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■ キャンディリミット

キャンディリミット
作者 [ sunori さま ]
ジャンル [ 経営シミュレーション+? ]
容量・圧縮形式 [ 54MB・ZIP ]
製作ツール [ WOLF RPGエディター ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ 第7回WOLFRPGエディターコンテスト、総合1位。 ]
配布元 ダウンロード先

キャンディリミット キャンディリミット キャンディリミット キャンディリミット キャンディリミット

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 7 /10 8 /10 9 /10 100/120 B
hoikoro 8 /10 8 /10 9 /10
シュン 9 /10 7 /10 9 /10
赤松弥太郎 8 /10 9 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:7 グラフィック:8 サウンド:9

秘密は魅力的。でも抱えすぎは良くない。

本日のイチオシ「キャンディリミット」の魅力と言えば、やはりネタバレ厳禁の怒涛の展開に他なりません。
最初の最初では明るくおバカな主人公・キャンディが、終盤ではあんなことに…な衝撃は、皆様にも何の知識も無い状態で味わっていただきたい所です。
そのためのストーリーの導線は、最後の最後まで味わった今では、確かに見事なものです。

しかし、本作の欠点は、そのネタバレの範囲が広すぎる点にあります。いくらなんでも、システム…知らないとプレイできない箇所…の約半分がネタバレと言うのは、流石にやりすぎでしょう。
(↓以下、そのネタバレ部のシステム説明)

ネタバレに当たる「ロボットに乗り込んでの戦闘シーン」は、色々な要素が絡み合って、とても煩雑な代物になっています。
初めに、「マウス一本の操作から、キーボードに切り替える煩雑さ」があります。カーソルキーとZ, X, Shiftのみというシンプルなものですが、ゲーム中にコントローラを切り替える作業は、意外に負担が掛かりました。
そして、初期ステータスのロボは移動力に難があり、「一歩動いた時点でターン終了」と言う殺生さです。初見だと「初めに攻撃を出す」と言う操作を身につけるのに、3ターンほど何もできずに文字通りの足踏みをしていました。
それが分かっても、「ターン開始時には、移動操作になっている」と言う設定のため、攻撃操作切り替え(←キー)と間違えて↑↓を押してしまい、無駄にターンを費やしてしまいました。
もっとも、バトルのバランスは最終戦以外それほど厳しいものではないため、これほどのミスを繰り返しても余裕で勝利できましたが。

恐らく、作者としては「手探る楽しさ」「何の知識も無い状態でロボと戦うキャンディの戸惑いに感情移入させる」を味あわせるために、あえて間違いやすい操作にしたとも考えられます。
しかし、私としては、普通に「マウスでボタンやレバーをクリックして操作させる」で「手探る楽しさ」「戸惑い」は充分に味わえると思います。経営シーンでは、普通にボタンをマウスクリックで操作するスクリプトを組めたのだから、それほど難しいことではないと思います。

(↑ここまで)

そして、ネタバレを防ぐためか、「情報を小出しにして、ヘルプなどでまとめて見れない」と言う欠点も出てきました。
最初の戦闘が終わった直後までしかプレイしていなかった時点での投稿レビューのコメントでは、「お菓子にはそれぞれロボのステータス上昇効果が設定されており、売れるたびにロボが強化される」と言うことを知らず、「戦闘シーンと経営シーンの繋がりが全く分からない」と書いていました。
恐らく、この箇所が、作者様が削除申請を出した最大の理由と思われます。
私は、この情報を見逃したまま確認もせずにコメントしてしまいました。改めて考えると、本当に失礼な行為をしてしまったと反省しております。

ただ、最初の投稿レビューで、ネタバレを含んだレビューになってしまったのは、作者側にも問題があると、あえて言わせていただきます。
「経営シーン以外はネタバレ」と言う情報、実を言うと、作者様から削除申請をいただいて初めて知りました。同梱のテキストファイル、作者様のページ、ウディコン、いずれを見ても「ネタバレについて」や「紹介・実況動画について」などの項目は見当たりませんでした。
あまつさえ、ウディコンでは【ゲームプレイ配信はご自由に】【動画への映像使用(3分以内)はご自由に】と書かれています。
むしろ、ウディコンや作者様の掲示板にご意見を書かれた皆様は、どこから「経営シーン以外はネタバレ」と気づいたのでしょうか? 私は全く気づきませんでしたし、恐らく投稿者も気づかないままレビューしたのでしょう。
あそこまでネタバレの範囲が広いと、「ここからはネタバレ」と書くこと自体がネタバレになりかねないことも分かります。しかし、流石に、こう言う大切な所を「空気を読んで」で済ませるのは悪手です。世の中には、空気の読めない…作者と同じ思考パターンを持っていない人なんていくらでもいるんですから。

そんな憮然とした気持ちを抱えたままストーリーを進めていたのですが、ラストの展開は、そんな鬱屈を忘れるほどの衝撃を味わいました。
後書きに書かれた「失敗と成長」を体現したストーリー、そして「営業が茶番だと思ったか! 違うわ!戦闘がオマケじゃい!!」がよく分かる展開でした。
経営シーンでは、攻略の都合上、販売よりも素材集め・開発が中心を占めます。素材集めの効率は、ストーリーを進めるたびに強化されるため、初見でもレシピのコンプリートは充分可能です。
素材集めの効率は、知識の有無が戦闘シーン以上に関わってきます。プレイを繰り返すたびにレシピの充実速度およびロボの最終ステータスが大きく伸びていくことを感じるはずです。

ただし、ラスボスは、そんな最終ステータスを物ともしないほど強まっています。
私の初クリア時のステータスです。このステータスで挑んだところ、1戦目は最終段階で死亡、2回目で「最終段階では90mでターンを渡せば、ボスはステルスを使うため、ダメージを受けない」事を利用して、Dでチクチク刺す作戦でギリギリ勝利できました。
ラストのラストでCが溜まっていなかったら、ヤバかった所です。

本作の衝撃と面白さは、本当に最後の最後までプレイしなければ、味わえないものです。「能天気な妖精がお菓子を作りつつドタバタ」という当初のイメージとは真逆の衝撃の展開が後半から襲ってきます。
皆様も、その衝撃を眼前にするべきです。あえて断言します。

 《 hoikoro 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:9

皆が喜ぶお菓子作り

キャンディリミット】、今回レビューさせていただきました。
※ネタバレ要素を含みます、ネタバレ部分は黒く塗りつぶしております。

経営型シミュレーション、しかもお菓子…あれ?最近似たような題材のものをプレイしたような気が…?
プレイ開始まではそう思っておりましたが、当然ながらこの作品も一般的な経営SLGとは大きく異なっておりました。

まず前提として、SLGはいかんせんストーリー性が乏しくなってしまいがちな面があります。
SLGはゲームシステムの都合上、基本的に難しくなってしまいがちですし
ストーリー性を高めれば高めるほど覚えるべきことが増え、難易度が上昇してしまうから、だと自分は勝手に思っています。

しかし、このゲームはシステムよりもかなりストーリーに力の入った作品となっております。
主人公のキャンディが友人のパンナコッタの力を借りてお菓子屋さんを作り、村の妖精たちに売ろう!というものです。
初期目標で借金があるとか、一年間でいくらお金を稼がないといけない、などという目標はなく。
本当にただ売ることから始まります、加えてこのゲームには経営SLGであるにもかかわらずお金という概念が存在しません。

本当にお金に代替するものもなく、だいたいどれくらい売れたか、という指標が上がるだけのものです。
お菓子作りも作り置きするのではなくその場で魔力を使用して作るため、魔力さえあれば素材も必要ありません。
よってこのゲームの経営において、”火の車”になるということがありません。ほのぼのとお菓子を売り続けることが目的のゲームです。
もしくは、新しいおやつを開発することを目的とするゲーム、とも言えるかもしれません。

そうして売り続けた結果が、このゲームの裏側に位置する謎の相手との戦闘に反映されます。
まさかのホラー、最初に直面した時の困惑と恐怖の煽りは、ほのぼのとしたこのゲームであるからこそ緊張感が高まりました。
どう考えてもおかしな場所、謎の機械、目の前に迫る敵。

操作もおぼつかない、何が起こっているのかもよくわからない状況で説明も不足している。
主人公の混乱とプレイヤーの混乱が直にリンクする恐怖感と手探り感

その後何事もなかったようにお菓子屋さんを再開する主人公に恐怖を覚えたものです。
何の宣告もなしに突如切り替わる世界、そして、お菓子を販売することがあの世界でのステータスを上昇させる効果に気がついた時。
今までのほのぼのとした感覚は完全に消え失せ、早く売らなくては、早く作らなくてはという焦燥を感じました。

経営と戦闘の緩急のバランスが適切であるため、ただ素材を集めてお菓子を作るというだけの日常にメリハリが生まれます。
よって単調な作業である経営パートが一転、背後から見えない何かが迫ってきている苛烈な鬼ごっこへと早変わり。
なかなか手に入らない素材に苛立ち、気分が急かされる。
このようなSLGは極めて珍しい、というか自分にとっては初めての経験でした。大変素晴らしいと思います。

序盤中盤終盤とすべてが重要な場面であり、何気ない日常そのものですらとても大切なシーンの一つであること。
加えてゲームそのものの長さがコンパクトに纏まっていることから、どのイベントシーンを切り取っても激しいネタバレになってしまうこと。
どうやらマルチエンディングではなさそうなので、ぜひともプレイしてみていただきたい。

・ハマリ度:8/10

ストーリーとゲーム性のマッチング具合が、単純作業にも強い意味合いを持たせている。
悲しい展開や感動シーンが多く、終盤はかなり感動モノ。経営であるにもかかわらず。

惜しむらくはやはりシステム、左クリック長押しと左クリックをどこでも強要され、やや億劫で単純な連打になってしまいがち。
集めた素材の数も開発で見ないかぎり確認することも出来ず、入手する素材がランダムでなかなか狙いのものが手に入らないことも最後の場面では気になった。
このゲームのコンセプト上、ゲームクリア時には全てのお菓子を(と言うか最後のお菓子を?)開放しておくべきであると考えるし。
もし完成しなかった場合、オートセーブの都合上取り返しもつかず、消化不良のまま終わってしまうかもしれない。
戦闘パートは素晴らしい出来、操作性の悪さまで含めての面白さがある。

・グラフィック:8/10

キャラクターが可愛く、一部を除いて殆ど白黒で、お菓子の色も素材の絵もない。
もしかしたら白黒の世界として意味があったのかもしれないが、お菓子屋さんである以上、お菓子には色つきのものが欲しかったと思う。
オマケのみでも色付きにするとか、そのようなものでも構わないと思うのだけれど…
反転して、ロボットデザインや操縦席はかなり格好良く、無機質な構造や、不安感を煽るデザインは素晴らしい。

・サウンド:9/10

どのシーンに使われていたものも殆ど問題なくその場に適したもので。
しいて言うならばSEがやや大きめであったことだろうか、それ以外は別段気になるところも少なかった。
使われていた音楽数は多くないものの、ゲーム自体のボリュームを考えるとこのくらいがちょうど良いと思う。


プレイ時間そのものがそこまで長くなく、かつ考えさせられる面白いストーリー性を持っており、
レビューとして書いておいてなんですが何も見ずにプレイするべきである作品だと自分は思います。

強くてニューゲーム絶対あると思ったんだけどなぁ…!

 《 シュン 》  ハマリ度:9 グラフィック:7 サウンド:9

お菓子は皆を幸せにする・・・果たして、本当に?

 第7回WOLFRPGエディターコンテスト総合一位の作品ですが、その見た目からは想像も出来ない展開と要素が隠されています。
コンテストの紹介ページでも徹底してネタバレが隠されており、この作品の本当の意味は実際にプレイして確認するほかありません。
脱力系でほのぼのとした経営SLGと思ったら大間違いですよ・・・!

 突如として皆を幸せにするためお菓子を売ろう!と一念発起した妖精のキャンディ。
ですが、価格は全てタダ、最初はアメ玉しか作れず、一度食べた物しか作れない・・・とキャンディが開いたお菓子屋は問題だらけ。
仲間の妖精、パンナコッタに呆れながらお菓子売りに奔走するキャンディ。しかし・・・?

 ・・・ということでお菓子屋経営SLGを始めることになります。
基本的な流れは 探索でアイテムを集める→開発でお菓子を作る→営業でお菓子を売る という流れです。
探索で取ることができるアイテムは場所によって決まっており、話を進めないと行けない場所もあります。
まずは今行ける場所で材料を集め、探索に行けなくなったら開発やお菓子売りを行う、というのが基本的な行動パターンです。
お菓子を売るには「しょうひまりょく」を使う必要があり、「まりょく」が足りないと売ることが出来ません。
まりょくは朝になった時しか回復出来ないため注意してください。
セーブデータは1つしかなく、朝になるたびオートセーブで上書きされます。詰まることはまず無いと思いますが、一応バックアップは取っておいた方が良いです。

 途中でなにやら不穏な空気が流れ始めます。それ以上は語れませんが、「間違いなく予想を裏切る」とは言っておきます。
じょうきょう(ステータス)にある「むらじんこう」も一体何の意味が?と思いますが・・・実は一番重要なポイントになります。
まずは騙されたと思って経営SLGをプレイして見て下さい。
探索でおかしな材料(お菓子という意味では無いですよ!)が拾えたり、何やら変な夢を見たり、その地点で何か変だと感じる部分があるかもしれません。
そう思っていたら・・・衝撃の真実が待っています。その先には一体・・・?
いきなり経営SLGからかけ離れた要素が始まったのには本当に驚きです。それはどういうことかは・・・これ以上は言えません。
何故「お菓子」で幸せにしようと思ったのか、タイトルにある「リミット」の本当の意味は、そして妖精キャンディの存在意義とは・・・!?

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:9

さよならの前に今日も喧嘩して 大事な事だけなんで言えないの?

 ボクは本作を、ウディコンの結果が出る前にプレイしたんです。
 いやあ、面白かったですね。クリアまで一気にプレイしました。こりゃスゴイもんだ、と思った感動は、今でも覚えてます。
 そしてウディコンで見事総合1位入賞。誠にめでたいことなのですが。
 しかしボクはそれを聞いた時、何とも言葉にしづらい、イヤな違和感を感じたのです。
 この作品が優れた作品であることは認めつつも、はたしてこれが1位で良かったのか? という思いもまた、同時に感じてしまったのです。
 誤解の無いように言っておきますが、ボクはこういう飛び道具、嫌いじゃないしむしろ大好物です。
 なのに、なぜこの作品が1位になったことを素直に祝福できないのか。

 何回かプレイし直しました。他の人の意見も見ました。自分自身の中も掘り進めました。
 見えてきたのは、本作の非常に綿密な情報コントロール。
 そしてそれが、残念ながらボク自身の厄介な部分に触れてしまったということでした。

 ここから先の文章はできれば、本作についてどこか違和感を覚えた人に読んでもらいたいと思ってます。
 好きな人にとってはおそらく、言いがかりとしか思えない内容かと懸念するからです。
 未プレイの人は、どうか1回クリアして、充分に余韻を味わったあとで読み進めてもらえればと思います。
 2回以上クリアするとよりよくわかるかも知れません。


 さて、既にクリアした方ならおわかりでしょう。
 本作のゲームとしての楽しさは、ほとんどガチャゲーのそれ。戦略性や戦術性に乏しいものです。
 序盤から終盤まで、本作はプレイヤーに商品開発をさせるよう巧みに誘導しています。おそらくほとんどのプレイヤーが初回で、レシピ完全制覇かそれに近いところまで開発すると思います。
 しかしやることは、必要な素材が揃うまで探索を続ける、それだけ。素材毎に収集場所が決まっているため、探索場所の選択の余地はありません。
 営業には一応、オススメと生産中止を使って受注をコントロールし、残り魔力と魔力供給、機体強化バランスを管理する要素はあります。
 ですが結局、新商品になるほど魔力供給が爆発的に増える仕組みなので、探索と商品開発をメインに活動せざるを得ないのです。
 戦闘も詰まるところ、パターンを探してハメ殺す作業に行き着きますからね……。

 しかしまあ、ボク自身はゲーム性について、そこまで重視していないんですけどね。
 Aボタン押しっぱなしのRPGだろうが、選択肢なしの読むだけノベルゲーだろうが、ボクは好きですから。
 面白いかどうか、楽しめるかどうか、結局はそこでしょう、と。
 ゲームとしての戦略性、戦術性が低くても、それが総体として楽しめるかどうかはまた別の問題です。

 その点本作は、この薄い戦略性・戦術性を巧みに隠蔽して、プレイヤーを楽しませる工夫に富んでいます。
 ボクが注目したのは、開発画面。
 開発画面で公開されるのは、たった3種類の商品のレシピだけ。商品名すら明かされません。
 プレイヤーが探索するのに必要な、最小限の情報しか開示しないのです。
 しかしプレイヤーにとっては、最も多くの時間を費やす探索の、唯一の道しるべです。
 次開発するのがどんな菓子か、次に開放されるレシピはどんなレシピか、それを楽しみにプレイヤーは探索を続けます。

 そしてこの開発画面は、本作の重大な問題点を隠蔽しています。
 本作は、余剰素材の使い道が一切ありません。素材交換も、魔力変換もできません。倉庫で腐らせるしかないのです。
 しかし、全レシピの必要素材数を合計すると、どうにも必要な素材数がいびつです。
 草原で収集できる小麦が最多(68個)ですが、他に草原で収集できる素材の必要数があまりに少なかった(平均29.75個)り、海で収集できる素材の内、必要数が一番多いのがレア素材のアンジュ(26個)だったり。素材の収集率と必要数が比例していません。
 どうやっても、余った素材が腐るようにできているのですが、しかしこれも、おそらくは計算した上で敢えてやっているのです。
 あり合わせの素材だけで新レシピが開発できないよう、プレイヤーが常に探索し続けるように。
 レシピが3つしか開放されない、先の見えなさが、目の前のミッションにだけ集中させる効果を生んでいます。
 在庫数確認の画面を用意しないことで、余計なことを考えさせなくしているのですね。

 この開発画面が、プレイヤーにとってはほとんど唯一の道しるべとなります。
 中盤で開発が封じられる展開は、だからこそフラストレーションが溜まるわけです。
 昼過ぎてから起き出して、当て所なくさすらうキャンディ。突然開発画面を封じられたせいで、プレイヤーも何をしていいのかわからない。
 そして探索は17:00で終了。21:00までは、営業も開発もできないので本当に何もできません。そこでわざわざプレイヤーに休息を選ばせるんですよね、このゲームは!
 プレイヤーの没入感を盛り上げるこの場面ですが、しかし一方、この後必ずキャンディが営業を再開することも、プレイヤーにはわかっています。
 プレイヤーとしては無為に漂うのではなく、営業再開の準備を進めたいところなのに、しかし、開発画面が開かない。「「しょうひん」が かいほうされました」と表示された時には「違う、そうじゃない」の大合唱ですよ。
 親友を無くし、人を撃ち殺した後で、事実を受け止めきれないキャンディに最初同情的であっても、いくら何でもプレイヤーの堪忍袋の緒が切れそうになる。
 ちょうどそのタイミングで、営業再開と大幅強化、そしてネレイア。すべては一気に行動が開放される、この開放感のためだったのです。
 休息が選べなくなるのもまた、ニクいですよね。もうあの時のキャンディとは違うんだ、と端的に示しています。

 見返せば見返すほど、実に計算されています。改めて、実に見事なものだと感服します。
 しかし、見返せば見返すほど、ボクの中にはひとつの疑問が生じるんです。
 この作品にとって、プレイしてるボクって一体なんなんだろう? と。

 プレイヤーがどれだけ努力したところで、本作のストーリーは一切変わりません。
 どれだけ戦闘を工夫したところで、村の人口は一切変わりません。減少を食い止めることも、抑えることもできません。
 パンナコッタは死にますし、キャンディがあの男を射殺することも止められません。キャンディが自殺する選択肢もありません。

 ラスボス戦、たしかにラスボスは強敵です。
 しかし、コンティニューできます。それも何回でも。
 コンティニューする度に機体は際限なく強化されていき、そして何回コンティニューしてもエンディングには一切影響がありません。
 戦闘も、パターンがわかればハメ殺せてしまうバランス。パターンを読むまでがボクの仕事でした。
 ボクが探索し、開発し、営業してきた成果って何だったんだろう、と思ってしまうんですよね。

 ノベルゲーならいいんです。Aボタン押しっぱなしRPGならまだマシです。
 プレイヤーがストーリーに関わる余地が無いのなら、それはそれでストーリーを、小説を読むような距離を取って楽しむだけです。
 しかし本作は、プレイヤーに距離を取ることを許さないのです。
 プレイヤーが関与しない限り、キャンディは前には進まない。わざわざプレイヤーが休息を選ばないと、休むことすらしない。
 菓子を売ったのもプレイヤーです。菓子を売らない限り、戦闘で勝てないのでクリアできません。
 その上で、パンナコッタや他の妖精たちが消えたのは、お前が菓子を売ったせいだ、と責められるのです。

 せめて、ゲームで楽しませてほしい。
 プレイヤー自身がゲームで楽しんだせいだ、と言わせてほしい。
 本作を繰り返しプレイしていると、まるで自分がゲームの歯車になったような感覚があるんですよ。
 回し車を回している最中は楽しいのですが、いざ振り返ってみれば、そこには創意工夫もなく、諾々とゲームに与えられた課題に取り組むだけの、ゲームの一部になっている経験だけがあるのです。
 それを心地よいと思うか、どうか。
 その点に、おそらくボクの問題があります。

 思えば、今までのsunoriさんの過去作は、ゲーム性以外の部分で勝負することに特化してきました。
 このキャンディリミットは、まさにそうした系譜の集大成とも呼ぶべき内容であったと思います。
 むしろ問題は、なまじ楽しめたことなのでしょう。
 だからこそ、ボクのゲームを愛する気持ちを利用されたという、ボクの中の最も厄介な部分を刺激してしまったのです。

 ボクは、だからsunoriさんが「次作はいい加減にゲームとして作り込む」と言ってくれたことを、とても歓迎しています。
 仮にゲームとして作り込むことに苦手意識があったとしても、どうか、逃げずに取り組んで欲しいと願います。

 ボクはプレイヤーとして、ゲームに自由を求めます。
 作者の意図した楽しみを探りつつも、楽しみを求め、時には重箱の隅をつつき、時には妄想の翼を羽ばたかせ、作者が想定する範疇を少しでも越えようと足掻きながら、この激辛でレビューを書きます。
 変態の所行であり、悪趣味だと自覚はしつつも、ボクの生理はきっと、それを求めている。
 ボクの趣味に合わせてゲームを作れとは言わない。みんなもそのように楽しむべきだとも言わない。あくまでボクの愉しみです。
 しかし、もしかしたらボクのような変態が他にもいるかも知れない。そんな人に、このレビューを届けたかったのでした。
 ボクにとって本作をプレイすることは、そしてこのレビューを書くことは、きっと価値あることだったと信じたいところです!


 では、評点はネタバレを抑えて。

ハマリ度 : 8 / 10
 「病名・チュパカブラシンドロームサエジマ」「Wish Disproportionate」に連なる、集大成と呼ぶべき作品。
 仮に肌に合わなかったとしても、学びとれる部分は多くあるだろう。その意味で「快作」と呼びたい。
 減点理由は、ネタバレ部分を読んでください。気持ちとしては減点3・加点1、という感じ。
グラフィック : 9 / 10
 決して綺麗では無くとも、自作絵の味を最大限活かそうとする演出姿勢。この作品だから出来た部分もあるだろうが、それでも参考になる部分は大いにある。
 ぜひこれに満足せず、今後とも自作絵を続けていってもらいたい。塗りが変わるだけで大きく変わるだろう。
サウンド : 9 / 10
 mozellさんのネレイアを中核に据える構成だが、そこに至るまでの積み重ねも見事、一分の隙も無い。他作品で聞き覚えのある曲であっても、全曲しっかりと作中で息づいている。アーカイブのテキストを読めば、BGM構成自体でひとつの物語を作ろうとしていることがわかる。
 ただし、あの場面のピストルSEは1点減点に値する。あれははっきりとピストルとわかる音でなければ、意図が伝わらない。

 ごくごく短い、1プレイ2時間程度の作品です。
 騙されたと思ってプレイすることをオススメします。いやあ、面白い作品です。

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