■ きみは空を渡り地に響く、おおきなものになりたかった。
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作者 [ 北街かな さま (syspom) ] ジャンル [ 育成シミュレーション ] 容量・圧縮形式 [ 94MB・ZIP ] 製作ツール [ WOLF RPGエディター ] 言語 [ 日本語 ] 配布元 ![]()
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レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 9 /10 8 /10 8 /10 131/150 ![]()
めめこ 10/10 8 /10 9 /10 me 10/10 9 /10 10/10 abc 9 /10 8 /10 9 /10 赤松弥太郎 8 /10 7 /10 9 /10
知恵が無ければ、転生チートはできない。
「空響」こと「きみは空を渡り地に響く、おおきなものになりたかった。」は、割と取っ付きの悪いゲームです。
悪い点から先に言及したことには理由があり、当然、この取っ付きの悪さを乗り越えれば、怒涛の「戦って死ぬライフ」を楽しむことができます。
取っ付きの悪さの原因は、ゲームシステムの説明の無さ。説明はほぼ全て会話としてのフレーバーテキストのみ。ゲーム画面の説明すらなく、画面の7割近くを占める数値ウィンドウがそれぞれどんな数値なのかもプレイ中の試行錯誤で理解しなくてはいけません。
何しろ、本作で最も重要であるGAME OVER条件からして、下手したら何故GAME OVERしたかすら分からない状況さえ出てきます。
- 画面右上の「年齢」が「寿命」に達する
- 画面右ステータスにある「魂」の最大値が0の状態で死亡する
特に、「魂の最大値が0となる」GAME OVER条件は、下手な所でセーブを掛けると詰みかねません。正直言って、私の初回の印象は「こんな厳しいGAME OVER条件で、どうやったらクリアできるんだ!」でした。
そこから、試行錯誤の繰り返し。とにかく第一目標であるゴブリンまでを目標に進めていきました。
- 序盤は下手に戦闘すると死ぬから、とにかく修行修行!
- 女神さまに挨拶するともらえるリンゴ、食べたら探索レベルってのが上がったんだけど!?
- 修行用アイテム、最下級でも経験値1.3倍か…購入するために金を稼がないと…修行中に取ったアイテム売れるかな?
- 「☆記憶帳」を見れば、転生条件が分かりやすい! でも、「必要ステータス」に「前世」…なんか条件がいっぱいある~!!
- やっとゴブリンになった! やっと人間が倒せるようになった!
- あれっ、この人間から落ちた心臓、これ喰うと魂が増えるぞ!!
魂最大値を増やすアイテム「光る人間の心臓」を手に入れれば、以降の転生ライフは順調に進みます。
それまでに上げた探索レベルで得た素材で、商人からより強力なアイテムと交換したり、場合によっては「使えば即座にステータスアップ」という強力な効果を持つアイテムさえ、そこらを探索すれば手に入れることができます。
しかし、ここからでも試行錯誤は続きます。…というか、より難しくなります。
転生条件は要求水準も上がるばかりか、「○○の記憶」…一度転生してから下級魔族にグレードダウンさせる必要がある条件だったり、ある程度魔物ランクが上がると「領主」となり、配下に収めた人口もまた転生条件に関わったりと、どんどん厳しくなっていきます。
しかし、試行錯誤を進める中で、より効率的な成長方針が見えるのが、本作の楽しさなのです。
- 人間を倒せば、「光る人間の心臓」の他、修行用アイテムもドロップしてくれる。
- 肉体が高くても魔力がからっきしの敵ならば、「格闘」で勝手に肉体を消費して自滅してくれる。こっちは「魔術」で肉体を節約すればよい。
- 話が進むとエンカウントする精霊は「格闘」がほとんど効果が無いため、「魔力破壊」で魔力を減らすこと。そうすれば魔力からっきしの人間同様自滅してくれる。
- 逆に肉体・魔力が強すぎて敵わないならば、精神を減らして逃がすか、こちらで精神を減らして逃げる手もある。
とにもかくにも、「全てを眺めて、細かい数値から必要条件を見つけ出す」ことが必要となるゲームです。
必要な知識を見つけ出すまでは、「何だこの訳の分からないゲームは!?」と思うかもしれません。しかし、少しずつ理解を深めていけば、下の新参加のレビュワーたちの通り、充分にハマれる作品となるはずです。
《 めめこ 》 ハマリ度:10 グラフィック:8 サウンド:9
ハマること請け合い
「育成」ゲームと言うより、「生まれ変わり」ゲームです。来世〇〇に生まれ変わる為に、どのように生き、そしてどのタイミングで死ぬべきかを考えてゲームを進行させて行きます。
生まれ変わる度、モンスター女神様という、進行役?のところに挨拶に行くと、お言葉が頂けます。
なんと言ってもこのゲームのコンセプトは「壮絶に闘って、そして死ね。」なので、寿命で死んでしまうとゲームオーバー。生まれ変わる事はできません。かといって、しっかりレベルを上げて死なないと、これまた来世はショボいものにしか生まれ変わる事ができません。
この辺の力加減が実にはまります。しかし、このゲームの感動はなんといってもラスト。これは魔王になる事が出来た人だけの秘密のお楽しみ。是非、ご自分の目で確かめて頂きたいと思います。
作者様曰く、まだ完成形ではないそうなので、完成するのが実に実に待ち遠しい作品だと思います。
《 me 》 ハマリ度:10 グラフィック:9 サウンド:10
一匹のか弱いスライムが、空を渡り地に響くおおきなものになるために、壮絶に闘って死に、別の種族に転生してまた闘うのを繰り返す育成シミュレーションゲームです。
育成システム、世界観、フレーバーテキスト、音楽の雰囲気、いずれも作品にぴったりマッチしており、好みに合う方は時間を忘れて没頭してしまうこと間違いなしの作品です。
操作自体はマウスひとつで遊べるシンプルなものですが、戦闘能力を上げる訓練一回ごとや、膨大な種類のアイテムそれぞれに専用のテキストが用意されているので、心ゆくまでゲームの世界を堪能できる仕組みになっています。
様々な種族に「転生」することができるので、人間ではない生き物の視点で世界を見られるのも醍醐味のひとつです。
ゲームの進行手順など詳細は省きましたが、興味を持たれた方は是非一度プレイして、独特の世界観を味わってみて下さい。特に文章表現が美しい作者様なので、語り口に引き込まれた方は他の作品との相性も良いと思います。作者様のサイトにて他作品も複数公開されていますので、お時間のある方は併せてどうぞ。
非常にふわっとしたレビューで申し訳ありませんが、お読み下さりありがとうございました。
転生を繰り返し、存在の格を上げる
このゲーム、とても面白いです!
スライムという最弱モンスターから始まるこのゲームは、壮絶な死と引き換えに転生を繰り返し、より強大な存在に至る事が目的です。
ただ死ぬだけでは転生する事は叶わず、転生するには戦いの果てに倒れなければなりません。
異なる種族の異なる生を幾度と繰り返し、少しずつ地力を高めていく楽しさがこのゲームの醍醐味と言えるでしょう!ハマリ度 : 9 / 10 訓練で能力を鍛えて、寿命が尽きそうになったら死んで転生…という繰り返しが基本なのですが、訓練の合間に差し込まれるひとり言が楽しくて飽きません。訓練中気を抜くと寿命に気付かず老衰でうっかり死んだりします。
装備を集めて強くなったり、新たな転生枠を埋めていくのも面白いです。種族ごとの専用装備やひとり言、訓練効率の違いなど、繰り返しをただの作業にさせない要素が盛り沢山です。グラフィック : 8 / 10 どの種族も雰囲気にピッタリ嵌まっていると思います。テーマ的にデフォルメ具合が心地いいです。 サウンド : 9 / 10 BGMはどれも世界の壮大さを感じさせてくれる気持ちのいい曲ばかりです。
種族によってBGMが変わったりするのも面白いです。個人的に一番落ち着くのは獣の大地のBGM、一番印象に残ったのはSSランクのBGMでした。このゲームでプレイヤーは様々な種族に転生することができるのですが、スライム程度の最下級種族ならともかく、上位の魔族などになると、様々な条件を満たさなければならない事があります。
特定の種族からしか転生できなかったり、一定以上のステータスが必要になる、等ありますが、もっとも大きなものは「魂」です。
「魂」とは一種のステータスで、最初は4しかないのですが、転生するにはこれを消費する必要が出てきます。0になるとゲームオーバーになるので、最低でも1は維持しておかなければいけません。ですが、この数値は訓練やレベルアップで成長することがなく、何らかのアイテムによって能動的に引き上げなければなりません。
魂の最大値を上げるアイテムは、基本的に「冒険者を襲う」から星が2つから3つほどの冒険者を倒したら手に入る「光る人間の心臓」か、訓練中偶発的に得られる「千年球」などがあります。前者は冒険者を倒せさえすればサクサク手に入りますが、後者は基本的に運です。
冒険者は、下級の種族だと苦戦することもありますが、BランクやAランクともなると凄まじい力で圧倒することも可能です。訓練をするよりもどんどん倒して心臓やアイテムを根こそぎ奪うことに集中したほうがお得でしょう。プレイも後半になり、レベルがすくすくと上がってAランクやSランクの種族に転生できるようになると、一つだけ困った事態に陥ることがあります。
それは、うっかり訓練でステータスを上げ過ぎて、戦闘で死にたくても死ねなくなるという、敵からすればふざけるなと言われそうな事案です。
このゲームでは基本的に寿命さえ注意していればいくらでも転生しては訓練で基礎能力を鍛えることができるため、鍛え過ぎたプレイヤーが上位種族に転生すると、自分が強すぎて冒険者たちとのステータス格差のせいか、倒す前に逃げられることが増えたり、死にたくてもダメージが全く入らない、なんていう事になってしまいます。
自分の能力値を引き上げるアイテムはあっても、その逆はないので鍛え過ぎには注意してください。広大な世界の中のちっぽけな存在である自分、その生を多様な姿で味わうことができるのが、きっと他のゲームにないこのゲームの素晴らしい長所だと思います。
果てしなく続く輪廻の中で、生き返るたびに様々な反応をしてくれるめがみ様の存在もとても素晴らしいです。新たな種族に転生したら、まずは何度かめがみ様を訪問することをお勧めします!
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:8 グラフィック:7 サウンド:9
現在を燃やせ 強く生きろ 今日という日を
吹けば飛ぶような軽い命として、あなたは生まれ出ました。
なぜあなたは、空を渡り地に響く、おおきなものになろうとしたのでしょうか。
その身に余る広大な野望を、数百年に及んで保ち続けたのはなぜでしょうか。
確かに生まれて間もない頃のあなたは、天寿を全うすることさえ叶わない、小さな小さな存在でした。
理不尽に無惨に殺されて、未練の中で「より強く、おおきくなりたい」と願ったのも、当然だったかもしれません。
しかし今、あなたは十分に強く、おおきくなったではありませんか。
今となっては敵らしい敵も無く、天寿を迎えることの方が簡単で、わざわざ殺されようとしないと転生できない有様。
それでもなお、あなたは歩みを止めません。あなたは敢えて戦い……ほとんど自殺のようにして死ぬのです。
何があなたにそこまでさせるのですか。
魂は転生する度、少しずつ摩耗していきます。
何もしなければ、やがて消え去ります。そうして消えた魂もたくさんあります。
しかしあなたは、その運命に抗ってしまいました。
初めて人間を殺し、その心臓を食らった時を、あなたは覚えているのですか?
それ以来あなたは、どれほどの魂を食らい、どれほどの殺しを重ねてきたのか、数えたことがあるのですか?
しかもあなたは、生きながらえるために必要な分を上回って、より強大になるためにカルマを積み重ねてしまいました。
もう後戻りはできないのでしょう。でもなぜ、そうなる前に立ち止まれなかったのですか。
あなたはその胸の内を、他の者と分かち合おうとしませんでした。
何百年と転生を繰り返したのに、誰とも積極的に交わらず、孤独に生きています。
たったひとりの例外を除いては。
なるほど、彼女はあなたの生みの親です。
あなたにとって特別な存在であることは理解できます。
でも、どのような生き物であっても、最後には親から離れ、自分の居場所を築くものです。
刷り込まれた親を追いつづける雛鳥も、いつかは成長して巣離れをするではありませんか。
それほど立派な姿となって、なのにあなたはまだ彼女の元を訪れるのです。
「新たな姿に転生できたなら、その姿を見せに来てもよい」という、そんな一言のためだけに。
彼女だけに心を許すあなたの態度は、「親に対する敬愛」という範疇を踏み越えています。
彼女、と呼んでいますが実際のところ、「モンスターめがみさま」を自称しているだけで、何者かまったくわからない存在ですよ。
なぜそんなものに思慕を寄せるのですか。
悠久の時の流れの中で、彼女だけは変わらずにそこにあるから、なのですか?
あなたは彼女に言われたはずです。「壮絶に戦って、そして死ね」と。
手抜きと八百長でわざと殺してもらっているあなたは、壮絶に戦ってなどいません。
百万回転生したある男が、一度出会った女のために転生を止めた童話は、懸命に生き抜き、成すべき事を成したからこそ美談なのです。
それに引き換え、成すべきことも何も無いくせに、ただ生みの親に焦がれて、そのために何百もの命を踏み潰す……
あなたの物語は、どう考えても美談にはなり得ないのですよ。
あなたも気付いているでしょう?
いつか、終わりは来るのです。
転生の限りを尽くし、なし得るすべての姿になってしまった時に。
常識の限界を超えてなお、おおきなものになろうとすれば、やがて「めがみ」をも越える存在となってしまうでしょう。
そうなれば彼女は、あなたとは対等の立場ではいられません。彼女の言葉さえ、あなたには届かないかもしれない。
いや、立場が対等になることなど、今までもこれからも、決してないのです。
彼女の孤独は彼女の孤独であり、あなたはあなたの孤独を抱えるしかないのですから。
それでもあなたは、袋小路に陥るまで、歩み続けるのですね。
その巨大な足の裏で、あまたの小さな命を踏みしだきながら。かつてあなたが、そうやられてきたように。
そういう生き方しかできないのでしょう。
ならばせめて……その行き着く先に安らぎを。
愛憎一如とは言うけれど、愛のために修羅となったなら、その行き着く先に少しでも報いがあってほしいと願うのです。
- ハマリ度 : 8 / 10
- 「遊びやすさ」が評価基準になっているウディコン出身にしては珍しく、不親切さを売りにしたゲーム。ランクCに転生するくらいまでプレイして、転生と魂の仕様を理解するまではチュートリアルと言える。人口の仕様もまるで説明が無く、終盤になって突如転生の条件に指定され、泡を食う人もいそう。理解する過程を楽しんでほしいという意図は伝わるが、敢えてふるい落とす必要があるのかという疑問もある。
一方で終盤、寿命が数十年を数え安定してくると、飽きも出てくる。最上級の装備を揃えてしまうと、ほとんど障害も刺激も無く、淡々と転生条件を満たしては死ぬ作業に落ち着いてしまう。
システムの品質も高いとは言いがたく、スクリプトエラーが発生することも度々。特に訓練グッズ回りで、戦闘が挟まると中断したりしなかったり、かと思えばグッズ無しの訓練で一気に2~3季節進んでしまったりと不安定な挙動を繰り返す。
それらの欠点を鑑みてもなお、本作のプレイ感は独特のものがあり、中毒性がある。テキストの大勝利である。- グラフィック : 7 / 10
- 書き下ろしの絵については線に勢いがあり素晴らしい。
一画面にすべてのステータスを表示するUIは情報が多すぎ、慣れないうちは特に目が迷う。上段で重要な情報は年齢と所持金、あと転生する時にカルマを見るくらいだが、他の情報に完全に埋もれてしまっている。
そのせいでテキスト領域が狭く、字が小さい上に、あっという間に流れてしまう。テキストログ表示はマウスホイールをクリックだが、一画面分しか保存されず、訓練グッズを使った場合は全然足りない。- サウンド : 9 / 10
- 姿ごとのテーマ曲は重要な牽引力。粒も揃っている。
だが、何よりタイトル曲の使い方が美しい。