■ 勇者最後の七戦
作者 [ いしみず さま ] ジャンル [ たった7回しか戦闘できない勇者が転生を繰り返し世界を救うRPG ] 容量・圧縮形式 [ 169MB・ZIP, ブラウザゲーム ] 製作ツール [ RPGツクールMV ] 言語 [ 日本語 ] 配布元
- (補足)
- 2024.02.11:現在の最新バージョンは1.2です。
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 8 /10 8 /10 48/60 赤松弥太郎 8 /10 8 /10 8 /10
英雄譚すなわち戦略。戦略すなわちパズル。
本日のイチオシ「勇者最後の七戦」のシステムは、俗にいう「WWA」。
モンスターは主に障害物として存在しています。すなわち、その障害物を7か所までしか取り除けないということでもあります。
もちろん、戦闘カウントの中には最終目的である星蝕種の討伐も含まれます。すなわち、「星蝕種」を倒す場合は、敵オブジェクトを取り除ける箇所も減るということです。
当然ながら、7回の討伐をストレートに進めると、最初の洞窟最奥のボスを倒す(計5戦)にもギリギリです。洞窟途中の階段から行ける神殿の攻略もほぼできません。
このため、「狭間の領域」で強化を行い、キャラのレベルアップ・初期装備の強化、特定のモンスターを無戦闘で排除など、進行をしやすくする強化が必要になるのです。
ただし、「狭間の領域」の強化の中には、プレイヤーは全く強くならないが、攻略のヒントを得るものが存在します。一度は実行が必要ですが、一度ヒントが手に入れば以降は不要となる強化です。
そして、最大の問題は、「狭間の領域」の強化の大部分は1周分しか効果が無いという点です。キャラのレベルアップも、初期装備の強化も、モンスターの排除も、1周クリアして狭間の領域に戻った瞬間に消えてしまいます。再取得のためには、同量の「星のしずく」を再び費やす必要があります。
当然、そんな周回を積んでも事態は何も進展しません。事態を進展させるためには、唯一の持ち越せる強化を開放する必要があるのです。それが「星の女神」。
「星の女神」を開放するためには、一定量の「星のしずく」の消費して呼び覚ました上で、対応する「星蝕種」の討伐が必要です。
「星蝕種」は、もれなく超強敵。戦闘前のヒントから分かる対策は必須ですし、その上でそれなりのレベルアップも必要です。大抵は「星のしずくでの初期レベルアップ」「戦闘6回を費やしての経験値」「その上で高効率の敵を通るルート選択」と、ゴリゴリのルート構築が必要となります。
しかしながら、女神を救い出した見返りも大きくなります。本作唯一の「1周クリア後も保持される強化」であることはもちろん、その強化量も甚大。
- 1戦闘あたり1回使えるスキルを女神1人毎に1個ずつ習得。しかも、いずれも通常のレベルアップで覚えるスキルと比べ物にならない強さ
- 特殊な装備「加護」を「星のしずく」で購入可能。元から「1周クリア後も保持される」他、女神を開放するごとにより強力な加護が購入できるように
ただし、「女神の開放」には一つのデメリットが。女神の開放も加護の購入も、「星のしずく」が必要です。すなわち、女神や加護で「星のしずく」を消費した分、通常強化に回す「星のしずく」が減るのです。
通常強化に回すだけでは事態は何一つ進展しませんし、かと言って女神の開放に「星のしずく」を回すと、「星蝕種」を倒すためには強化が足らない可能性もあります。
それでなくとも、「初期レベルアップ」を取得し忘れた状態で「特定のモンスターを排除」強化を取得すると、残りの敵をレベル1で討伐できずに詰む可能性があります。
本作では「7戦すべてを勝利」しないと周回できません。全滅すると、そのままGAME OVERとなります。
「狭間の領域」にたどり着くごとにセーブは取っておき、現世でのセーブは必ず分けてセーブするようにしてください。
本作、戦闘をこなすごとに「セーブしますか?」と問われるため、そこでボタン連打して「狭間の領域」のセーブを上書きしがちです。ついつい惰性になりがちな周回ゲーですが、慎重な一挙一動が常に求められるのです。「ほとんどの強化は持ち越せない」「強化の取り方を間違えると詰む」という点で、本作は難易度の高いゲームです。それ故に、女神を開放するたびに取得する持越し強化は強力です。
ただし、その持越し強化も「購入した周は単発強化が目減りする」欠点があります。それ故の「『星のしずく』をフルに単発強化に回すための余計な周回」が要求される足踏み感が、本作の欠点と言えます。
ストーリー面でのモチベーションが薄味なのも、また欠点です。作者手作りのグラフィック・愉快なNPCの言動・仲間キャラとの「百合」な関係…ほんのりしたフレーバーをどれだけ濃厚に味わえるか、それが本作を楽しめるかの分岐点です。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:8
叫ぶように 駆けるように 変えてしまえ現実
周回を重ねてボーナスで強化していく過程に重点を置いたゲーム……ボクが初めてプレイしたのはUpgrade Completeかな。ちょっと古すぎる?
Upgrade系とでも呼ぶべきこのジャンル、昔から長く続いてますが、最近ぼちぼち人気です。
一周のプレイ時間が短く、やり応えが出せるのでプレイヤーにも作者にもやさしいんです。ストーリーで言うと、ループものや転生ものとの相性がいいです。
本作もそのような、「ループ回してガンガン強化するぜヒャッハー」という作品です。
ただし、タイトルの通り、勇者が戦えるのは7回だけ。
どれだけ周回ボーナスを積もうと、この数値だけは決して変わりません。
どんなにレベルを上げても、装備を充実させても、7回戦った時点で主人公は死にます。
したがって本作の攻略は、いかに戦闘回数を減らし、必要な敵との戦いに集中するか、というところに懸かってきます。
ある時は金を払い、ある時はアイテムを使い、ある時は謎を解き、ある時は周回ボーナスで敵を消し去って、貴重な7戦をフル活用しましょう。
本作の舞台は、この小さな世界です。
小さく狭い世界ですが、見た目以上の奥行きはあります。
最初はともかく情報収集して、探索範囲を広げましょう。きっと攻略の筋道は見えてくるはずです。
手始めに城に行ってみると、姫改め女王があたふたしていました。
先王が戦死し、兵士の犠牲も多く、大変な状況なのはわかるのですがそれはそれとしてダンデライオン姫はポンコツです。
援助できる状況じゃないのはわかってるけど、「仲間が欲しい」という主人公に幼なじみの話振るなよ! 察せよそれくらい!!
この姫では話にならないので、さっさと周回ボーナスで王様を生き返らせたいところです。
敵を倒さず行ける場所は無いか、探しているうちに地下に辿り着きました。
この地下神殿こそが本作の裏の顔、攻略のメインと呼べる場所です。
この世界にある8つのダンジョンや町、すべてにこの地下神殿は張り巡らされており、抜け道として機能します。
さらに、光の柱が立っている女神像を調べると、周回ボーナスが大きく加算されます。ぜひとも巡礼したいところです。
ただし、敵を倒さなくていい代わりに貴重品・解錠ピックが必要になったり、岩石やオーブで道を塞がれていたりしますが……。
1周目・初見でその全貌を把握することは困難でしょう。
見事7回戦い抜けば、周回引き継ぎルームである狭間の領域へ。
リザルトボーナスである「星のしずく」によって因果律をいじり、主人公たちを強化したり、死んだはずの人を生き返らせたり、いろいろできるのですが、注意点が2つ。
まず1つ目が、余ったリザルトボーナスは、次周回を始めると消えてしまうこと。
これは次周回を始める前に警告が出るので気がつくと思います。なので星のしずくは毎回使い切るのが基本です。
もう1つが、改変した因果の効力は次周回までで、その次の周回には引き継がれないこと。
永続的に引き継がれるのは、一度解いた謎解きのカットと、後述の星の加護だけです。それ以外は次の周回の星のしずくを使って、再度因果律をいじる必要があります。
いじり方を間違えると、次の周回の星のしずくが今回より少なくなる、なんてこともあり得ます。
もちろん1周目よりはマシな状況で始められるのですが、攻略としては足踏みしちゃいますよね。
星のしずくを使う前に、「狭間の領域」のセーブデータを残しておくことを強く推奨します。
最初の星のしずくは5個程度かもしれませんが、それでも問題ありません。
飲み込みが早ければ、2週目にはもう20個以上の星のしずくが手に入るでしょう。
因果律をいじって探索を進めていけば、行動範囲はどんどん広がっていきます。
四天王と4回も戦わないと最上部に行けないと言われた魔王の塔ですら、1戦もせずにすべての宝箱を回収できるようになるのです。
その頃になれば、本作のリソース管理ゲームとしての面白さがわかってきます。
繰り返しますが、本作は戦闘回数がきわめて貴重なリソースです。しかし、それだけに気を取られるわけにはいきません。
たとえば解錠ピック。基本的に宝箱からしか手に入らない貴重品です。しかし星のしずくを1個使えば最初に3個手に入ります。購入もできますが、道中で敵との戦いが避けられません。
岩石やオーブ。破壊するには、主人公の攻撃力や魔力を上げる装備やレベル上げが必要になります。半分のステータスで砕けるようになる補助アイテムもありますが、入手には戦闘なり解錠ピックなり星のしずくなりが必要です。
金の入手方法が限られているため、宿屋に泊まるのも懐次第です。HPやMPも当然重要なリソースになってきます。
因果律を改変すればだいぶ楽にやりくりできるとはいえ、注ぎ込んだ星のしずくの元を取らなきゃいけませんから、最善を目指すとほどよく頭を使います。
それが楽しいのです。
そして、探索範囲が広がり、星のしずくがガッポリ手に入るようになってから、ふと思い出すのです。
「あれ。このゲーム、クリア目標何だったっけ?」と。
狭間の領域で地球の女神・テラが説明してくれているのですが。
いまいち要領を得ないので、ボクが説明すると以下の通り。
- テラ以外の7女神は、ラスボスによって捕らえられています。
まずは狭間の領域で星のしずくを捧げ、女神を呼び覚ましましょう。- すると、女神を捕らえているラスボスの一部「星蝕種」が、どこかに出現します。それを倒しましょう。
出現場所は城にある水晶玉からヒントをもらいましょう。ノーヒントでは難しいです。- 女神が解放されるのは、狭間の領域に戻ってから、つまりその周回を終えてからです。
解放された女神から強力な技能を授かり、以後この力は周回を超えて引き継がれます。
また、星のしずくと交換できる「星の加護」という強化装備が解禁されます。これも周回を超えて引き継がれます。解放した女神の数に応じて上位の加護が解禁される仕組みです。- もちろん女神解放の進捗も、周回を超えて引き継がれます。
すべての女神を解放できたら、ラスボス本体と戦えるようになります。直感的に「面倒くさい」と思ったあなた。
この面倒くささこそが、本作のゲームデザイン最大の難点です。
Upgrade系のゲームの真骨頂は、周回することで、今までできなかったことができるようになる楽しみ、新しいゲーム体験ができる面白さにあります。
新たなゲーム体験に期待しているから、同じような周回であっても楽しんでプレイができるのです。
RPGの場合、期待されるのは第一に探索範囲の拡大であり、新たなストーリーの解放です。
しかし本作で女神を解放しても、せいぜい戦闘が楽になる程度の見返りしかありません。
女神との会話はささやかなものですし、探索範囲の拡大にはまったく寄与しません。
女神の力を使わないと勝てないような敵は、ラスボス以外に誰もいません。女神の力が無くともどこにでも行けちゃうもので。
「探索」と、女神を救うという「ストーリー」が、ほとんどリンクしていないのです。
本作でどちらが楽しいかと言えば、圧倒的に「探索」です。これはもう仕方ない。
新しい場所や新たな発見が次々見つかる楽しさは、本作の魅力の核と言える部分です。
なのに、その探索の手を止めて、貴重な星のしずくや戦闘回数を費やして星蝕種を倒すってのは、プレイヤー心理として割に合わないんですよ。
星蝕種を倒しても経験値も金も手に入らないし、強敵撃破ボーナスももらえないし……まあ理解はできるんですが。
でも、星蝕種を倒せばもっと新しい変化が起こせるとか、そういうプレイヤーに驚きのある「見返り」が欲しかったかなあ……。
目立つ欠点は確かにある作品ですが、クリアまで初見で8時間くらいだし、クリアまで進めてみようかと思える面白さはあります。
- ハマリ度 : 8 / 10
- エンディング最初のグラフィックが選んだ主人公のグラフィックと一致しない、宿屋チェックアウト直後に再度宿泊しようとするとハマる等、細かい不具合はまだありそう。
おそらくエンディングは固定。せっかく絆を深められるんだから、最後くらいは個別エンドがあっても良かった気はする。プレイヤーに了解を取った上での話だが、もっと趣味を前面に出してもいい。- グラフィック : 8 / 10
- フェティッシュに走った8女神のデザイン、いいと思います。描き下ろしの敵絵はそこまで趣味に走ってはいないが、いしみずさんの描いた絵と一目でわかる味がある。
- サウンド : 8 / 10
- 安定の魔王魂。ラスボス前半で魔王魂ネオロック、後半ユーフルカ、さらに魔王魂で〆。魔王魂のサイバー27を使ってるのはなかなか挑戦的か。
えーと、未プレイの方にも、いしみずさんの「趣味」について少し説明しましょうか。
本作の仲間は、全員女の子です。主人公の性別は特に語られていませんが、「リリー」というデフォルト名から考えて、おそらく自明です。
そして、2人パーティを組んでいる時に限り、宿屋に泊まると「絆を深める」というイベントが発生します。
みなさんの想像よりはずっと淡泊な描写ですが、つまりそういうことに他なりません。
残念ながら、ストーリーにまったく影響を与えないイベントではありますが、リザルトボーナスでなぜか星のしずくが1つ手に入ります。
しかし、全員分見るのは結構大変です。一度加入した仲間は、雇用契約が切れる以外にパーティから外す方法がありません。
そして、幼なじみを生き返らせた場合、周回開始時点で2人パーティとなり、幼なじみをパーティから外す方法がないので……
システム的にも優遇されてますし、やはり幼なじみは大正義という結論になるかと思われます。