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■ Deazon-本の中の牢獄-

Deazon-本の中の牢獄-
作者 [ Savedtekty さま ]
ジャンル [ オートバトルカスタマイズRPG+ノベル ]
容量・圧縮形式 [ 371MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールMZ ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ R-12指定(12歳未満禁止) ]
配布元 ダウンロード先

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レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 9 /10 9 /10 7 /10 48/60 B
赤松弥太郎 7 /10 8 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:7

「創作」に捕らわれた者たち。それは作品内だけでなく、この現代でも…。

本作「Deazon-本の中の牢獄-」は、戦闘中にプレイヤーの介入ができないRPGです。プレイヤーの介入要素は「育成」。レベル・装備・アクセサリ・スキル・職業・称号、そして「潜在能力」と、画面いっぱいを埋め尽くす育成要素が、本作の要となっています。
それに費やす育成ポイントは、進めれば進めるほどに青天井に上がっていきます。ストーリー後半…まだ「とりあえずの終点」が見える辺りでも、1レベル数百万ポイントを費やす「潜在能力」を覚えていないと立ち向かえない難易度になっています。
そのために必要なのが「エターナル」での放置。各ステージは、一度クリアすると(Sクリアでなくても)「エターナル」が解放され、全滅するまでオート戦闘を繰り返します。Alt+2キーで戦闘の倍速化もでき、より時間効率を上げた育成も可能です。
…と言うか、私が倍速化機能に気づいたのはこの原稿を書いている最中でした。それまで隙間時間を見つけて計24時間近くプレイ(ほぼ放置)していた私。そのプレイ時間をほぼ半減できるモードに気づいたのが、この原稿を書いている最中だったのです。
「倍速化は隠し要素」と勝手に思っていたのですが、普通にニューゲーム直後からできるオプションでした。

本作、育成要素が多いだけに情報量も多く、上記のような見逃しがちな重要ポイントまで存在します。
基本的な攻撃力・防御力・知力だけでなく「直撃力」「命中補正」「シールド」「CC(Critical Condition…戦闘不能時にHP1で持ちこたえる、いわゆる『根性』)」など本作独自のパラメータが多数存在します。
状態異常も数多く、お馴染み「毒」「睡眠」はもちろん、

…と、種類も危険度もよりどり見取り。敵の使ってくる状態異常…「呪い」を使う敵は特に…に合わせたアクセサリ変更が必要となります。
正直、頻繁な付け替えが必要な割には、アクセサリ変更のUIは褒められたものではありません。装備の変更には

  1. アクセサリは1人4個までしか装備できない(同じアクセサリを複数人が装備することは可)。そのため、付け替えるためにはまず「外す」操作が必要
  2. 外すアクセサリを左クリックで選択し、レベルアップ・レベルダウン・装備・外すの画面を表示する
  3. 「外す」をクリックして装備の空きを作る
  4. 右クリックでアクセサリ全体画面に戻る
  5. 付けるアクセサリを左クリックで選択
  6. 「装備」をクリックして、目的のアクセサリを装着
  7. 右クリック×2でメインメニューに戻り、忘れないようにセーブ

…と言う超絶長い手順が必要になります。
アクセサリの育成と装備が同じ画面に収まっているが故のこの煩雑な手順ですが、正直言って装備変更と装備育成は別画面が良かったです。
その対策のために取られたメインメニューの「プリセット」なのですが、こちらも利用には注意が必要です。
現在の装備・スキルのセットをプリセットに保存するボタンが「構成を保存」、プリセットを反映するボタンが「装備」ですが、問題はどちらも上書き確認なしで実行されてしまうことです。
そう、保存するつもりで初期設定の激ヨワ状態を適用する悲劇が発生しかねないのです。そうなったら、上記の面倒な装備手順をアクセサリ・スキルの2画面×3人分だけ再実行しなければなりません。

本作、上記のように痒い所どころか致命傷レベルの箇所にまで手が届かないほどUIが不便です。私がサウンドを7点まで下げた要因も、サウンドの設定変更をする「♪」ボタンがメインメニューにしか存在しない点が理由です。操作から放置に切り替える戦闘画面でサウンドの設定変更ができないのです。
そして、「オートセーブが無い」と言う更なる問題点。正直言って、私は赤松さんのレビューを見るまで、その問題点を自覚していませんでした。私は基本、就寝前にパソコンをOFFにしており、プレイ終了時には必ずセーブしていたため、「長時間の放置プレイごとゲームが落ちる」悲劇を経験していなかったのです。
流石に起動時間の大半は目を離している放置ゲーで、戦闘中のセーブどころか、メニュー移動時のオートセーブすらないのは「危険」と言わざるを得ません。

そういう「放置しきれない放置ゲーム」になっているのは、ツクールの仕様もあるかもしれません。
ツクールMV用のオートセーブプラグインの仕様ではイベント途中のセーブもできるようですが、本作のように「(自作戦闘であっても)戦闘イベントの途中から再生させる」のは難しいのでしょうか。
「メインメニューに戻ったらオートセーブ」はすぐに実装できるにしても、その仕様では赤松さんが体験した「戦闘イベント中にエラー落ちする」アクシデントには対策できません。

個人的にフォローするならば、本作、私は本当に楽しかったのですよ。「潜在能力」を初習得した瞬間、力及ばず負けまくった大ボスを数時間の放置育成でクリアできた瞬間、そういう「時間を費やすだけで成長を自覚できる」放置ゲーならではの楽しさはありました。
何より、それを支えるキャラクターたちが個性的で好ましい人々ばかり。彼らが受ける挫折や試練を、根性と友情で乗り越えていくストーリーが、本作の「耐えて育てる」内容とシンクロし、非常に楽しめました。
そして、もう一つのフォローとして、初作「Deazon」(これは放置要素の無いターン制RPGで、ストーリーの繋がりだけあります)、前作「Deazon Eternal Dungeon」と、確かな技術的進歩が見える点があります。
システム的には、本作「Deazon-本の中の牢獄-」は、前作「Deazon Eternal Dungeon」の正統進化となっています。2作を見比べれば、UIなどに名残があるのが分かるでしょう。
もっとも、「Deazon Eternal Dungeon」はRPGツクール2000製であるがゆえに、アクティブを外す=パソコンで他の作業をするとゲームが進みません。「Deazon-本の中の牢獄-」以上に放置に向かない放置ゲーとなっています。非アクティブでもイベントは進むRPGツクールMV, MZができたことで、やっと真似事でも放置ゲーができるようになったのですね。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:7 グラフィック:8 サウンド:8

未来のストーリー描け 聖なる剣 切り裂く軌道で綴れ

 放置要素を売りにしているにもかかわらず、オートセーブが無いのは欠陥と言い切ってよいと思います。
 ボクも放置ゲーを遊ぶことはありますが、オートセーブも、リアル時間によるボーナスも無いのは、本作が初めてです。

 結果、どうなったか。
 「就寝時に倍速エターナルで放置しよう!」というプレイガイドに従って放置したところ、メモリリークしたんですよツクールMZが。
 10時間以上の経験値が、他のブラウザまで巻き込んで消し飛びました。
 たまたまとか、おま環とか、そんなことはプレイヤーには関係ないんですよ。
 ゲームの安定性をどんなに向上させたところで、放置ゲーは不測の事態で強制終了するものという前提で設計してなきゃいかんのです。
 エターナルモードの、終了した時に一括で経験値計算するという仕様は、まったくそれに適合していません。

 放置はオマケ、抜け道という位置づけならまだ我慢できますが、おそらく本作はエターナルモードによる稼ぎ前提のバランス設計でして……。
 レベルダウンによる経験値還元を使って、ボスに合ったスキルや装備を再構築する、という遊び方が通用するのは序盤までです。
 中盤以降は面倒くさくてやってられません。
 プリセット機能で保存されるのは、職業やスキル、装備等の設定のみ。経験値分配はプリセットで切り替えできません。
 放置稼ぎできるようになると、面倒くささが勝って、結局経験値の量で殴るという作業に行き着いてしまいます。

 時間さえかければクリアできてしまう放置ゲーにおいて、ゲームをプレイする楽しみとは何か。
 色々と議論があるでしょうけどボクは、新しくできることが増えたり、新しい発見があったり、という新奇性だと思うんですよ。
 新しい風景が広がってるかもしれないと思うから、目標をどのように、できるだけ短い時間で達成するか、頭を使い工夫するわけです。
 そういった工夫の楽しみと、それによる達成感は、他のゲームと何ら変わりないと、ボクは思ってます。

 本作の場合、ストーリーがあるのは大変結構ですよ。
 スッキリとはしない終わり方だったりもするけど、一応は完結してます。前作とのつながりも、前作をプレイしなくても察せられるレベルだし。
 しかし、それ単体でプレイを続けられるほどの魅力があるか、と言うと……ボクにとっては微妙なところでした。
 物語とプレイヤーの経験が、あまりリンクしないのです。自分が関わっているという感覚が薄いんですよね。
 3人のプレイヤーキャラの使命は、本の世界に「落ちた」人を救うことだと言いますが、プレイヤーからすれば、敵を殴り倒しているだけにしか感じられません。
 本の中の3人のシーンも、ミハルたち現実世界のシーンも、プレイヤーとはほとんど関係無く勝手に進行していきます。他人事でしかありません。
 その上戦闘もオート、ステージクリア報酬が新ステージとストーリーの解放しか無いため、プレイヤー自身の主体性が実感できる場面は、非常に限定されます。

 経験値が増えれば転職できるようになり、新しいスキルが解放される……というロードマップも、悪くはないです。
 ガンガンインフレして、味方のダメージの桁が跳ね上がっていく様子は、見ているだけで楽しいものです。
 しかしつくづく、経験値還元と再構築が面倒という一点が、足を引っ張ります。
 何も考えないで、時間で殴って目標達成したところで、達成感がずっと薄まってしまうのは当然です。
 レベルキャップがあったり、経験値のインフレが激しすぎて超長時間の稼ぎが必要になる、ということも、特にありません。
 無傷でクリアできる場所を見つけたら、エターナルモードで放置……
 どれほど新スキルや新しいシナジーを見つけたところで、プレイ経験には変わり映えがしないのは、やはり問題に思います。

 これらの指摘は、オートセーブが無いこと以外は些細なことではあります。
 放置ゲーとしての体裁は整ってますし、極端に遊びにくいということではありません。オートセーブが無いことを除けば。
 実績を1つを残してすべて取得する程度まで、ボクもプレイしています。経験値で殴っただけなので、ヤリコミとは言いづらいですが。
 十数時間の稼ぎが吹き飛ぶ危険性があっても、それでもなおプレイをオススメできるようなプラスアルファの部分が薄い、という指摘でしかありません。
 オートセーブさえあれば、7点というハマリ度はつけなかっただろうと思います。その一点だけでも、ボクにとってはかなりオススメしづらい作品になってしまっています。

 放置ゲーに慣れてる人ほど罠にはまりやすいので、特に注意が必要です。
 こまめにセーブを取ろうという、ボクら世代にとっては言うまでもない注意も、それが当たり前では無くなっている今、改めて周知する必要があるでしょう。
 ……エターナルモード中は、そもそもセーブができないんですけどネ。

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