■ 光灯る夜に
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作者 [ 天叢雲劍 さま ] ジャンル [ カードゲームRPG ] 容量・圧縮形式 [ 233MB・ZIP ] 製作ツール [ RPGツクールMZ ] 言語 [ 日本語 ] 配布元 ![]()
- (補足)
- 2025.04.13:現在のバージョンは1.11です。(2025.01.24更新)
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レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 9 /10 8 /10 8 /10 49/60 ![]()
赤松弥太郎 8 /10 8 /10 8 /10
人形は力を、修道女は勇気を、振り絞って立ち向かう。
「光灯る夜に」は「カードで表示されたコマンド・スキル」「ローグライト方式でカードを取得する」が特徴のRPG。加えて、「4つのデッキを『着替えて』使い分ける」システムが付いています。
4属性はそれぞれに異なるリソースが存在しています。各リソースをどのように使い分けるか…と言うより、リソースを有効に使えるデッキをローグライトで構築する…それが「光灯る夜に」の攻略法となります。
属性 リソース名 リソースの使い方 赤 蓄熱 「蓄熱」を増やすスキル・「蓄熱」量に従って威力を増すスキルが存在。
初期デッキには「蓄熱」を使用する「炎の舞い」しか存在しないため、溜めるスキルは道中で手に入れる必要がある。青 召喚獣 特定スキル使用で召喚獣のレベルが上がる。レベルに従い召喚獣は進化し、ターン毎の追加効果+特定スキルの強化を行う。
初期デッキの「ミネラル水」は召喚獣レベルを上げる効果しかないため、召喚獣レベル上昇にプラス効果のあるスキルを道中で手に入れる必要がある。黄 暴走率 特定スキルを使って溜める点は「蓄熱」と同様。暴走率が100%になると「暴走」状態となる。
黄属性カードには「暴走中に追加効果が出る」スキルが多く、またその追加効果も強力な物ばかり。
初期デッキの「インパルス」の基本効果が「AP1で状態異常回復+暴走10%」と強いのも特徴。緑 スタンス 初期デッキの「スタンス」を使用して「陽式(攻撃UP, 精神DOWN)」「陰式(攻撃DOWN, 精神UP)」を選択する。道中では「陰陽式」と言う特殊なスタンスになれるカードも獲得できる(ようである)。
緑属性カードには攻撃・精神が関係する2つの効果が1枚に併存しているカード、陰/陽になった場合に追加効果が付くカードが多いため、1つのスキルで陽式・陰式・普通の3通りの効果が発生する。
緑属性には状態異常を与えるスキル、状態異常が入っていると強化されるスキルもある。様々な効果を上手く使えるかがカギ。属性ごとに効果の違いが大きく、初見だと混乱しがちですが、基本的にどの属性でも目指す道は一つ。「攻撃・防御を参照するスキルをいち早く手に入れる」ことです。
初期デッキの攻撃「プチ○○」は威力20と固定。序盤はこれらを使わざるを得ないですが、中盤…敵のHPが数百単位となる辺りでお荷物と化します。
また、ローブには「同属性カードのドロップ率が+50%」と言う効果もあるため、必然的に一点伸ばしが定石となります。
ただし、あまり一点伸ばしにすると、終盤の「最もスキル枚数の多い属性を使用不可にする」ボス戦、「使用した属性を次の戦闘で使用不可にする」四天王戦で泣きを見ます。状況に応じて他属性のスキルも取得していきましょう。本作をレビューするにあたって色々なプレイをしましたが、個人的な印象では、初心者向けの属性は赤と黄ですね。
黄属性は、上述の通り初期デッキの「インパルス」が強力。道中のスキルもコストが小さめ、暴走率にブーストが掛かる「バーサーカー」があると、リソースの使い方が最も楽です。
赤属性は、リソースの使い方こそ難しい…と言うより有用な蓄積・消費スキルに乏しい点こそ短所ですが、蓄熱抜きでも強力なスキルが多く存在します。「メンテナンス」や「ガーディアン」など防御面でも強力なスキルが多くあり、「普通に戦う」なら最も楽な属性です。
青属性は、「育成論」など高効率のリソース蓄積スキルを引けるかがカギ。リソースへの依存度合いは4属性の中でもトップで、長期戦を強いられる属性です。
緑属性は、陰/陽の切り替えに状態異常と、考えることが群を抜いて多い属性。すなわち、スキルの引き運に最も左右される。「陽で強いスキル」「陰で強いスキル」をまぜこぜにすると使い分けが大変であるため(「スタンス」選択後に別側用のスキルばかり来るなど)、どちらを使うのかを決める…もしくは陰陽式になれるスキルを早めに取得しておくなどの対策が必要。
※ 私の場合、今までの6時間近くのプレイでは「陰陽式になれるスキル」は手に入りませんでした。
どの属性でも使える無属性スキルも侮れません…と言うより主力となります。
スタート時点で1枚所持し、ストーリー展開に応じて枚数が増える「祈る」は、行動力(ターン経過時に溜まるAP)+1の強力スキル。開始ターンで使いまくるのが定石となります。
道中の「星のかけら」の獲得数に応じて手に入れる=周回用のスキルもバランスブレイカーばかり。「攻撃・精神を+10」「カードの引き直し」「毎ターンのドロー数+1」「アイテムを獲得」「前回に使用したスキルをAP2で発動」と、どれを選ぶか目移りするレベルのパワーです。考える事柄は今までの「ローグライト+カードゲーム型RPG」の作品と同様に多いですが、本作はその知識を「ゲームを周回しながら学べる」仕組みとなっています。難易度そのものは易しめに設定されています。
初期設定の「ノーマル」でも、私は赤属性で初見クリアできました。「イージー」ならば、初回で「300ダメージ+精神力×2のガード+コスト0」と言うチート級スキル「ホーリーアロー」が手に入るため、楽勝でクリアできます。
本作の本番は、1周クリアした後の「ハード」となります。これはゲームシステムの理解が進み、「星のかけら」を集めきったことを前提にしている難易度。カードのみならずアイテムも駆使しないと、思わぬところでやられてしまう難易度です。
ただ、本作はその知識を得る方法が「都度学ぶ」しかない点が難点と言えます。そうです。(現在のバージョンでは)カードリストが未実装なのです。ハードの隠しボスまで倒すほどにやりこみましたが、それでも実装している、もしくは獲得済みのカードを一覧する画面は見当たりません。「陰陽式になれるスキル」の具体名が出せない(知らない)理由も、これが原因です。
ダウンロードページ(夢現・ふりーむ)や作者様サイト(X(Twitter)・bluesky・ci-en)など、いろいろ探しましたが、攻略ページはどこにも見当たりません。
ローグライトな強化方法…スキルのTierに明確な差がある本作の仕様で、カード一覧が無いのは何かと不便です。
Xを見ると、製作者様は次回作の制作に乗り切っているようですが、カード一覧の実装は次回作以降になるのでしょうか。まだまだ課題の多い作品なので、それが次回作で解決されることを祈っております。
- (補足)
- 2025.04.14:夢現のダウンロードページが更新され、隠し要素である辞書機能についての説明が追加されました。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:8
戦いの数だけ その力手に入れる 何度だって立ち上がれ
本作のカードバトルは、とても良くできてるんです。
シンプルに使いやすく、攻撃にも防御にも手札が揃った赤、
相手に合わせて、攻撃と防御の2モードを「構え」で使い分ける緑、
高火力で、特に暴走ゲージが満タンになった時の爆発力が魅力の黄、
防御と回復が優秀で、長期戦になるほど強くなる青、
4属性、それぞれ個性あふれる魅力的なデッキ構築が楽しめます。
特定の属性だけが極端に強い、ということもなく、どの属性でも頭を使った戦闘の醍醐味が味わえるでしょう。
それ以外のところが、なんというか、その。
それぞれの狙いは見えるんですけど、全部バラバラな方向に向いてるように思えて仕方ありません。
本作で一番楽しいのはカードバトルだと思うんですけど、そこを核にまとまっている訳でもないのです。
何か伝えたいことはあると思うのですが……。
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その最たるものが、この勇気システム。
主人公・マドレーヌは親友以外の誰にも声を掛けることができないという、陰キャの煮こごりみたいな人でして。
それがダンジョンを攻略する度に、少しずつ自信をつけて、町の家への侵入と捜索ができるようになる……
おいおいどこの勇者だよという、間違った方向に進化してしまうシステムです。
攻略の進行に応じて施設や報酬が解放される、と要約すれば、ごくありふれた発想に思えます。
間違ってるのは、解放のタイミングです。
大半のローグライトと同じく、本作は町に戻ると最初からやり直し、イベントアイテム以外は全てリセットされます。
実質、ゲームオーバーにならないと、上昇した勇気の恩恵を受けられません。
しかし本作の難度は、ノーマルなら初見クリアも十分可能という程度のもの。
ハードはコツを掴むまでもう少しかかるかもしれませんが、ノーマルからでもイージーからでも、勇気自体は引き継がれます。
つまり、初見でハードを選んだ人以外は、徐々に施設や報酬が解放されていく、その過程を楽しむことはできないのです。
……ストーリー上、かなり重要なフィーチャーだったと思うんですけどね、マドレーヌの自信って。手に入れていく過程が無いんですよ。
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勇気を高めたところで、ストーリーに隠された真実が明らかに! とか、そういうことはありません。
最大、そして唯一の恩恵と言っていいのが、星の民からのカード入手です。
強力なサポートカードが最大4枚まで入手でき、最初から使えます。
特に「博学多才」は完全に入れ得スキルなので、縛りプレイでない限り手に入れておきたいところです。
それ以外のカードは……入れるほどいいと言うものでは無かったり。
強力には違いないんですが、結局はサポートカードです。入れすぎると事故率が上がります。
正直4枚入れる必要性はなくて、多くてもせいぜい3枚で十分なんですよ。
それを考えると、「星のかけら」を集める意義も薄れてきます。
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はい、本作には道中の探索要素もあります。申し訳程度の。
本作は「ローグライク」と銘打っていますが、マップは常に固定です。
まあ、道やダンジョンの構造が変化する方がおかしいですからね、当然ですね。
※これをローグライクだのローグライトだの呼ぶのが適切か、みたいな面倒くさい議論には、ボクは関わらないのであしからず。
で、道中にある宝箱の位置も、完全に固定です。
青の宝箱には「星のかけら」が、赤の宝箱にはトゥルーエンド用のイベントアイテムが入っており、この2つは周回をまたいで引き継がれます。
赤宝箱を集めないとトゥルーエンドに到達できないのですが、上のスクショの通り、とてもわかりやすい場所に置いてあります。
イベントアイテムを持っていると、ストーリー中であからさまな選択肢が出てくるので、素直に選べばトゥルーエンドルートになります。
初見でも簡単にわかるので、手応えは皆無です。
ただ面倒なだけじゃないか、と思えてなりません。
むしろ、意識しないと見られないノーマルエンドの方が希少価値がありそうですが。
見どころは、エンディング絵の別バージョンくらいかな、ボクには。見たい人だけ見ればいいと思います。
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本作のストーリーと、ローグライトとしてのシステムが噛み合わない場面は、他にもありまして。
一般的なローグライトと同じく、本作ではゲームオーバーになるとスキルもステータスも消費アイテムもリセットされます。
一方で、星のかけらやイベントアイテム、そして閉じ込められていた町の人の魂など、ストーリーの進行は保存されます。
これはまあ、言っちゃえばゲーム的な都合ですよ。わざわざやり直すのはプレイヤーにとって面倒だからってことです。
そこに設定上の裏付けをする必要も無いと、ボクは考えてます。
なのですが、本作の挙動はちょっと面白いんです。
1回クリアしたボスのフロアへ行くと、そこには真っ黒なボスがいて、話しかけると選択肢が出ます。
「イベントやり直す」を選択すると、再度イベントが流れ、通常のボスと再戦します。
「そのまま戦う」を選択すると、全身黒いだけでステータスも戦術もまったく変わらない、「影」との戦いになります。
理由は、まったく説明されません。
これ不思議なんですよね。だってこんなの、まさにゲーム的都合でしかありませんから。
わざわざ別バージョンの敵を作る意味が、ボクにはさっぱりわからないんですが。作者は必要だと思ったのでしょう。
しかしもし、この「影」に意味を求めてしまうと、色々な「ゲーム的都合」が、それでは済まされなくなってしまう……
許容できるラインが変わってしまうんですよ。
「ゲームオーバーになった時って何が起きてるの?」とか、真面目に論じる必要が出てきてしまうのでマズいんです。
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そこのラインが変わると、本作のストーリーはツッコミどころがボロボロ出てきちゃいます。
戦闘システムの根幹であるローブからして、設定上の位置づけがあいまいですからね。
「マドレーヌって魂解放の儀式の何を知ってるの? 経験があるの?」「なんで4着もあるの?」「なんで色を変えると属性が変わるの?」「4着全部持ってくのはなんで?」等々、作中では一切説明されていません。
ボクは説明する必要も無いと思ってるんですが……
大事なのは、マドレーヌが持つアイテムを通して、マドレーヌも戦闘に参加してるってことだけのはずで、ローブである必要もまた無いんですよね。
簡単に持って行けるアクセサリとか、タルトとの思い出の品とか、もうちょっと上手に処理できる方法もあった気はします。
正直この作品がどの程度、ストーリーをきちんとやりたかったのか、ボクは多少計りかねているんです。
固有名詞が全部洋菓子由来っていうのは、少なからずそこへの期待値を下げる働きがあります。
ファンタジーですよ、メルヘンですよ、という雰囲気を出すのに最適なやり方ですからね。
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でも、少なくとも、飾りではないわけで。
本作のメッセージ性は、戦闘システムより、シナリオの方に色濃く表れてるのは、疑いありません。
設定も多分、作り込んでいるはずですよ。
シュトレインがいつから野望を抱き、研究室でロボットなんかを作り始めたのか。
なのに、実際にはティラミスが生み出した魔物が町を滅ぼしたのは何故なのか。
きっと作者の中では、満足のいく答えが用意されてるはずです。ボクにはいまいち見えていないだけで。
せっかく作ったストーリーだから、みんなにプレイしてもらいたい、という気持ちはわかります。
そんな強い気持ちが無ければ、イージーの離乳食レベルの歯ごたえは実現できません。
しかもバージョンアップで、ノーマル共々さらに易しくしてますからね。
イベントアイテムや選択肢のあからさま加減に、さらにイージーでは取り逃がしチェックまで追加するという念の入れ様は、絶対にトゥルーエンドを見てほしいという強い気持ちの表れに他なりません。
が、同時に、本当にやりたいのはハードの歯ごたえなんだろうな、とも感じてしまうのです。
それくらい、ハードモードは本当によくできてます。
決して理不尽ではない、何回かプレイすればコツが掴める程度の難しさに収めていて、その上隠しボスで地獄も見せてくれる。
ただ、初期カーソルがノーマルになってるし、「ハードモードこそがオリジナル」ってアピールをしてないから、初見で選ぶ人が少なそうなのが、ボクは残念です。
歯ごたえがある難度でないと、伝わらないメッセージもあると、ボクは思うんですけどね。本作のシナリオとそれが合ってないなら、致し方ないのかもしれません。
なので、腕に自信のある読者の皆さまは是非、初見ハードに挑戦していただきたく思います。
隠しボスが未だに倒せていない、ボクからのお願いでした。