■ トラウマ*トラウム 翠眼の人形
作者 [ ブリキの時計(ぬばりん さま & ななしの ちよ さま) ] ジャンル [ 探索ADV ] 容量・圧縮形式 [ 241MB・ZIP ] 製作ツール [ RPGツクールMV ] 言語 [ 日本語 ] 備考 [ セーブデータのバックアップにMobageアカウントが必要・通常プレイでは不要 (Web版) ] 配布元
- (補足)
- 2017.05.03:ダウンロード版が配信されました。「ふりーむ!」からダウンロードできます。
レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 10/10 9 /10 102/120 シュン 7 /10 9 /10 9 /10 赤松弥太郎 7 /10 9 /10 7 /10 DECOすけ野郎 8 /10 10/10 9 /10
《 ES 》 ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:9
ただ一つのすれ違い。それがトラウマを生んだ。
今回のイチオシ作品「トラウマ*トラウム」のテーマは、ヒロインであるフィネが抱く「トラウマ」。
前作「クロエのレクイエム」や「幻想乙女のおかしな隠れ家」と同じく、多感な少年少女の心の闇と襲い掛かる悲劇を描いた作品です。
ただ、「クロエのレクイエム」から3年、「幻想乙女のおかしな隠れ家」から2年少々が経った現在の「トラウマ*トラウム」は、細かく作風が変わっています。
違いが見れるのは、やはりゲーム内容のほとんどを占めるストーリー。ただし、そこの比較をすると、今作ばかりでなく前作のネタバレにもなってしまいます。ストーリーに関しては「ラストに大きなどんでん返しがある」と簡単に触れるだけに留めておきます。
ストーリーを進めるために必要なアドベンチャー部分でも異なりを見せます。本作は「クロエのレクイエム」と同じくライフ制。ルカと会話すれば即座に全回復する仕組みも「クロエのレクイエム」と同じです。
しかし、本作ではライフがカギとなる謎解きが多くを占めます。ライフの最大値は、一番使うリリーが7、フィネはたったの1、後半に仲間になるルカは20もあります。ストーリー後半になると、先頭にする順番が謎解きとなる物まで出てきます。
しかし、謎解きの難易度はそれほどでもありません。セーブポイントであるナルがある程度のヒントをくれる仕組みになっているからです。「そんなヒントじゃわからない!!」という場合でも、かなり答えに近いところまで教えてくれます。
そこまで親切になっている本作ですが、私は「迫りくるトラウマとぶつかる」箇所でかなりGAME OVERを積みました。ここだけ何故か「敵が目の前に来た瞬間に決定キー」というアクションになっており、そのタイミングがシビアすぎるのです。クリアした時点でも、「どのタイミングでクリアか、どのタイミングでGAME OVERか」が分からないままでした。プレイヤーがフィネ固定なので、1ミスでGAME OVERになってしまうのも難易度の高さの原因です。
色々な箇所でロードが入るブラウザ版専用であることの弊害が、「トラウマ*トラウム」でも目につきます。そんな道中を耐え抜けたのも、やはり、ブリキの時計が描く個性豊かなキャラクターがいたからこそです。序盤では本当に「すれ違う」だけだったキャラクターが後半で重要なポジションであることが分かるなど、複線の張り方も多岐に渡っています。
ただ、その中で主人公の一人、しかも主役に近いリリーの立ち位置が、ストーリーで一貫して不透明なのが気にかかります。
唯一、家族構成が描かれていない点
フィネにもルカにもその他重要人物にも、「友達」以上の関わりがない点
一番最初にナルの声を聞けた理由
考えれば考えるほど、リリーに関する情報が不足しているのが気にかかります。
最も、これは単に「フィネの物語である本編には重要ではないから」という単純な理由なのかもしれません。むしろ、「純粋な友情以外の関わりが無い」リリーだからこそ、複雑な過去に捕らわれたフィネを救い出せたのだと前向きに解釈しましょう。
《 シュン 》 ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:9
具現化してしまいたいほどのトラウマ、貴方にはありますか?
ブリキの時計からまたまた凄い作品が飛び出してきました。
何が凄いのかというと、演出や話の構成が見事で、ボイスや主題歌まで加わっていることにあります。
今回のテーマは「トラウマ」。具現化してしまうほどの恐怖に、どう立ち向かうのでしょうか・・・?
リリー・マイヤーの友達、フィネ・アンデにはあるトラウマがありました。
それは極度の男性恐怖症だということ。兄以外には拒否反応を示してしまいます。
ある日のこと。地下室で倒れたフィネを目撃したリリーはある世界に迷い込むことになります。
その世界は「トラウマ*トラウム」という記憶とトラウマが具現化した世界。
リリーは友達を助けたいという一心で幼馴染、ルカ・レッチェルの力を無理矢理借り、
「トラウマ*トラウム」に挑戦することとなるのでした。
キャラの切り替えや体力の管理、相談が重要となってくる探索アドベンチャーとなっているこの作品。
幾つか特徴があるのでここで説明したいと思います。
まず、操作キャラには特定のアクションを行うことが出来るようになっており、これが攻略の鍵を握ることとなります。
また、各キャラには体力が設定されており、これが0になるとゲームオーバーです。
仲間がいれば相談することも出来、これを使わないと突破できない場面が結構あります。
少々難しい場面もありますが、ヒントや救済措置もあるので詰まることは無いでしょう。
エンドの分岐は無く(事実上の結末となる場合もありますが・・・)、話は一本道です。
謎解きや逃走イベント、簡単なミニゲームにも挑戦することとなりますので注意しておきましょう。
フィネのトラウマの原因は何なのでしょうか?本人にもその理由は分からないようです。
過去に触れ、起こった出来事を探り、記憶のふたを開けることによってそのトラウマの原因が分かってくるようになります。
「遂にトラウマ克服か!?」と思って油断していたらトラウマの本当の原因が判明した時は本気で驚きましたからね!
まさか一番トラウマと関係無さそうなあの人がフィネの一番のトラウマだったなんて・・・。
友達のリリーやその幼馴染のルカがどのようにしてそのトラウマに立ち向かっていくのでしょうか?
そしてフィネ本人はそのトラウマを解決出来るのでしょうか・・・?最後まで見届けましょう!
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:7
私だけの道だから 忘れないで あの頃のことを
ボクがこの作品を知ったのは1年あまり前ですが、もっと前という方もいるでしょう。
ずいぶん前から構想を続けていた作品です。クロエのレクイエムよりもさらに前だったと聞きました。クロエのレクイエムも、幻想乙女のおかしな隠れ家も、この作品を作っている最中に見えた課題を乗り越えるために作った面があるとも聞いています。
言ってみれば、このためにツクールを買ったような、ブリキの時計の原点とも言える作品です。
だからボクは前々から、この作品をプレイしてみたいと思っていました。いつプレイできるだろうと待ち望んでいました。
いや、プレイした満足感はありましたよ。
特にアートワークは没入感たっぷりで、クリアまでの時間は瞬く間に過ごすことができました。
ですが、最初の期待が高かった分も含めて、「もっとできるだろ」と思う部分が、いくつかあるんです。
近々バージョンアップが予定されている中言うのも気が引けますが、この作品はもっとやれるはずだ。大きく3点指摘します。
彼女らにとっても本当に大切な作品なんですから、もっと期待してもいいと思うんですよ。
まず目に付くのが、イベントの作り込みの甘さです。
会話システム等、本作は今までのブリキの時計作品に無かったシステムが組み込まれています。
特に会話システムは、ヒントの他にもキャラの相互関係を保管する意味もあり、単独行動時には選択できないことで、心細さを引き立てる役目もある。
とても重要な位置にあるシステムなのです。
なので、作りが甘いのはとても目立ちます。
会話中に敵の動きにウェイトが掛からず、一方的に攻撃される点や、自キャラの動きにもウェイトが掛からず、動き回ったり他のものを調べたりできる点は、生理的に受け付けにくい仕様です。
他にも、引き返すと入る前とは別のマップに移動する場所があったり、中盤の脱出イベントのマップ切り替えが不自然だったりしました。
いずれも、致命的な不具合ではありません。ボクが確認した限りでは、進行が止まったり、通常起こらない変化が起こったりはしませんでした。
しかしプレイヤーの心理としては、目立って不自然なことが度重なると、「ちゃんとプレイしてあるのかなコレ」という不信感がどうしたって生まれる。
序盤の会話はちゃんとウェイトが掛かっていたりするのも謎で、しっかりしてくれよと思わせる要因になってます。
次に、インフラの貧弱さ。特に声についての話です。
本作は長尺のイベントにボイスが入っており、目玉になっています。
公式サイトやメニューのキャラ情報で声優は確認できますから、声優に詳しくない方は検索してご覧なさいな。肝が冷えましたか?
そしてエンディング曲も書き下ろしの唄入り。あの人がフリゲで歌を唄うのはざっと13年ぶりになるでしょうか。時代がまるで違うと言うしかないですね。
率直に、失礼承知で申し上げれば、ここまで「金かかってるなあ」と思わせるフリゲはそうそうないでしょう。
ななしのさんのサウンドも厚みがどんどん増しているし、正直サウンドは10点満点でないとおかしい。当然それだけのポテンシャルは持ってます。
しかし、このボイスが罠になってしまうのです。インターネット回線によって。
初回読み込みは遅く、良くても「 あれ? 声が 遅れて 聞こえてくるよ」レベル。遅い時はボイス入りと気付かず台詞を送った後です。
二回目プレイすると、キャッシュが働いて想定通りのタイミングで声が出るのがまた憎い。
以前レビューしたアリスの娘もそうだったんですが、キャラチップが入れ替わるだけでも画面が明らかにちらつくんです。AndAppのインフラの問題なのか、それともツクールMVの問題なのかはわからないんですけど。
本作のように大型の立ち絵で、表情差分もたっぷりある場合、読み込む度に待たされます。音声と違ってメッセージと同期を取ってるので、確実に待たされます。
……今までの話は、ダウンロード版を作ればPCでは解決する、それだけの話なんですが。
仮にダウンロード版を出せない事情があるとしても、ボイス入りのイベントには上下に黒枠を出すくらいやってくれると、備えられると思うんですよね。
最後に、これは不満点というか、「もっとやってくれよ!!」と思っている点です。
本作はフィネのトラウマを主軸として、フィネの成長物語として進んでいきます。
そしてフィネがトラウマを克服し、新しい日常へと進んでいく場面でエンド。フィネの物語としては完結しています。
いや、あの展開は法律的にどうなのよ? と言いたくなる気持ちもわかりますけどね。ボクが言いたいのはそこじゃない。
リリーとルカの物語は、これで終わってないでしょ? というところなんですよ。
思わせぶりなあれやこれやの伏線が、まったく手つかずのまま終わっちゃってるじゃないですか。
そのままにしてエンドっていうのは、ちょっと無いなーと思うのですよ。リリーやルカの成長がうやむやになってるのは気になるじゃないですか。
どうせ続編とか番外編とかの足がかりでしょ? というのも、さほど穿った見方では無いでしょう。
でも、あのエンディングから続編を作るのは、考えてみると案外難しい気もします。だって、フィネの物語としては完結しちゃってるので。
続編としてフィネ抜きで、リリーだけを動かす話にはしづらい。一方で、フィネをこれ以上どうするの? というのも今時点では見えてこないんですよね。
まあ、やり方次第だと思いますけど。
ただ、リリーもルカも、今自分自身の現状で行き詰まっているわけでも無いので、フィネと同じように一気呵成に解決しちゃうのも不自然な気は、ちょっとする。
ボク自身の希望としては、ぜひシリーズ化してほしいとまで考えてますよ。
新しい人物を主軸として、そのトラウマをリリーとルカと、フィネの3人で解決していく物語を、もっと見てみたいんです。
長い長い旅の末、徐々に戦時に向かう世相の中にあっても、リリーとルカにも何かの救いが見える、そんな大団円を期待してるんです。
そこまでやってしまうと、とんでもない時間が掛かるのは見えてますけどね。なかなか「やる」とは言えないのも、理解はしてます。
今現状のエンディング、あれをこのまま終わらしちゃっても大丈夫にするための保険と考えてしまうのは、ボクが穿ちすぎてるんでしょうね。
ただ、できることなら、リリーもルカもこのまま終わりにはしませんよ、続きも考えてますよ、というメッセージを、作中から感じたかったのです。
この作品のポテンシャルは、この程度で終わるものでは無いんですよ。
絵もサウンドもストーリーも、非常に高いポテンシャルを持ってるんです。
人の心の中を探索するという、古典的で安定感のある題材でありながら、舞台を敢えて戦間期のドイツに据えることで、社会的な視座も示唆している。
見た目こそホラーゲームの体裁を取ってますが、その枠組みさえも越えていけるような可能性が、これにはある。
一時期のメディア報道のために、ブリキの時計について、祭り上げられた一種の少女的なアイコンとだけ捉えている人も多いでしょう。
しかし、実際に少し会って話したボクの見解を言うと、アイツら断じてそんな生やさしいもんじゃねえぞ、と。
エンディング付近で資本主義がどーのという語りをぶち込んできたのを見て、ボクは確信しました。コイツら、やる気だ。
このままで終わりはしないのでしょう。ならばぜひ、とことんやって欲しい。それが続編であっても、次回作であっても。
あなた方もようやく登り始めたばかりなのでしょう? このはてしなく遠い男坂を。
30年越しになろうと、自らの職業寿命を賭して連載する、かの漫画屋の姿勢は、そう見習えたものではありませんけどね。
《 DECOすけ野郎 》 ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:9
幼年期のトラウマに囚われた友人を助け出すことができるだろうか?
ホラーだと!?それはやらないといけないな!
さっそくレッツプレイ。ご利用環境は動作対象外環境となります
下記のURLをコピーし、最新バージョンのChromeで開き直してお楽しみ下さい。そうか、Firefox(デフォルトブラウザ)だとダメだったのか。
なんだよー、早速やる気が削がれてしまったよ。
(Chromeを再度ダウンロードするために多少の時間がかかった)とりあえず、各人について感じたこと
- リリー:キック力がすごい
- ルカ:そんなリリーに呆れつつも腐れ縁的な存在
- フィネ:なんか過去にいろいろあったりしていそう
- フィネの兄:いろいろありそう
- ナル:いろいろ知っていそう
- ラインハルト:名前はすごいが実態は不良
- カメレオントリオ:カメレオンクラブっぽい
- その他の男子生徒:女に飢えている
- 敵:グロい&ダメージを食らう前提で進める
リリーのキック力で相手をぶっ飛ばしつつ、フィネの読み取る能力とルカの回復力で進めていきましょう。
子供と大人の残酷さや恐怖演出、人ならざるものや人の怖さ、謎解き(わからないと躓くが)などは過去作品をきっちり踏襲していました。
途中で分からなくなっても親切な方がヒントをくれます。くれない場合もあります。
分からないとどん詰まりになったりもしますが…。ただ、謎解きで少し理不尽に感じられた点もありました。
一旦メニュー画面を見ないと調べてないとフラグがたたなかったり、
間違えたら即ゲームオーバーになる箇所もそこそこありますし、
数回死んでやっとわかったこともありました(1番目&2番めの部屋とか)。それ以外だと、以前他のAndAppのゲームを取り上げていた時と同じ評価になりました。
というのは、グラフィック方面のバグが頻繁に出たからです。
1章でフラグ(3枚の花びら)が無い状態で話かけると強制フリーズになったり、3章の屋敷廃墟でイベント中に「相談相手はいません」が頻繁に出てきて、その後会話のみしか出てこず進行できなくなったり。
(真剣なシーンなのに毎回「相談相手はいません」と出てきたので、最初はギャグなのかと思った)このゲームの最大の敵は仕様だったのでは、と思いました。
あと、パートボイスを起用しているからか、文章のウェイトが数秒ほどあったように感じてそこももどかしかったですね。絵や音楽、演出(演出はかなり突出していた)、ストーリーなどはかなり良かったので最後まで読み進めていきましょう。