■ TOWER of HANOI
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作者 [ せがわ さま ] ジャンル [ キャラゲー寄り、戦闘多めのRPG ] 容量・圧縮形式 [ 334MB・ZIP ] 製作ツール [ RPGツクール2000 ] 言語 [ 日本語 ] 配布元 ![]()
- (補足)
- 2020.12.13:現在の最新バージョンは1.09です。
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レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 9 /10 9 /10 9 /10 54/60 ![]()
赤松弥太郎 8 /10 10/10 9 /10
USBメモリが見る電気羊の夢
「TOWER of HANOI」…本作をやればやるほど、そのろくでもなさが痛感されます。
人間関係での問題を抱えた「ヒト」に与えるものが、「ゲームキャラを叩きのめしてストレス解消」というソニックブラストマン並みの解決策。人類側がHANOIたちの問題を少しも真面目に考えていない点が、序盤の序盤から明白にされています。
少しでも真面目に考えているのならば、「『魔法少女』を夢見るキャメロンが髭面の偉丈夫の姿でTOWER内にいる」こと自体がありえません。彼女(!)の悩みに向き合うのならば、「せめてTOWER内では『魔法少女』の姿にする」ぐらいの心意気ぐらいは見せられるはずです。
それ以外にも、虐待を受けていたことが示唆されるメリーティカ、シンディ、クレヨン、犯罪に利用されたナナシ、社内政治に巻き込まれたジョルジュなど、HANOIたちが抱える悩みは千差万別。とても「ゲームキャラを叩きのめしてストレス解消」では解決できない問題ばかりです。
そこに襲い掛かる更なる災厄が、謎の少女・シューニャが広げたバグ。TOWER内のキャラを文字通りの「無」に返し、HANOIたち、果てには人間のコーラルですらその毒牙にかけようと暗躍を繰り広げます。
「END ROLL」などで見せた露悪的な作風が本作でも踏襲されています。むしろ、内面を描いたキャラが増えた分、露悪的な要素も着実に増えています。
そして、内面を描いたキャラが増えた分、ドラマも倍増しました。公称「全回収なら20時間はかかる」ほど、ストーリーの量・質ともに充実させた造りになっています。
戦闘勝利数を稼げば増えるキャラ単体の好感度、特定の組み合わせてパーティを作ると増えるHANOIどうしのイベント、踏破したダンジョンに応じて追加される娯楽施設の内容、掘れば掘るほどストーリーのテキスト量が、そして、キャラの「味わい」が増す仕掛けになっています。ただし、本作ではそのストーリーを味わうために、RPG的な経験値稼ぎを要するのです。ダンジョンの敵はザコもボスも非常に硬く、通常攻撃一辺倒では火力負けしますし、属性を考えずに攻撃スキルを使うと消耗が無駄にかさみます。
そのため、しっかりとしたレベル上げに加え、敵の老・若・男・女の属性に合わせた対策も必要になります。本作、通常攻撃によるダメージは低めですが、弱点属性のダメージ・クリティカル時のダメージ増強率がかなり大きめに設定されています。普段は10ダメージしか与えられない攻撃が、クリットすると70ダメージまで増える例さえ珍しくありません。
特に、ボス敵は弱点属性を上手く突かないと、かなり消耗戦を強いられるバランスです。最初の中ボス「とちゅう君」と対決する場合、低レベルで対男属性の攻撃スキルを覚えるナナシや、ヒーラー役を兼ねるシンディをパーティに入れておくのをお勧めします。
以降のボスと対峙する頃になれば、属性攻撃スキルを複数覚えるキャラも出てきます。特定のボスに勝てないと思ったら、そのボスの弱点を突けるキャラをパーティに入れるために出直すことをお勧めします。
「攻略に費やした日数はEND分岐などには関係しない」点は、ゲーム内にも同梱テキストにも明記されています。「これ以上は無理!」と思ったら、即撤退して立て直すことを、ゲーム内のバランス・ストーリーテキストなどあらゆる要素で保証しています。
また、消耗を抑えるためにかなり役に立つのが、ターン開始時に一定確率で発動するイベント。消耗なしに全体ダメージ・HP回復・MP回復が行える非常に役に立つイベントです。「ターン開始時のイベント」も考慮に入れてパーティ編成すると、道中がより楽になります。
また、好感度を上げるとイベントの効果も強力になります。そのためにも好感度上げはしっかりと行っていきましょう。一軍を集中して育てるか、全キャラをまんべんなく育てるか、どちらにも対応できる難易度になっています。本作、ストーリー面では「やり込みを求められるし、やり込みたくなる」要素が丁寧に揃えられています。ただし、ストーリーを展開するための戦闘もかなり長い時間を要するため、非常にプレイ時間の長い作品となっています。
丁度、現在は年末。本作をプレイして楽しくコロナ対策…と言うのも乙なものです。最も、本作も「END ROLL」「ミノニヨクシティ」「しらない星のあるきかた」と同様、かなり人を選ぶ表現が満載であるため、趣味に合わない方は別の作品をお勧めします。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:9
広大なアーカイヴアクセスして 検索したってI don't think it's right
狂人のたわ言がしばらく続くので、本作のレビューが読みたい人は飛ばした方がいいですよ。
「ブレーメンの音楽隊」。
ロバ、犬、猫、ニワトリの4匹の動物たちが、大都市ブレーメンを目指して旅するこの物語、みなさんもタイトルは聞いたことがあるでしょう。
では、その結末は憶えていますか?
そうです、4匹は結局ブレーメンには行きませんでした。古典的なタイトル詐欺です。
しかしそれでも、この話は文句のないハッピーエンドです。
舞台となっただろう15~17世紀のドイツは、現代と比べて恐ろしく治安が悪く、人里の外に出ればただちに強盗の危機に晒されました。都市間の旅行は、成人男性にとってさえ手に余す大冒険だったのです。
盗賊の財宝を奪い、家まで手に入れた4匹が、これ以上危険を冒す必要はどこにもありません。
こうして4匹は、いつまでも幸せに暮らしたのでした。
自分のバンドでメジャーデビューする、とか、漫画を描いて生計を立てる、とか、大作フリーゲームを完成させる、とか。
どうもボクの身の回りには、分不相応な願いに焦がれる人が多いような気がします。
ボクはそれを夢なんていうフワフワした言葉で表現しませんからね。野望と呼ぶべきです。
分不相応な野望を抱えたまま生きていくことは、とても不自然で、困難なことです。
夢では腹は膨れませんから、なんとかして糊口を凌ぐ必要があります。浮世の義理は増える一方で、どんどん雁字搦めになっていきます。
そしてある日、仕事で出世して、自分の時間が取れなくなる。ある日、異性関係で転んで、ひとりの人生ではなくなる。
これ以上危険を冒す必要が、どこにあるというのでしょう。
こうして彼ら彼女らは、いつまでも幸せに暮らすのでしょう。
分不相応な野望を成就するには、どうしたって、他の幸せを犠牲にするしかありません。
おそらく、一番犠牲になるのは対人関係でしょう。
立身出世を諦め、家庭生活を諦め、しかしその犠牲に見合ったものが手に入る保証はどこにもありません。
結果を他の人に認めてもらえるどころか、後ろ指を指される可能性だって十二分にある。他の人を幸せにできる、なんて言い切れるはずもありません。
「承認欲求」とか「奉仕精神」とか、人間にとって大切なものに背を向けて、野望に邁進し続けなければ、誘惑の手はあなたを社会に縛り付けようと迫ってきます。
周りの人たちは問うでしょう、「そんなことをする必要があるんですか?」と。
これはもう、正気の沙汰ではありません。正気の沙汰では成し遂げられないからこそ、分不相応な野望なのです。
こういったことをつらつらと考えていた、「ブレーメン」というRPGの構想が、たしかボクの黒歴史ノートの中に……あった、これです。
- 魔王によって平和に統治されている世界が舞台。主人公はその辺境の村の出身。
- 主人公が幼い頃、父親は「魔王を倒しに行く」と言って家を出ていき、帰ってこなかった。スタートはその10年後。
- 主人公は村の薬屋の跡取りで、幼なじみの女の子がいる。父の後を追うかはプレイヤー次第。
追わなければ幼なじみとハッピーエンド。- 後を追うのなら、まずは近くの町に出るための軍資金とレベルを稼ぐ。
頼りになるのは実家の手伝いだが、実家で稼げば稼ぐほど幼なじみとのイベントが進行し、進めすぎると幼なじみとハッピーエンド。- 近くの町に出て、魔王城を目指すなら、金を貯めて高額な長距離鉄道のチケットを購入するか、レベルを上げて荒野をさすらうかの二択。家賃も発生する。
- レベルを上げたり金を稼いだりするほど、バイト先や訓練場にいるヒロインたちとのイベントが進行する。
ある程度進行すると、ヒロインたちはとても見過ごせない状況に陥り、そのままヒロインたちとハッピーエンド。- 周回するとおまけ要素が埋まったり、他のヒロインの攻略がしやすくしたりして、コンプリート意欲を促進。
ヒロイン攻略が本作のテーマと錯覚させる。- どこへ行っても魔王は善政を敷いており、皆に慕われている。倒す必要性がどこにも見いだせない。
- 父親は、魔王城途上の町ですっかり落ちぶれ、女を作っている。父親を村に連れ帰るエンドもある。
魔王城へ進むには、父親とその女の家庭をぶち壊し、キーアイテムを手に入れる必要がある。- ついに隠しヒロインである魔王を攻略する。攻略が完了すれば感動のハッピーエンド。
- 魔王のイベントをある程度進めないと、殺すという選択ができない。
正面突破は無理ゲーで、褥を襲いでもしないと勝ち目がない。- 魔王を殺した主人公に、次々と刺客が襲いかかるので、これを撃破、殲滅。
- ヒロインたちが立ちはだかる。
イベントはある程度全員、満遍なく進めていないと魔王を倒せていないはず。つまり見過ごせない状況に陥ってしまった後、手遅れの状態である。
しかし、魔王を倒した主人公にとってはまったく敵では無く、軽々と殺してしまう。- そして辿り着いた故郷で、主人公は幼なじみと出会う。
魔王が殺され治安が悪くなり、故郷は焼け野原になっていた。母親も殺されている。
どこか人目に付かない場所で、2人で暮らそうと手を差し伸べる幼なじみ。
彼女の手を取るか、殺すか、それもプレイヤー次第。いや、これ、ムリ。
これを聞かせた友人が「お前の陰湿さが前面に出すぎ。心の闇が深すぎる」と評していましたが、まったくそのとおり。
誰しも心の中にぼくのかんがえた さいきょうのRPGは持っているでしょうが、それがコレというのは確実に病んでる。
まかり間違ってこんなものを開発しようとすれば、心が折れます。作者の。
大作になることは避けられないし、バランス調整もとても難しい。無理ゲーであっても、理不尽ではダメですし。
何よりヒロインが大変です。
ヒロインは所詮撒き餌です。本題ではありません。しかし撒き餌だからこそ、魅力的でないと意味が無いのです。
殺されるための存在とわかっていながら、どこまで心血を注げるか? プレイヤーに受け容れてもらえる、殺すことをためらってもらえる魅力を生み出せるのか?
そして、それほど魅力的なキャラを容赦なく殺すシナリオを維持できるのか?
プレイヤーには受け容れられづらいこんな代物に、そこまで苦労を重ねる何かを見いだせるのか? まあこれは、ゲーム制作全般に言えることではありますが。
あまりにも厳しいと言わざるを得ません。
以上、本作にはまったく関係の無い話はおしまい。やー思いのほか長かった。
閑話休題。
ここから先は、本作同梱の攻略テキストは一通り読んでいる体でお話しします。
書いてあるとおり、本作には、大まかに2つのルートがあります。
10人のHANOIたちとともに、TOWERを生き抜き、TOWERごと全てを無に帰そうとするシューニャを滅ぼす、HANOIルート。
HANOIたちを裏切り、シューニャの側につき、TOWERごとHANOIもシューニャも何もかも無に帰す、シューニャルート。
ぱっと見ただけでも、シューニャルートは、まったく不自然でしょ?
「条件が厳しいエンドなんだし、それだけ得るものがあるはず。本作の本題はこっちなんじゃないの?」という考え方は、実にゲーマーらしい。ボクも最初はそう思ってましたけど。
そんなことは無いんです。少なくとも、「シューニャルートが本作の一番言いたいこと」なんてことは無い。
シューニャルートは、存在することに意味があるルートです。
それを選ぶにしろ、選ばないにしろ、その選択肢が用意されていることに意味があるのです。
もう少しシューニャについてツッコんでみましょうか。
シューニャって、一言で言いますとテロリストでして。
確かにTOWERっていうのは、心あるAIを傷つけて遊ぶ、悪趣味なゲームに違いありませんよ。
その内部のデータから生まれたシューニャが、外部に対して起こせる行動なんて限られてる、その立場には同情を禁じ得ません。
しかしそのために採った手段は、つまるところ世界規模の無理心中でしょ?
1と0に戻れば苦痛も無くなる、などというインド宗教じみた論理武装は、どうでもよろしい。「死にたくない」という生存本能を否定してる時点で、個の尊厳の否定に他なりません。
結局TOWER開発者と、同じ穴の狢なんじゃありませんか?
で、ここからがシューニャの一番タチの悪いところ。
シューニャは、こういう批判は既に織り込み済み、自覚をもって悪を成している。だから止まりゃしません。
融解したデータたちの悲鳴に心を痛めつつ、しかしだからこそシーニャは止まらないのです。それが彼女の「夢」だから。
そのためにどれだけの犠牲が出ようと構わず、いや、構いはするし、自分も傷ついてるんだけれど、立ち止まらない。立ち止まれない。
みなさん、これがドMのサイコパスです。
こんなヤツには、何を言ってもご褒美でしかありません。実に虚しいことです。
「お前はただのシリアルキラーで世界の悪だから、とっとと死ぬか終身刑になるべし」と言えば、彼女はそれを全肯定しながら、最大限の抵抗をしてくるに違いありません。
こんなヤツに屈するわけにはいかんのです、守るべきHANOIたちのためにも。
HANOIたち、言い換えればヒロインたちをどれだけ魅力的に描けるかが、本作にとって最大の勝負所です。
本作のHANOIたちを撒き餌だなんて言ってませんよボクは! そこは誤解なきよう。
しかしHANOIたちに魅力が無いと、シューニャルートが成立しないというところは、変わりません。
本作がいかにたくさんのイベントを作り、分岐を作り、多面的に光を当てて掘り下げて、そして絵の力でもって、HANOIたちを魅力的に描いてきたか、解説してると夜が明けるのでばっさりカットしますよ。
あくまで全体的な話しかしませんが、俯瞰してキャラクターを見ると、どこかに一貫性が、あるような無いような。
最初期に設定された、メリーティカとナナシについては、ただひたすら辛い環境下で働き、帰ったところで夢も希望も無い、やれと言われたからTOWERをプレイする、という態度ですが。
でもそんな彼らも、他のHANOIたちが語る「夢」に共鳴して、少しずつ前向きに、自分の意見を言うようになるんですよ。
HANOIたちの職業も多種多様ですが、総じて職人的・芸術的な仕事の割合が、やや高めです。「言われたとおりのことをやるだけ」だったのは、実に初期2人組だけ。
だからこそ、実際には人間に従うばかり、という矛盾した境遇に不満を抱き、自分のやりたいこと、野望を固めていったのでしょう。
HANOIたちとシューニャ、野望と野望、想いと想いがぶつかり合う構図が、これで鮮明になります。
どのキャラクターも非常に魅力的で、絞り込むのはとても難しいのですが。
強いて、強いてですよ、1人だけ選んで語るとしたら。
ボクとしては、彼を選びますね。
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そりゃあ、ねえ。メガネだし。
というのは置いておいても、本作で一番謎、そして不思議なキャラクターと言えば、彼でしょう。
残念ながらボクは、せいぜい会話イベントを全踏破した程度で、まったくヤリコミが足りていません。特に情報が分散している彼の全貌を、まだ把握できていないことは予め言っておきます。
それにしても、彼のバックグラウンドが本当に見えてこないんですよ。
新人監察官なのに、普通の監察官の倍のHANOIを担当する期待の大型新人なんでしょう?
年齢だって結構いってるハズなんですよ。どう少なく見積もっても30歳前後、だったはず。
なのにいきなり、会社の中核プロジェクトに抜擢されるって、アナタいったい何をやらかしたんですか。
彼の過去の話は、幼少期とか、学生時代とかばっかりで、直近の話がありません。
考えられるのは、2つ。まったくやらかした自覚が無いか、よほど隠したいことがあるか、どちらかでしょうね。
HANOIに対等に接しようとしている人間、というだけで変人扱いされる彼ですが、そこは価値観の違いなので。
その分を差し引くと、ちょっと運動神経が鈍いぽっちゃりメガネだけが残ります。いや、それは冗談。
よく見ていると、色々有能ではあるんですよ。小器用になんでも作ったり、料理経験がほとんど無いのに、レシピを見ただけでわりと出来ちゃったり。立ち居振る舞いから育ちの良さも感じられます。
しかしそれ以上に、ちょっとした罠でも引っかかるそそっかしさ、腹芸のできない素直さ等々、人の良さが前面に出てしまって、有能さが目立たないんですよね。
「頼み事を断れなさそうな顔」と何度も言われてますが、まったくそのとおり。返す言葉は特にありません。
30前後にしてあどけなさの残る、母性本能をこれでもかとくすぐる彼ではありますが。
人間、30年くらい生きていれば、自ずとその方向性は定まってくるところがあります。
彼の場合、「善であろうとする意思」が、極めて強い。人並み外れていると言ってもいい。
人が困っているなら、助けるのが当然で、苦労なんかでは全くない、と言い切ってしまえるのが、彼の強さであり、脆さでもあります。
敵であるシューニャたちの仲睦まじさを微笑ましく思った、それだけで、HANOIたちへの申し訳なさからストレス値が上がるのは、あまりにも繊細すぎます。
その性格を、ナナシは当初、偽善者と見なしていました。
そういう見方をされたのも、一度や二度では無いのでしょう。もはやコーラルは、自分が善人なのか偽善者なのか、といった自問自答を既に乗り越えているように見えます。
偽善であろうと無かろうと、自分がやりたいことだからやる、という確固たる意思が、彼の激するごく希なシーンからは見えてくるんですよね。
シューニャたちから「覚悟が決まっていない」と言われる彼ですが、ボクは、ちょっと違うんじゃないかと。
覚悟は決まっちゃってるんです。方向性が打ち出せていないだけで。
こんな善良なコーラルに、史上最悪の悪魔「プレイヤー」が取り憑いてしまうんだから、悲劇ですね。
シューニャルートは、優柔不断な彼が一度方向性を決めてしまうとどんなことになるかを示す、恐ろしいシナリオでした。普段おとなしいヤツほどキレるとヤバい。
しかし、ボクにはわからないんですよね。コーラルがシューニャルートを選んだ、その動機が。
かつて心を通わせたHANOIたちの度重なる説得、それを辛そうに気遣うシューニャたちに対し、「これは決めたことだから、僕がやらなきゃいけないことだから」と冷徹に、HANOIたちを倒していくコーラルには、コレジャナイ感が満載です。
君、そんな子じゃなかったよね? 修羅道を嬉々として走るドMなんかじゃ、なかったはずだよね?
ストレスでおかしくなったと思われるのも、仕方ないよなあ。ボクだってそう思うもん。
HANOIたちもさりながら、何よりコーラルが痛ましいのがシューニャルートです。
まあ、ここまで言っておけば、読者の皆さんはシーニャルートを選んだりはしないでしょう。
お前らもそうなんだろう?
人から決められた役目にうんざりしていて、なのに自分では何もせず、ストレスばかり溜まる日々を、ゲームという安全圏で発散しようとしてるんだろう?
「気にくわない その世界を ぶっ壊す」なんて、現実じゃあ口にすることさえできない心の俳句を、ゲームで叩き込みたいんだろう?
だったらいいじゃないか。思う存分スッキリさせちまえよ。
何を迷うことがある。今は悪魔が微笑む時代なんだ!
ゲームについて言いたいことはまだまだありますが、シナリオについて言いたいことはだいたい言えたと思います。
足回りの弱さがなあ。指摘せざるを得ないんだよなあ。
- ハマリ度 : 8 / 10
- 本作の好感度は、戦闘回数によって決まる。ブーストアイテムもあるが、そもそも戦闘しないとブーストできない。
攻略には必須という性質上、目の付け所はとても良かったと思うが、戦闘回数を要求するため、プレイヤーが嬉々として戦闘をしたいと思える魅力がないと、効果が薄まるギミックだ。
しかしせがわさんの戦闘バランスは、ツクール2000デフォシステムなのでエンカウント率が体感高め、敵の防御が堅く時間が掛かりがち、という特徴があるため、あまりかみ合わせが良くない。最初のボス「とちゅう君」の堅さは初見泣かせ、まさに壁ボス。
スキルを使えばある程度時間短縮できるのだが、探索中はMP回復手段が乏しいため、消耗を避ける心理が働く。そんな中、サポートスキルのMP回復は希少性が高く、持っているHANOIとそれ以外には格差がある。本部でありったけのタブレットを買い込んで、物量戦に持ち込むのが正義だが、それに気づけるかどうか。
ボクは、戦闘は過程でしか無いと感じたし、正直煩わしかった。後味の悪さもかえって薄れてしまったように思う。
パーティ編成や武器合成等、自作画面は頑張っているが、技術的に追いついておらず、使いにくいとしか言えない。
特にパーティ編成画面はアクセス回数が多いのに、使い勝手は最低限でしかない。好感度調査も含めより有機的なUI設計を望みたい。
- グラフィック : 10 / 10
- 本当に文句のつけようが無い。安定感がある。戦闘中も、イベントも、欲しいと思ったタイミングできっちりアニメーションしてくれる。
- サウンド : 9 / 10
- 自作曲の割合は減ったとは言え、それでも十分すぎる曲数。統一感についても言う事は無し。
あとはサウンドモード実装を待つばかりである。キャラクターについては、本当に書いている時間が無いんですよ、残念ながら。
蛇足ながら言うと、ボクは2週目はキャメロンを選びましたが、エンディングはちょっと、ボクの望んでいた方向性とは違った、というか。ボクとしては、彼にもヒーローとして頑張ってほしかったんですが。
でもしょうがないか、キャシーだし。なかなか両雄並び立つという具合には、ならないものですネ。