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■ アサルとスパイ

キメ台詞
作者 [ エビカツドン さま(カツとじ和善) ]
ジャンル [ アドベンチャースパイコメディ ]
容量・圧縮形式 [ 180MB・ZIP ]
製作ツール [ NScripter ]
言語 [ 日本語 ]
ダウンロード ダウンロード先

(補足)
2012.05.14:現在の最新バージョンは、Ver.1.65です。

【注】劇中劇です カノコ 最初のメダル タンテイ ピンチ…? VSチドリ

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 8 /10 9 /10 51/60 B
赤松弥太郎 7 /10 10/10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:9

割とスパイしない。

今回紹介する「アサルとスパイ」は、その洒落…と言うかオヤジギャグの効いたタイトルの通り、「コメディ」に分類される作品です。
登場人物は、「アサルとスパイ」内キーワードで言う「ガンギマリ」ばかり。ツッコミ役である主人公・アサルからして、倫理観が一般人とはズレている「裏社会」の人間らしさを垣間見せます。

それでありながら、スパイ面は本格的アドベンチャー。常に緊迫感のある選択肢を迫られます。
ただ移動し、仲間と相談するのでさえ、巡回中のセキュリティを回避しながら行わなくてはいけません。(ちなみに、「ただ会話するだけでもエンカウント発生」と言うのは仕様であると、ゲーム内で言及されています。)
アサル(とタンテイ一行)が迫られる選択肢は、単にマウスでセリフをクリックするADV従来のモノばかりではありません。
ファンクションキー(F1~F12)やタブキーを時間内に入力する「キンキュウイベイジョン」
ランダムに出てくる選択肢を選ぶ…運が悪いと、どれを選んでもダメージになる「アサルトスロット」
これらの制限時間は10秒程度。キーボードの確認以外のことを考える暇はありません。

ただし、これらの緊迫感あふれるシステムを完備していても、難易度は「簡単」です。ランダムエンカウントでは、ダメージからGAME OVERまでの猶予は3~10回程度あります。
しかも、「アサルトスロット」でイイ感じの選択肢を選べば、逆にスパイゲージが回復できます。(終盤では、この回復を利用してスパイゲージを全快にしておかないと、ラストバトルに移動できません。)
ここら辺は、ストーリー(及びコイン探し)に集中できる配慮として、私は好評価を挙げたいところです。

そう、このストーリーこそ、「アサルとスパイ」の醍醐味と言えます。
スパイの基本は丁々発止の騙し合い。かの「ルパンⅢ世」の原作でも、ルパン一行と悪役は(大抵殺し合いを含む)騙し合いを繰り広げてきました。
「アサルとスパイ」のストーリーも、この「騙し合い」が主。中盤の時点でネタバレが怖くて言えないレベルのどんでん返しが繰り広げられます。
なお、視聴者に「驚き」を提供する都合上、主人公・アサルは基本的に騙される側です。

ただ、難易度的にはストーリーに支障がない…むしろ大いに盛り上げるレベルですが、テキスト量的にのめり込みを疎外する要素が出てくるのが惜しい所です。
「アサルとスパイ」では、移動を繰り返し、コマンド総当りでストーリーを進めていきます。その最中にキャラクターのおバカな会話が繰り広げられます…同じ場所・同じ条件にいる限り延々と。
「Ctrlキーでスキップだ!」とゲーム中でも言及されていますが、それでも、エフェクト分(数秒~数十秒程度)は時間が掛かります。
ただでさえエフェクト盛りだくさんな展開。初見は良くても、それが何度も繰り返されると、どうしても「ダルい」と言う認識が出てしまいます。
「一度見たイベントは繰り返し再生させない」工夫を、ゲーム側で入れて欲しいと思います。どうせ、ヒントやフラグ立て等は「カイワ」や「イドウ」で能動的に集めるものばかりですし。
また、移動中に「アサルトスロット」など、スキップできないイベントが出てくるのも、やはり移動を繰り返すアドベンチャーとしてはマイナス点です。
多くの場合プレイヤーの体力と時間を、下手をするとゲーム内キャラの体力さえ消耗するイベントなので、「一度クリアすれば出ない」ぐらいにしておいた方がちょうど良かったと感じます。

下で赤松氏も指摘している通り、最新版のVer.1.65でも、まだまだ細かなバグのある作品です。しかし、それほどのバグも気にならないほど、ストーリーは一直線上にのめりこませてくれる強引なまでのパワァとパッションを持ち合わせた作品であることも事実です。
とりあえず、一通りのストーリークリアを果たした私の懸念点は、Ver.1.4(投稿レビュー時のバージョン)でのクリアデータを、最新版に直したら全部消えちゃった…と言う点です。
※ 最新版の存在は、この原稿を書いているときに気づきました。
※※ この点については、流石に評点には入れてません。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:7 グラフィック:10 サウンド:9

最高のパートナー 出逢う時 奇跡おこる

 失われた肉体を鋼に変え、亡くしたはずの命に再び火をともし、
 彼はなぜ、そこまでして戦うのか?
 空白の10年の月日は残酷で、少女をヒキニートに変えているだろう。
 錆び付いた推理能力は「下の下、以下」と評されることもあるだろう。
 しかしどんな苦境も、彼の胸に秘めた正義の怒りを消すことはできないのだ。
 子どもたちの笑顔を守るため、彼は何度でも蘇る! 卑劣なスパイ共との決着を付けるまで!
 征けタンテイ! 「2人で1人の名探偵」と呼ばれるその日まで!

タンテイ

 もうこいつが主人公でいいんじゃないかな?
 といったところで、今月のレビューを始めましょう。

◆おいおいスパイ屋敷かよ

アイキャッチ

 本作が某法廷劇と霊媒術をくみあわせたまったくあたらしいADVのリスペクトに溢れていることは、→などを見なくても一目瞭然ですね。
 その某作品、今なお愛される名作ですが、システムとしては決してそこまで斬新ではありません。
 一本道のシンプルなコマンド選択型ADVを、スタイリッシュな演出による爽快感、そしてキャラの魅力で惹きつけるという方法であり、だからミステリーとしてシナリオに多少の穴があったとしても楽しませる、ある種力押しと言える面を持った作品でした。

 さて、振り返ってこの作品について見てみると……
 正直なところ、爽快とは言い難い部分がかなり多いです。
 やはりランダムエンカウントは全体で見るとマイナスだったと言わざるを得ません。特に終盤になると経路が複雑な上エンカウント率が異常に高く、ロード直後にエンカウントするという仕様も相まってストレスばかり溜まります。
 そしてエンカウントすればアサルトスロット、運の要素が強いシステムですが、こうも連続してエンカウントする場合、時間もダメージも予想が付かないというこのシステムは、イライラするだけの障害となってしまいます。
 謎解きもかなり悪質なものが多いです。最初の潜入ミッションの警報装置など序の口で、選択肢に見せかけて実は強制的にゲージを10%まで削り取るというトンでもない罠まで存在します。
 サメジマが繰り返し言っているように、本作はどうもセーブ&ロードが前提のようです。そのセーブ・ロードもスロットが少ない上にクイックセーブがなく、かなり使いづらいです。

 ……等々、作りの荒さがかなり気になる本作ですが。
 そこをキャラの魅力で力押しする、という方向性なのです。
 もちろん、キャラの魅力と言ってもいわゆる萌えなどではありません。
 それこそ某ADVのような、やり過ぎなまでにコミカルに強調された、でも憎みきれない生活臭をもったキャラクター達なのです。

ヨツバ・カノ  もう例に出すのは1人で十分でしょう。四葉 花音、通称カノコです。
 普通のADVだったら仮にも助手ポジション、少々頭の回転は鈍くとも、主人公のために献身する可愛げのあるキャラになっていたのでしょうが……
 なんとこの子、主人公の役に立つことが一度もないという、脅威のお邪魔キャラです。「役に立ったこともある」? 気のせいですよきっと。
 バカの子なんてもんじゃない、やることなすこと全てがアサルを窮地に追い込むという始末。アサルが悪意を疑うのは当然でしょう。
 アサルの推理は半分は当たりですが、しかし半分はハズレです。なぜなら彼女には自覚がない。
 無自覚な悪意は避けようがありませんからな!

 ボンビー並の迷惑な存在、まごう事なきウザキャラ……なのですが。
 なんか、憎みきれないというか、こんなヤツ憎んでも無駄だなと序盤で教育されてしまうというか。
 「コイツはもうしょうがない」と思わせた者勝ちなんですよね、こういう子って。
 そしてまた悪い意味で期待を裏切りませんからねえ彼女は。想像は軽々超えていきますが。
 コメディとしては、非常に有用な人材なのですよ。

 スパイものの裏切ったり、裏切られたりという展開は、普通はハアド・ボイルドなものです。
 まして本作の主人公は、政府のスパイじゃなくて産業スパイ……社会の暗部と言うべき分野でしょう。
 洗脳モノなんて、ボクにはアレやコレやの18禁くらいしか思いつかない、もうネクラ全回ジャンルじゃありませんか。
 しかしこの作品は、それをハイテンションでぶっ飛ばし、どこまでも明るく楽しいコメディに仕立てている、そのギャップに面白味があるのですよね。
 そりゃあカノコみたいなヤツばっかり連れてくれば、コメディにならざるを得ませんって!

 裏切ったり、裏切られたりという展開はもちろんありますよ。
 カノコだって登場時点から胡散臭いわけで、案の定進行につれて立場は二転三転していきます。
 しかし、どれだけ立場が変わろうと、一貫してカノコはカノコのままで変わらないんですね。
 立場や肩書きを隠してるキャラがほとんどですが、彼らは最初から一度も本性は隠していません。そのまんまなんですよ。

 一貫してるキャラ達に支えられて、というより突き上げられて、本作のシナリオは暴走を繰り返します。
 さすがのボクも、異世界が出てきた時には「この話まとまるのか?」と心配になりましたが、
直後に「あ、この話、そもそもまとめる必要なんかないじゃん」と思い出して安心しました。
 そう、万事楽しければ全て良し。
 こいつらと一緒に、ありとあらゆるテイストとシチュエーションを味わいつくしてやろうじゃありませんか。

 公式ブログや、コイン99枚のおまけイベントを見るにつけ、作者さんがこのキャラ達に注ぎ込んだ愛情の深さに心打たれます。
 エンカウントするモブの警備員まで魅力的に描く、その点でアサルトスロットは大成功だったと思うのですよ。
 繰り返しエンカウントし、様々な選択肢を試すうちに、やりとり一つ一つに愛着が湧いてきますものね。
 それだけに終盤は勿体なかったです。せめて終盤は警備員の種類を増やしてほしかったなあ……
 評点です。

ハマリ度 : 7 / 10
 弱点は上に挙げたとおり、バグもまだ残っている様子。ファイルの単語解放とシナリオ進行が微妙にずれてるのもいかがなものか。
 人を選ぶタイプの作品ではあるが、ノリは一貫しているので、最初の潜入ミッションまでで面白いと思ったら、最後まで楽しめるだろう。
グラフィック : 10 / 10
 投稿レビュー時点では悩みの種だった演出の重さも、最新バージョンでは改善しており、もう文句なしの満点。
 やや機敏に動きすぎて目が追いつかないが、そこはトレードオフ、どうしようもないでしょうね。
サウンド : 9 / 10
 場面に合わせた幅広い選曲、遊び心も満載。
 音量の振れ幅が若干大きいこと、そしてサウンドモードがなく曲を探すのが非常に手間であることが難点。

 バグを指摘するとコンプデータがもらえるらしいのですが、それとは関係なしに指摘してあげてくださいね。
 自力でコンプしたボクとしては、自力でコンプする楽しみも味わって欲しいのですけどネ。

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