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■ 片道夜行列車

片道夜行列車
作者 [ haco さま ]
ジャンル [ 短編RPG ]
容量・圧縮形式 [ 147MB・自己解凍EXE ]
製作ツール [ RPGツクールVX Ace ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ 現在の最新バージョンは、1.11 ]
配布元 ダウンロード先

片道夜行列車 片道夜行列車 片道夜行列車 片道夜行列車 片道夜行列車

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 9 /10 9 /10 100/120 B
シュン 7 /10 9 /10 8 /10
hoikoro 8 /10 9 /10 8 /10
赤松弥太郎 8 /10 8 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:9

月と兎と夜行列車

本作「片道夜行列車」は、展開だけを見ると、RPGというよりADVです。
登場人物は4名のみ。隠しキャラやモノローグだけの人物を含めても10名にもなりません。ストーリー自体も、隠し含めて1~2時間でコンプリートできる量になっています。
本作をRPGとしているのは、「戦闘」と「成長」がゲーム進行の主要を占めるためです。戦闘の難易度も、成長の取捨選択も、1~2時間のミニゲームとしては破格なほどの思考を使うゲームです。

肝心の戦闘システムは、他に類を見ない特殊なものになっています。HPが0になっても、戦闘画面左上にある時計…「猶予時間」を一定量消費しただけで即復活します。
ただし、ターン経過や戦闘不能で「猶予時間」が0になると、有無を言わさず敗北。最初から戦闘のやり直しとなります。
これだけ見ると「デスペナルティが小さくてプレイしやすいゲーム」と思われるかもしれませんが、問題は、このシステムでもギリギリのバランスであること。
序盤は、ステータスが低く、技もショボいため、面白いようにHPが減っていきます。逆に中盤~後半になると、バフなどの強力なスキルが揃い踏みになりますが、それらを使用するタイミングが何より重要になるバランスになっていきます。
特にバフ・デバフのタイミングは重要です。デバフはアイテムで治療できず、逆方向のバフで相殺するしかありません。しかも、あくまで「相殺」でしかないため、バフの効果を発揮するためには、デバフが切れるまで待つしかありません。場合によっては、「一旦死んでデバフ・バフ・状態異常を全消し」という戦法も選択に入れる必要があります。
後半に行くにつれ、バフや回復で重要になる「使い魔」ですが、「使い魔の行動はターン最後になる」という問題があります。特に「ルナのHPがピンチになった時に発動」というスキルを持つ使い魔は、使い道に注意が必要です。コマンド選択時にピンチになっていると、敵の攻撃が先に来て、戦闘不能→復活→使い魔の行動は通常時のモノと読み違えが発生してしまいます。

ピーキーな戦闘の支えとなる「成長」ですが、こちらも3癖ぐらいはある特殊な代物です。

弱いスフィアを後半まで持っていても足枷になるだけですので、切り捨てる選択が必要ですが、それ以外ではかなり自由度の高い成長が可能です。
私の最終スキル構成は、以下の画像の通り(ネタバレ隠しのためリンク表示)、スキル中心の構成にしました。
エーテル確保のため、チョコの消費が激しくなりますが、ミストバフでのスキル攻撃力アップと掛け合わせれば、ラスボスにも隠しボスにもかなりの有効打となります。

それでも、隠しボスとの対決は、猶予1での勝利。文字通りのギリギリとなりましたが。シロの純粋な攻撃力と、クロの状態異常のダブルパンチは流石にきつい。どう頑張ったってスフィアの耐性強化でどうにかなる量じゃないもの。

ストーリー自体は、数個の隠し要素と中盤でENDになる分岐がありますが、基本的には一本道です。戦闘バランスはシビアとはいえ、基本的に「強いスフィアを選択」という方式でいけばラスボスにも十分対抗できる強さになっています。
ストーリーも成長も、いろいろな道筋を試してみましょう。

 《 シュン 》  ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:8

終電の先の夜行列車乗った時から・・・。

 RPGというよりはRPG要素の入ったADVというイメージが強い作品です。
その理由は「銀河鉄道の夜」という文学を参考にしたと思われる、という点にあります。
自分は・・・その文学作品が一体どんな話なのかは正直分かりません。

 終電に向かう電車に一人座っているルナ。
しかし・・・電車はいつの間にか「終電の向こう側」の駅に向かっていました。
その後ルナは待ち構えている敵と戦うことになりました。そして徐々に失われていく自分についての記憶。
彼女に待っているのは後悔と自責が詰まった数々の出来事と思い出でした。

 この作品のRPG要素は普通のRPGと違う点が幾つかあるためまずはそちらの説明を。
経験値、お金の概念が無い代わりに、敵を倒すとスフィアという装備アイテムか消費アイテムかどちらかを入手できるようになっています。
スフィアをセットすると能力の上昇や新しいスキルの獲得、自動発動する能力を得ることが出来ます。
スフィアの装備数には限りがあり、枠がいっぱいの場合はどれかを上書きしなければなりません。
スフィアをストックすることは出来ないため注意しましょう。選んだスフィアにより様々なカスタマイズを行うことが出来ます。
ステータスはPhyとMen、それぞれ力と精神に対応するものは与えるダメージだけでなく受けるダメージにも影響が出ることに気をつけて下さい。
つまり、これらの能力を上げることは攻防一体ということになります。それは敵側も同じなのでそれも良く考えましょう。
マップは基本的に一本道で、雑魚敵はシンボルエンカウント。メニュー画面は椅子に座ることで開くことが出来ます。
あるアイテムをあるキャラに渡すことで過去のマップに戻ることが出来ますが、そこでは何か変化があるかも・・・?

 戦闘は主にエーテルというMPに相当するゲージを消費してスキルを繰り出すのが基本です。
このエーテルはターン開始時は0になっており、ターン経過などで上昇していきます。
左上には猶予時間を示す時計の針があり、ターン経過ごとに制限時間が1つ減ります。これが尽きる前に敵を倒さなければなりません。
LP(いわゆるHP)が尽きてもすぐ復活できる代わりにステートがリセットされ、この針の数値も減ってしまいます。
もし針が尽きて負けてしまってもゲームオーバーにはならず、すぐ再戦出来るのでその点は安心してください。
また、パターンに沿った行動を取って戦闘の補助を行う使い魔もいて、話を進めるにつれ使い魔の数も増えていきます。
移動中、又は戦闘中でコマンドをとる前に使い魔の変更を行うことが出来るのでいかに状況にあった使い魔を選ぶかが鍵になります。
戦闘難易度はかなり高め。雑魚敵の段階で敵は中々手強く、ボスも強敵が揃っています。
取り巻きを次々復活させてきたり、続々召喚してくる敵を倒さないと完全防御でダメージを与えられなかったりと一風変わったボスもいます。
いわゆる「隠しボス」もおり、倒さなくてもエンドに影響はありません。倒すと有力なアイテムが手に入りますので気が向いたら挑戦してみましょう。
最後にランク発表がありますが本筋には関係無いのでまずはクリアを目指してみましょう!

 さて、あらすじにて「後悔と自責」という言葉を出しましたが、これは言うまでも無く主人公のルナに関するものです。
度々出てくる大人たちのセリフからして「悪いのは周囲の大人だろう」と思われますが実はそうでもありません。
ルナが親友のメルを見捨てたような発言をしますが・・・その理由とは?それを知ったとき自分は・・・「怒り」の気持ちが強かったですね。
手を差し伸べられるのにそんな理由で見捨てるなんて許されないと思うのですよ・・・!後悔するくらいならまず行動を起こしなさい・・・!
何故親友を見捨てたのか、その理由を詳しく知りたかったですね・・・。全編クリアしても謎が多く残ってるような気がしました。
結末は大きく分けて2つ。1つはどちらかというとIFの結末と考えた方が良く、もう一方の結末は・・・(泣
いや・・・それって「現実から目を逸らした」ということになるのですよね・・・!?
元の作品通りの結末と考えても自分としては・・・。既に全てが終わったことであるというのが皮肉にも感じました。
最後に自分がラスボスを突破した時のステータスとセットしたエーテルの画像を貼り付けます。攻略の参考になれば・・・。

 《 hoikoro 》  ハマリ度:8 グラフィック:9 サウンド:8

片道夜行列車】というゲームをプレイいたしました。

RPGとしてのシステムがしっかりと付いておりながらも、アドベンチャーとしての作風が強く。
プレイ時間も短く纏まっている、サウンドノベルのような作品でした。

主人公は自殺してしまった親友に対して深い未練があり、そんな主人公を二匹のウサギが親友に会えるように案内する、という物語なのですが。
そのために主人公は自分の記憶と向き合い、失わなくてはならなくなります。
幾つもの苦難を乗り越えて進む主人公、ですがウサギたちが最初に言っていたようにこの物語の結末は消して手放しで喜べるような内容ではありませんでした。

また、ゲームとしての仕様に

という独特なものがあり、最初はやや難易度の高いきらいがあるものの、中盤に差し掛かる辺りでは適切なバランスと特徴的な戦闘システムが面白い仕様となっています。
敵の攻撃をその身に何度受けても諦めず食らいついていく主人公の姿が、親友のために頑張っている事を表現しているように思えて、良いなと思います。
やや惜しむらくはこのシステムは短編よりも長編作品に合うもので、ゲーム自体が短く終わるために装備の構成などは考える必要がなく終わってしまった(終わらせることができた)のがすこし残念かもしれません。
またアイテムの効果が低く、使う余地のあるアイテムが非常に少なかった為にアイテムを選ぶ必要性が終盤の一局面のみになってしまうのも、短編であるがゆえの弊害かな?と思いました。


・ハマリ度:8/10

短いながらもきっちりと手が込められた作品、二周目以降で登場人物の意味深な発言の意味が理解できるため二周目プレイ推奨。
戦闘のスピードがやや遅いことと通常攻撃がやたら強いことが多少気になったが、一つ一つのボス戦が使い魔システムを適切に活用することで楽に攻略できるようになっており、面白い。

・グラフィック:9/10

かわいい主要キャラクター達や戦闘時のわかりやすいUIなどが印象にのこる。
背景が戦闘中も動いていたりと、画面が完全な停止状態になることなく、どことなく流動している世界であるという感覚を感じさせる。
主人公と親友の二人の挿絵が見たかった所。

・サウンド:8/10

非常に綺麗で透き通り、かつ常にどこか物悲しさを感じさせるBGMが作風と合っている。さすがのもぜ園
戦闘時の時計などのSEも重厚なものや鋭利なものが少なく、世界観に適していると感じる。


物語の内容も入り組んではいるものの難解ではなく、忙しい中でストーリーを楽しむ作品として見てもちょうどよい長さとなっています。
隠しボス討伐することでEDに何か追加要素とか欲しかった…

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:9

風を切るナイフの月 冷ややかに光る夜を

 今回ボクはストーリーのことしか書きません。言いましたからね。
 名前は「片道」なのに帽子世界っぽい戦闘演出とか、月島さんのフラフープの謎!! とか、書きませんからね。
 みんな戦闘システムのことばっかり書いてる気がしますが、ボクとしては本作はあくまでストーリーメイン、戦闘はスパイスって考えてます。なかなか辛口だけど。勝ちたいなら、作者ブログにも攻略載ってますし、初期設定で難度下げればいけると思います。
 1週2時間くらいだから、ストーリーを語らずとりあえずプレイして!って書けば紹介文としては終わりですね。以上、紹介文おしまいっ。

 本作は、死を描く物語です。
 これ、異様なんですよね。
 死をメインモチーフとして扱ってる物語は、言っちゃあナンだがよくあるんです。でもそういう作品、最終的には生を描く物語になるんです、普通なら。
 ところが本作は死しか描かない。これがビックリするんですよ。

 ええ、選択肢はありますね。中盤で、黄泉返るか、そのまま死ぬかを選ぶ選択肢が。
 どちらの決断が正しいか、本作は答えを用意していません。別に死を賞揚しているわけではない。
 とは言ってもねえ。ここで生き返ると、このゲーム終わっちゃうんです。エンドロールが出て、そのままタイトル直行。後日譚も何も一切無し。
 ゲームを続けるためには、プレイヤー自身の手で死を選ぶしかない。
 わざわざプレイヤーに死を選ばせるこのゲーム、攻めてる。大したチャレンジですよきっと。
 過去に死を選ばないと始まらないゲームもありましたが、最終的に生きる選択肢を選ばせてますからねあの作品は。本作はそれとも一線を画します。

 創作は、生に希望を与えるものでなければならない。死を唆すものであってはならない。
 そう考えている人はどのくらいいるんでしょうね。少なくともボクはそうです。
 ギャグだとか、命が軽い理由も用意しないで、安易に死を扱ったり、ましてや生き返らせたりすることには反感を覚えざるを得ないです。
 ひどく近代的な考えだと思いますがね。死後の世界信仰が、よりよく生きるために必要という考え方もあるんですから。ただボクが、「よだかの星」とか大嫌いだってだけで。
 そんなボクなので、本作のメッセージには、100%の同意はできかねる部分があります。
 でも、ある種の禁じ手を使ってでも伝えたいメッセージがあったことは、ハッキリと伝わってきました。
 そのために、表現に熟慮を重ねた痕跡もまた、本作からは読み取れるのです。

 一つ言えることは、本作は唯一絶対の答えは用意していないということです。表面的なメッセージだけを追っていると読み違えます。
 シロとクロがルナに向かって言っている台詞も、イコール本作のメッセージなのかというと、多分違う。
 ぼかぁね、あいつらとんだ畜生だと思ってますよ。二匹ともね。

 ルナは親友、メルの自殺を止められなかったことで自分を責めています。
 それをシロは全否定してくる。しかも序盤で。ルナが責任を感じるのは傲慢だ、メルは自分の意志で死んだのだ、と。
 これねえ、自由意志は自分の命よりも重いのかって特大級の爆弾をぶつけてるわけですよ。それも遺された者に。
 自分の力で未来は変えられたかも、という可能性にすがって、なんとか友人の死を飲み込もうとしている人間に向かって、よく相手を知りもしないくせに、お前なんかが彼女を変えられたわけが無いんだよという現実を突きつける。ド畜生でしょうが。
 この時点でルナは、自分が死んだことを意識していたから飲み込めた、とも言えます。仮に正論だったとしても、生きている人間にはこんなこと言えないなあ、ボクは。
 結果として、自責の念から解放されたルナは、メルと出会うことができたわけです。それこそがシロの思惑。なかなか胸糞悪いお話じゃあありませんか。

 じゃあ、クロの方がマシかっていうと、そうでも無いですね。
 ルナが怖れていた、綺麗な思い出を捨てなければならない局面が、ついに終盤に訪れます。演出もがんがん盛り上げてくるし、プレイヤーとしてはクるシーンです。
 それを、なあにが「なかなかやるね」だこの畜生が。
 おマヌケキャラで油断させようが、ぽろぽろ秘密をしゃべろうが、畜生は畜生、死神は死神。人間とは立場が違う存在なんですよ。

 だってね。
 あいつら、人には生への執着を捨てろとか言ってくるくせにね。
 自分らはめっちゃ生に執着してますからね!
 そう、この物語、隠しボスを倒してこの二匹に注目する時だけ、とたんに生の物語に変わるんですよ。死神のくせに! 死神のくせにさ!
 あの二匹が背負っているものとか、ルナたちに寄せた思いとかが見えてくると、あいつらの業の深さがどんどん浮き彫りになってくるんで……。
 もう、ただれた友情育みやがって! 段ボール箱の中にぶち込むぞ三月ウサギどもめ!

 この物語が死ばかりを扱っていたところで、ボクら生者へのメッセージは、いかに生きるかに他なりません。
 なにもかも捨てて、己の意志のままに突き進もうとするルナの「死に方」も。
 二匹で過ごす時間のために、ためらいながらも死神を務めるシロとクロの「食いつなぎ方」も。
 すべての来世物語がそうであったように、ボクたちがどうやって生きていくべきか、作者の思いを形にしているのです。
 プレイ時間は短いけれど、実に濃密。
 噛みしめるように味わってほしい、そんな作品です。

ハマリ度 : 8 / 10
 システムがやや説明不足。大まかなことは流れの中で説明されるが、各ステータスの意味や戦闘不能時のペナルティ等、かゆいところに手が届かない。ステータスについては作者サイトにすら書いてない……。初見プレイヤーの目で考えてほしかったところ。ロードの初期カーソルが最新データになっていないのも地味に不便。
 一方でストーリーは説明するものではなく、描写するもの。ゲームとしてすべき最小限の説明に抑えた、適切なさじ加減だった。惜しいのがクリア後のおまけ、今の程度の内容では蛇足。無くして余韻を味わってもらうか、徹底的にぶっ壊すか、どちらか。
グラフィック : 8 / 10
 背景絵、立ち絵等のイラストは実に見事。第六車両の疾走感が素晴らしい。
 イラストの人体には大きな違和感が無いのに、なぜドット絵だと反り気味になるのだろう。クロに同じ問題がないあたり、胸部と腕を斜め前から描くのが苦手と見た。
 吹き出しにも気を配っているのは伝わるが、違和感を感じる吹き出しもいくつかある。戦闘不能時の「まだよ! まだ終われない」も、吹き出しの位置がスタンドの右肩側だったらわかりやすかった。
サウンド : 9 / 10
 相変わらずのmozellマジック炸裂。列車をモチーフにした裏ボスのために書いた曲を通常ボス戦に据えたら、そりゃ盛り上がるに決まっている。
 だが、ただ安直にmozell曲を並べたという印象はない。「小瓶の中の生命」を敢えて使わなかった点、センスの良さを感じる。Ramineさんのピアノ曲も要所要所を締めており、SEのセレクトにもこだわりが感じられる。

 で、終わった話を蒸し返すようで悪いんですが、あのフラフープ(仮)、一体なんなんですかね?
 伝え聞いた話によると、作者さんは特に決めてないらしいけど、それってプレイヤーが勝手に考えていいってことかな? かな?

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