな18禁ゲームより、エロい。
サウンド6/10
グラフィックとサウンドとの間にアンバランスを感じる。一枚絵のインパクトが強すぎる所為か。
ゲームを引き立てる面から考えても、選曲に失敗している感がある。

今月のイチオシが「フラット」との決定が下されたのは11月19日。その時の私は、とても浮かれていたんです。赤松様は一体どのようなレビューを書くのだろうと。果たしてネタは残っているのだろうかと。
でも一つ大事なことを今の今まで忘れていました。自分自身、書くことが何か残っているのかな?

何か、何かないか!赤松様が書かれていないこと、何かないか!!
…そうだ、エロさだ!エロさまでは深くレビューされていない!
(先に断っておきますが、このゲームは全年齢対象作品です)

そんな訳で以下、ヒロインの一人である「犬飼よしこまちこ」先生との朝のデートシーンより抜粋。

『手を拘束され、女の手で脱がされ、馬乗りにされているという行為そのものが、オレに羞恥心を与えているのだ。
犬飼「綺麗なピンク色ねぇ…」
境「へ!?」
先生は再びオレの乳首を刺激する。
突付いたり、摘んだり、指先で転がしたり。
その度にオレの体はビクンビクンと反応してしまう。
─中略
犬飼「あんた…こういうプレイが好きなの?」
境「ちょ!何言って…」
犬飼「くすくす…」
境「あぐ!!」
椅子がガタンと音を立てるほど、体が痙攣した。
先生が、オレの乳首をぺロッと舐めたのだ。
境「もう…やめて下さい…」
犬飼「…イヤ。」』

アパム!アパム!亜○!○鉛もってこい!アパームーーー!

「何処の官能小説から引っ張ってきたんだ?」とか聞くなよ。ゲーム中、マジでこんなシーンがあるんだ!
勿論、全ヒロインとこんな展開があるのではなく、攻略後にはそれぞれキャラごとの魅力を生かしたラブラブモードが用意されている。期待すると良い。
この後どうなるか?キャラごとの魅力?それはプレイして自分の目で確かめろ!

文章だけだと余計にエロい気がするが、気のせいだ!グラフィックも十分エロいからな!
学園モノでは基本(?)となる「ブルマ」や「パンチラ」を始め、「スカートたくし上げ」「耳甘噛み」「精奴隷のコスプレ」ちょっと待て等々、ややマニアックだが青少年の期待を裏切らない充実度。
もしかして作者様、この手の絵を描きたかったからゲームを製作したんじゃなかろうかな。

え?肝心のシナリオはどうなのかって?
…大丈夫。他のレビュワー様がキッチリ纏めてくれるさ。(いや、多分)

男なら、プレイしてみせろ!青春の思い出を噛み締めろ!
そして、思う存分萌えるが良い!

 《 或野 吟山 》  ハマリ度:9 グラフィック:10(本来12) サウンド:8(本来6)

笑えない恋はしたくない

(序文は愚痴と言い訳です。嫌な人は飛ばして下さい。)

 困った・・・。
 最近私、色々ツイていなかったのですよ。770円の切符を買ってすぐに無くして買いなおさざるを得なかったり、業務用の端末のCPUが昇天して1ヶ月ほど使用不能になったり、個人的に持っているノートパソコンも何故かインターネットの設定だけ飛んでしまい、年下の先輩に修理手伝いのため頭を下げたり、住んでいる部屋のコンロが駄目になってIH調理器と対応の鍋代がかなり飛んだり、「泣きっ面に蜂」の法則に見事に嵌められてしまいました。 そんな私の唯一の慰めは、まおまおのフィギュアスケートNHK杯優勝ぐらいだったでしょうか。
 そして更に困ったことに、私が今まで恋愛ものを遊んだことが無かったため、この「風雲相討学園フラット」をどうレビューしたものか、イチオシのお題が決まって以来ちょっと悩みの種になっていたのですよねぇ。 既にある完成度の高い赤松様の投稿レビューは、しかしあまり意見の入ったものではないので、気にせずに自分の意見を積み重ねていけば良いのだろうと思いました。 ただ私は、そもそも同ジャンルのゲームを遊んだことが無いのです。 「恋人いない歴」ならぬ、「ギャルゲーやらない歴」27年という。 よって、ギャルゲーファンには当たり前のことばかり書かれた阿呆らしい文章になっている可能性があります。 そして、先月やりすぎたので、今月は写真の無い省力モードでやらせてもらいます。

 言い訳終了。「フラット」のレビューをどうぞ。

ハマリ度について

 「ときメモ」以来、恋愛ADVには「硬派だから・・・」などと言い訳しながら食わず嫌いしてきた私にとって、恋愛ADVをやるというのは、親父から「バンジージャンプをやるか、腹を切るか」と迫られるようなものでした。 それだけ、決断力がいるというか、ちゃらちゃらしているのが嫌というか、何と言うか・・・。 こんな私ですから、何も言わずためらいすらなく自らのロリペドっぷりをさらしエロ漫画への造詣の深さを披露する上橋様には頭が上がりません。 廃人レベル的に。

 しかしッ!
 パソコンの脇に切腹用小太刀を用意し、覚悟を決めて始めてみると、
 半ばギャグゲーじゃんよー!

 そうなのです。既に赤松様が投稿レビュー内でおっしゃったような、王道ばかりを集めたが故のギャグとしか理解できないストーリーは、大抵のプレーヤーに受け入れられること間違いありません!私がそうでしたし。
 もっとも、ストーリーの最初に、通学途中の不可止(何てデフォルトネームだ、まあ私も人のこと言えんが)が、「遅刻だぁ!」とばかり食パン咥えて走ってくる制服の少女(後にクラスメートと判明)にぶつかり、少女のおぱんつのプリントがあるのが見えるとか、そう言うベタ過ぎる展開ははずしてあるようです。 辻斬さんブルマだし。 いや、他のキャラにチラリズムはあるのですが、まあ、あの、その、・・・。 とにかく、しつこ過ぎずあっさり過ぎず、いい塩梅に感じました。

 とにかく。
「恋愛ものはちょっと・・・」と、今まで敬遠していた人も、とりあえずちょっとだけ遊んでみる価値はあると思う作品です。 「ちょっとだけ」と思っている内、面白くなってきますから。 前半はギャグ攻勢がかかるも、中盤で展開がシリアスになったりならなかったり(攻略キャラによります)して、最後に事態が収まるところに収まった後軽いギャグで締め、みたいな感じのストーリーが、1回1時間から1時間半で楽しめるので、この年末年始、気軽に始めるのがよろしいかと。
 しかしこの、前半にギャグ攻勢だの、中盤でシリアスだの、1回1時間だの、どこかで聞き覚えが・・・。

 あーッ、吉本新喜劇と同じパターンじゃねーか!!!

グラフィックについて

 完璧です。降参。今月も10点出しちゃうよ!!! (本当は、いつかのいな様よろしく12点出しても良かった。先月は一枚絵無しで10点出したのですし、これ以上の点が無いのが悔しいです。)
 私からは何も言うこと無いや。流石プロ(ですよね?)詳しいことは、他の人のレビュー読んでちょー。(丸投げ名古屋人)

サウンドについて

 うーん。他が良いだけに、ここがもうちょっとよければなあと思います。
 ここまで独特のシナリオと上質のグラフィックを自前できたのに、音楽が素材配布サイト頼みなのが遺憾です。 何と言うか、他のゲームで聴いた曲が流れてくるのを聴くと、何か幻滅しちゃうんですよ。
 yizumi様はあんまり音楽にこだわりが無いのかもしれませんが、私はどうも気になってしょうがない。 趣味で音楽をオーダーメードしてくれる奇特な方も、ネット上には結構いらっしゃいます。 まあ、具体的なサイト名は先方に迷惑になるといけないので、ここでは言えませんが・・・。 (もし知りたいと思われたのでしたら、管理人のES様経由でご連絡をとり合いたいと思います。お手数ながら、これでお願いします。)
 それだけに、敢えて低めにつけさせて頂きました。悪しからず。
 もっとも、グラフィックの付け足りない2点分、こちらに回すことにしましたが・・・。 (まるで帳尻合わせだな)

全体について(総括)

 いや、面白かったです。 恋愛もの初心者でも、笑いながら気軽にプレイすれば、バーチャルな恋愛と言えども気恥ずかしくなく楽しめることでしょう。 まあこの場合、恋愛の疑似体験というより、ラブコメディを傍観して楽しむという楽しみ方になってしまうのですが・・・ ひょっとして恋愛ADVって、こんなのが多いのかな?
 もちろん、萌えにこだわる向きや、CGコレクターも飽かせないことでしょう。と言うわけで、今年もシングルベルの君もレッツ・プレイ!

(最後にお詫び)省力化にかこつけて、今回のが読み甲斐の無いレビューになってたら御免なさい。(更に、私実はまだ番長シナリオ見てないんです・・・。)
 あと私の傾向として、どうも色恋沙汰絡みのゲームのレビューは上手くいきませんねぇ。(「忘れものと落とし物」(※18禁表現あり!!)とか) 面白かった筈なのに・・・。赤松様やK’(カズ・ダッシュ)様にお任せすべきなんでしょうかねぇ・・・。

注釈

 ・・・は無いのですが、一言だけアドバイスを。
 攻略情報はサニーガール様 (※直リン注意!! リンク先に、いきなり攻略チャートがおいてあります ←流石にマズいので、レビューページに変更いたしました。攻略情報は、ページ下部にリンクを張ってあります。@管理人) にもあるのですが、是非最初はノーヒントでやってみて、どうしてもと言うのなら作者様ホームページのアドバイスを参考にすることをお勧めします。つぐみ様もおっしゃるように、サニーガール様は最終手段にしたほうがいいですよ。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度 : 9 グラフィック : 10 サウンド : 8

風雲相討学園フラットの急所(2)

距離感を活かした攻め

- みなさん、こんにちは。

こんにちは。

- 激辛イチオシレビューの時間です。
 今月は、講師に赤松弥太郎二流レビュワーを招き、「風雲相討学園フラットの急所」と題し、フラットの魅力についてお伝えしています。
 テキストをお持ちの方は、そんなものは無い。
 それでは先生、よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

◇ツボその1 : キャラは王道の斜め上

図1-1
図1-1 犬飼よしこまちこの動き方
図1-2
図1-2 意外性を活かした局面
前回はそれぞれのキャラの特性と動き方を見直しました。覚えていますか?
覚えていない方はしっかり復習してくださいね。

- なんというか、どのキャラも非常に特徴的ですよね。

そうですね。
ですが、属性を1つ1つ見ていくと、いわゆる王道からは外れていないことに気付きます。
例えば、犬飼よしこまちこ(図1)の場合、どう見ても小学生なのに大人というのが最大の特徴ですが、これはギャルゲーでは珍しくない属性なんですね。 ロリキャラが気が強く暴力的というのも一種の紋切り型で、これだけでは、ありきたり、と言われるかもしれません。
ですが終盤になると、隠し味が効いてきまして、一気に追い込むことも可能になるところが面白いところです(図1-2)。

- 意表を突く動きをしますよね。
 でも、微妙に生々しいんですが。

はい、今日のポイント、微妙な生々しさが出てきました。
基本的にギャルゲーのルールに従いながら、意外なところでリアルに見せることで、驚かせ、笑わせる。フラットの基本戦術ですので、ぜひ覚えましょう。

- それでは実戦譜で見てみましょう。

◇ツボその2 : 王道集めてギャグになる

図2-1
図2-1 不可止 教室入ルまで
これは序盤の局面です(図2-1)。
笹原 教室間違エルで仕掛けたんですが、不可止が無難に受けて、教室に入ってきたという状況ですね。

- 比較的静かな序盤ですね。

そうですね。
他のギャルゲーですと、戦闘シーン長めのモノローグといった手を第一手に選んで、序盤から乱戦になることがよくあります。 電波少女出現も比較的オーソドックスな第一手ですね。
ですが、フラットの場合、ここからウソのように激しい展開が始まるので、注意が必要ですよ。
次の一手、どう指しますか ?

- うーん。
 平凡ですけど、犬飼先生で受けるのはどうでしょうか。

よく引っかかる手ですが、フラットに限って、先生を動かすのは悪手です。 犬飼を動かしたことによって、教室が物理的にバラバラになってしまうんですね。
正着は、辻斬 刀突付ケです(図2-2)。
図2-2
図2-2 辻斬 刀突付ケまで

- え、ここで刀を突き付けるんですか。
 伝奇バトルでしか使わない手だと思っていたんですが。

伝奇バトルではよく見る手ですが、この場面で使うと新鮮ですよね。
確かに、ここで一気に伝奇バトル定跡に持ち込むことも可能です。
ですがフラットの場合、ここで笹原 辻斬説明、辻斬 納刀で、一拍おきます。

- また局面が静かになりましたね。

ところが、これが食わせ物の手なんです。
不可止の受け方は主に3通りあるんですが、この時点では展開に変化は起きません。 今回は不可止 同調としますね。
次の瞬間、嘉村 出現とぶちかますんです(図2-3)。
図2-3
図2-3 嘉村 出現まで

- これは、また厳しい手ですねえ。
 局面が荒れたり落ち着いたり、まるでジェットコースターみたいな展開に感じます。

ここで注目してほしいんですが、今までずっと教室の中で展開してるんですね。
伝奇バトルの場合ですと、戦いの場と日常の場がはっきり分けられていることがほとんどですが、フラットの場合、街や学校など、日常の場で平然と戦いが始まります。

- つまり、日常と非日常が混ざり合っていると……

いえ、むしろ普段通りの日常の中に、伝奇バトルなどのギャルゲーの要素を無理矢理詰め込んだと言うべきですね。
フラット独特の違和感や、展開のリズムを体感して下さい。
では、盤を替えます。

◇ツボその3 : システムは大胆に攻める

図3-1
図3-1 不可止 笹原告白まで

- これは、終盤の局面ですね。

はい。いよいよ詰めに入った段階です。
不可止 黒岩弁当要求で黒岩に狙いを定めたまま、不可止 笹原告白と動きました。

- 先生、笹原と黒岩の両取りですね。

まさにギャルゲー定跡通りの手です。
普通のギャルゲー定跡でしたら、ここまで詰まってしまうと、黒岩泣など、笹原だけを取らせる手を打つしかない局面です。

- あるいは、不可止がハーレムを作るとか……

図3-2
図3-2 黒岩 弁当渡スまで
参考図3-3
参考図3-3 投了図
ええ、その形に持ち込むギャルゲーもありますし、崩すためには両取りが必要なギャルゲーもあります。
ですがフラットはここでも、今日のテーマ微妙な生々しさを発揮するんですよ。
黒岩 睨ムで不可止を牽制し続けた黒岩ですが、笹原に告白したと見ると、すかさず黒岩 弁当渡スで不可止に迫ります。 当然笹原 同喧嘩と応じて、黒岩 同喧嘩、笹原 不可止人質(図3-2)。

- 修羅場の手筋ですね。

そうです。ギャルゲーで度々登場する局面で、ギャグとして使われることが多い手筋なので、ご存じの方も多いと思います。
ですが、フラットは一味違うので注意が必要ですよ。
この後、黒岩 逃亡となりますが、不可止をどう動かしますか?

- えっと……おかしいですね。すごく展開が重くなってます。

実は、その通りなんです。
よく見ると気が付くんですが、この局面、ギャグではなくマジの修羅場なんですね。
通常のギャルゲーですと、ここで説明なしに味方になったり、ハーレム化したりして、修羅場状況は長く続かないんです。
ところがこの場合、既にストーリー自体が変更されてしまっているため、笑って済ませることができなくなっているんですね。
この後の展開は、皆さんへの宿題にします。

- だんだん面白くなってきましたね。
 リアルさを追求したギャルゲーと言った感じなんでしょうか。

いえ、私はですね、こうした一見シリアスな場面にギャグがあると思うんです。
これは私の意見ですが、フラットをよくできたギャルゲーと見る人ほど、このフラットの罠に引っかかる傾向があると感じてます。
むしろ、すべて今までのギャルゲーのパロディーと考えていた方が、楽に遊べるのかな、と最近は思いますね。

今月のメガネ萌え

- 続きまして、今月のメガネ萌えです。
 先生、お願いします。

 わが同志諸兄よ……メガネ、してますか?
 今年も赦しの季節が巡って来ました。すべての人類は萌えの名の下に等しく、隣人と集い、互いを認め合い、尊重し合わねばなりません。一時戦いの矛を納め、宇宙の愛の前で新年の平和を祈り、そして新年への誓いを胸に立ち上がる、美しき季節が今年も巡って来たのです。
 今年も私は、メガネという真実を、未だ目覚めぬ迷い子たちに説いてまいりました。しかし地上の楽園に至る道は限りなく険しく遠く、一時の感情にまかせてメガネっ娘がいなければ豚の餌と、世界の片隅で愛を叫んでしまったこともありました。 しかし、我々は寛容でなければならなかった。 無理解な異教徒たちに「スイカはそのままでも甘かったけど、塩をふったらもっといけた」などと暴言を吐かれても、チェリシェのメガネっ娘計画が頓挫しようとも、我々にはサラサ様がいると言い聞かせ、堪え難きを堪え忍び難きを忍ばねばならなかったのです。
 我が同志諸兄の中に、メガネ以外の全てを否定する考えがあることも私は知っています。 しかし、一言聞いて頂きたい。我々は戦いではなく、理解と愛によってのみ、楽園にたどり着けるのだ。争いは憎しみしか招かないのです。 私は、自ら豚の餌と放言した、メガネっ娘のいない萌えゲーを嬉々としてレビューすることさえ厭いませんでした。 それも全て、世界が平和のうちにあることを望むからです。私はメガネの前に何ら恥ずかしいことはしていないと断言できます。
 だが現実を見るに、メガネ派内部でさえ共に手を取ることができず、争っている。私の胸は張り裂けんばかりです。 人の愛の形はそれぞれ、メガネへの愛もそれぞれなのです。なぜ小さな違いにこだわり、同じメガネを愛する友を攻撃するのでしょう? 今こそ我々は一致団結し、メガネの下の平和を唱える時ではあるまいか。
 4人ものメガネっ娘を抱える本作は、まさに我々にとっての福音であります。私めの平和の祈りを、ぜひお聞き届け頂きたい。
ささはら・りゅう 第一の福音 笹原 瑠の場合
 本作が我々への福音であることは、彼女がメインヒロインであることからも明らかでしょう。 たとえ現実としてツンデレ巨乳娘が人気一位だろうと、彼女がメインヒロインであるという事実に変更はないのです。
 しかし彼女が全ヒロイン中人気最下位に甘んじた原因は、「メインヒロインは人気が出ないジンクス」に加え、我々同志の中に離反した者がいるためだと聞き、私は大いにショックを受けています。 オタクのドジっ娘お嬢と黒縁メガネという、最も美しい調和の一つを体現している彼女の、どこに落ち度があるというのでしょう!?
 生理的に腐女子は受け入れがたいという声も耳にしますが、目を背けずにしっかりと彼女を見て頂きたい。 黒縁メガネのためにトータルコーディネートされた、黒ブレザーに黒ニーソ、おかっぱにカチューシャというファッション。 そして、メガネ萌えで最も重要なこと、メガネとその人の心の相性においても、まったく完璧。彼女の心は常にメガネと共にあるのです。
 加えて、本作のテーマたる、微妙な生々しさと艶めかしさを、メインヒロインたる彼女は最も強烈に体現しているのです。 ただの記号として登場したメガネに、我々は何度物足りない思いをしてきたでしょうか。 「メガネ掛けさせておけばとりあえずウケるだろ」などと安直な考えで我々を標的にする邪教の者どもは、彼女の爪の垢を煎じて飲むべきである。メガネ萌えとはかくも気高きものなのであります。
いんぶりあに・ゆんぐはいむ 第二の福音 インブリアニ=ユングハイムの場合
 恋愛ADVは多くの場合、主人公と攻略対象だけでは成り立ちません。 彼らを支え、助ける、攻略対象外のキャラクター、いわゆるサブキャラ抜きでは語れないものです。 攻略できないという事実にかえって情熱を燃やし、ヒロインたちには脇目もふらず、限りない愛をサブキャラに注ぐ、サブキャラ萌えと呼ばれる人々すら存在するほどであり、攻略できればよいというものでもありません。
 そのことも踏まえ、本作はメインヒロインがメガネっ娘であるばかりか、サブキャラの多くがメガネっ娘なのです。 我々はそのことを喜び、作者のメガネっ娘への深き愛に、最大限の敬意を払おうではありませんか!
 悲しいことですが、世の中には決して相容れない対立もあります。巨乳派と貧乳派の争いは、おそらく解決することは無いでしょう。巨乳萌えと貧乳萌えは決して両立し得ないのです。 しかし幸いなことに、メガネ萌えは他のいかなる萌えも排斥しません。 巨乳だろうと貧乳だろうと、ドジっ娘だろうとやり手だろうと、メイドだろうと異邦人だろうと、メガネはただ一つ、その人のために存在するのです。
 メガネの愛の前でのみ、我々は本当の平等を実現できるのです。 寛容な季節である今こそ、巨乳派や貧乳派といった垣根を越え、すべての人類がメガネの前に集う時なのです!
さくらがおか 第三の福音 保険医・桜ヶ丘の場合
 彼女を糾弾する同志は多いでしょう。 彼女のメガネは伊達でありただの変装に過ぎないと。 しかし、真に問題であるのは、そのメガネが伊達であるかどうかではありません。 人間存在とメガネの間の絆なのです。 メガネ萌えが高じて自ら伊達メガネをかける友人を、我々は笑うことができるでしょうか?
 古くはエラスムスの時代より、人はメガネに対し、複雑な、様々な思いを抱いてきました。 メガネっ娘がメガネに対して抱く感情も、憎悪から愛情まで様々あり、深い人格形成に関わってくる、だからこそ、メガネ萌えは成立するのです。 「本当の私、デビュー!」などと言ってコンタクトを売りつける業者の忌々しさは、誰もが知るところでしょう。 コンタクトがそこまで人格形成に影響を与えるというならば、メガネ萌えに対応するコンタクト萌えの存在を証明したまえ!
 故に我々が最も唾棄すべき彼女の行為は、何のドラマもなくメガネを脱ぎ捨て、その後も何のドラマも無かったことにあるのです。 メガネをただの道具と考えず、想いを抱いているならば、それはたとえ伊達であれ十分にメガネ萌えの対象となるでしょう。 私が言いたいのは、時東ぁみのファンとは争うなと言うことです。彼らは、恐るべき人種です。
みたらい・たわし 第四の福音 御手洗 束子の場合
 同志の諸兄! 私が求めていたメガネっ娘は、まさに彼女であります!
 どうか、防護メガネはメガネの内に入らないなどと言わず、私の話を聞いて頂きたい。
 メガネは人間本来の魅力を引き出す神器であると同時に、実用のために人類に与えられたものです。 しかしコンタクトレンズなる悪魔の発明により、メガネは実用の面に於いて唯一無二のものでは無くなってしまった、そう考えられていたのです。 しかしここに、コンタクトでは決して代用できないメガネの聖域が残されていたのです! 実用性が備わったことにより、彼女とメガネはますます分かちがたいものへと昇華されています。
 そう、科学の心なのです。私はかつてメガネ萌えとは一種の化学反応であり、女の子とメガネの両者が適合して初めて生まれるドラマだと言いました。 彼女は科学の心が実によくわかっている。 メガネをかける瞬間、彼女の存在はメガネと爆発的に反応し、頂点へと高められるのです。
 幼少の頃よりメガネを深く理解し交感している彼女がメガネをかける時、彼女を止められるものは誰もいないのです。 我々が何か言えるとしたら、「ジーク・メガネ!」の一言だけでありましょう!
 おお、我々が今年、この福音を完全な形で手に入れることができたことを感謝致します。
 我々の恵まれた境遇を想い、全員がメガネっ娘のゲームと共に隣人たちに勧め、不戦と寛容の輪を広げようではありませんか!
 それでは、来年もメガネで会いましょう! May Megane be with You! God speed Megane!

- それでは先生、評点をお願いします。

ハマリ度 : 9 / 10
 作者が意図したものかはわからないが、本作はきわめて優秀なギャルゲーに対するパロディーとなっている。 不可止のツッコミ溢れるナレーション、コミカルな流れの中に唐突に入る重い台詞といった、異化効果をもたらす仕掛けに溢れており、一種の不条理系と言える。 頻発する修羅場状況やたたみかけモードもしかり、好感度のグラフ表示も「好感度なんて目に見えるわけないじゃん」といった諷刺・パロディーであるようにも見えてくる。それも全て、作者の広く深い文化的素養のもとに成り立っているのである。
 バックログやセーブ・ロードなどの細かい操作で使いにくさを感じることもあったが、新たなる価値の創造という、限りなく10点に近い仕事をしている。
グラフィック : 10 / 10
 もともと絵師である作者が遺憾なく本分を発揮している。ギャグもシリアスもその都度場面を盛り上げ、必要以上でも以下でもない効果をもたしている。
 背景については、或野さんの意見をご参照下さい。きっといつもの調子でツッコんで……ますよね?
サウンド : 8 / 10
 おなじみの多夢サウンドなのだが、選曲が絶妙。何度も聴いたことがある曲なのに、まるで飽きさせない。
 たたみかけモードをしっとりした曲で聴かせるところなど、特にその中でも白眉。曲選びに悩んでいるすべての方にとって、参考になるところが多い作品だろう。

- 何時間でどれくらいのレビュワーでしょうか。

1週間で廃人です。

- 皆さんのフラットレビューをお待ちしています。
 宛先は、フリーソフト超激辛ゲームレビュー イチオシレビュー執筆係、2006年12月10日(日)必着です。
 応募した方はもれなく、フリーソフト超激辛ゲームレビューに掲載されます。
 皆さん奮ってご応募下さい。

たのなか・めいふぁ

- 今日の内容をぜひ実戦に活かしてみて下さい。
 先生、次回のテーマは?

次回は、たたみこみに入る前のアプローチについてまとめます。
キーワードは、微妙な艶めかしさです。

- それではまた来月、激辛イチオシレビューでお会いしましょう。
 さようなら。

さようなら。

フラットがイチオシに決まるまでの内幕

3月10日 赤松弥太郎、Meteor Alert eXcalationイチオシ初投稿
キャラ萌え至上主義者としてはフラット完全版出たらレビューしてみようかしら、とか生ぬるく思ってみたり。
3月14日 ESさんの返事
「フラット」は、名前ぐらいは知っていますが、実際にプレイしたことはありません。どうも食指が動かないもので…。
5月11日 赤松弥太郎、スラムガイレグルスの箱庭投稿
今月下旬完成予定のフラット完全版もあり……いろいろ忙しいところです。
6月8日 赤松弥太郎、X operationsイチオシ投稿
早く来い来いフラット完全版。
6月17日 ESさんからの返事
レビュー投稿時にご紹介いただいた「風雲相討学園フラット」は、こちらの方でも完全版発表時にイチオシレビューしたいと思っています。
私が管理人になってから久々のADVレビューですし、何より、エロの無いギャルゲーのイチオシは、激辛5~6年の歴史でも初めてですからね…。
しかし、今現在、完全版の発表には至っておらず、次回のイチオシは別の作品にせざるを得ません。そこで、先月に3分ゲーコンテスト優勝を飾った「愛と勇気とかしわもち」を、次回のイチオシにしたいと思います。
6月19日 赤松弥太郎の返事
フラット完全版、あまり期待を高めないようにしてるんですがね。 むしろ楽しみなのはあれをどんなネタまみれのレビューにしてやろうかってことで。 2度レビューできるならレビューしたいくらいです。超激辛にぴったりの題材だと思いますよ。
7月4日 赤松弥太郎、愛と勇気とかしわもちイチオシ投稿
フラットは次回イチオシになるか微妙なラインですなあ……投稿と2回レビューまでも目論む私としては、先送りでもいいんですが。
7月17日 8月のイチオシが鴉の断音符に決定
7月20日 風雲相討学園フラット完全版公開
7月21日 赤松弥太郎、落雀投稿
さて、イチオシはADVに決まったわけですが……ナイスタイミングですね。
現在、私の半年のレビュアー生活の全てを掛け、フラット完全版に取り組んでいます。可能な限り早く、レビューをお届けします。
7月28日 赤松弥太郎、風雲相討学園フラット完全版レビュー投稿
俺は、生まれてきて良かった……!
だいたい80%くらいは言いたいことを言い尽くしたかと思います。
8月16日 赤松弥太郎、鴉の断音符イチオシ投稿
フラットレビューが激辛に廃墟を作って3週間、後遺症に苦しんでおります。
やれる限りやっちゃった後の虚脱感はいかんともしがたく、リハビリとしてのレビューになりました。
8月21日 ESさんからの返事
フラットレビューの濃度はものすごく、レビューを読んだ段階で、「あぁ…やったかいがあった…。」とすでにコンプリートした気分になってしまいました。おかげで、本編は全くプレイしてません。
9月3日 ESさんの33の質問の回答
相打ちネガティブギャングさまなど、作品数は少ないものの、そのどれもが一級品って方もいますし。
11月13日 魔壊屋姉妹。イチオシ掲載
11月14日 ESさんからのメール
次回のイチオシは、赤松さんに投稿いただいた「フラット」にするか、「(別作品)」にするか、未だに決めかねています。
「フラット」の舞台、確実に冬場じゃなかったしなぁ…。
11月15日 赤松弥太郎の返事
私はどっちでもレビューは書けます。こんなこともあろうかと、イチオシ分のネタエネルギーは既に別に確保しておいたんだ。このネタカートリッジ弾を使えば、フラットくらいは撃滅できる計算だ。テストはしていないが、いけるぞ。
11月15日~17日 多分毎日更新する日記でのやりとり(要約)
ckck > 次のイチオシ、「フラット」になったら覚悟するんだな、赤松(笑)
或野 > はたして戦うだけの力が残っているかな……?(笑)
赤松 > この俺をそう簡単に倒せると思ってるのか ?
    まさか怖じ気づいて逃げ出したりしないだろうな、ESさん(笑)
11月19日 12月のイチオシが風雲相討学園フラットに決定

以上からわかること :

そして、12月10日深夜、本レビュー脱稿……
疲れた…… さすがに今回はキツかったわ……

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