■ HASANDE PON! -はさんでポン!-
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作者 [ mdk さま ] ジャンル [ アクションパズル ] 容量・圧縮形式 [ 30MB・ZIP ] 言語 [ 日本語 ] 配布元 ![]()
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レビュワー ハマリ度 グラフィック サウンド 合計 総合判定 ES 8 /10 9 /10 8 /10 48/60 ![]()
赤松弥太郎 7 /10 9 /10 7 /10
勝利のタイミングを測れ!
皆様はTAS (Tool-Assisted Speedrun)やRTA (Real Time Attack)という言葉は聞き覚えがありますか? ステージパターンを見切り、最速最適解を探り出す「魅せるプレイ」の一種です。
TASの場合はTool-Assistedの部分がチートだと思われがちですが、実際にTool-Assistedとなる部分は「ゲームスピードの低下」「クイックセーブ&ロード」「乱数調整」ぐらいです。実際にクリアしてゲーム仕様を隅から隅まで知っていないと実現できないスーパープレイなのです。本作「はさんでポン!」は、そんな「理論上の最速最適解」を追い求めるゲームです。
敵の行動パターンは一定、「リバーシの理論でひっくり返る床を敵に当てる」攻撃、ゲーム展開に乱数や運が混じる隙はありません。
その分、敵の行動パターンを探るまでは屍を積みます。プレイヤーと敵の移動速度はほぼ同じ。床染めに集中していると、うっかり敵の通り道とかち合ってしまってミスとなる状況が頻発します。
それでも、本作の難易度は低めです。ミス時にはミスしたステージの開始時からやり直せる仕様になっています。「敵キャラの行動パターンを探る」プレイに最適な仕様です。30分もかければ、全10ステージのクリアはさほど難しくないでしょう。
むしろ、ラストステージは以前の9ステージよりも簡単まであります。敵キャラは大型の1体のみ。今までのステージで苦しんできた「挟み撃ち」が発生しない上、行動パターンも見切りやすくなっています。今までの知識と経験を生かして、存分に稼ぎましょう。そして、本作の本番は全ステージクリアしてから始まります。タイムアタックとスコアアタックです。より多くの敵キャラを巻き込めるパターン、より早くその状況に持っていけるパターン、それを見つけ出すのが本作の醍醐味です。
寄ってくる敵キャラをどこで回避するか、敵キャラが自身に近寄るまでどれだけ事前準備(残り一発で狙い目の床を一度に裏返せる状況)を整えられるか、プレイの中で見つけ出していくのです。
ただし、それを探るためのオマケ要素が本作には不足しています。本作は一度クリアしてもスコアやタイムは保存されません。クリア時にTwitterで呟ける機能が入っているのみです。
ステージセレクトもなく、常にステージ1からの通しプレイを求められます。
クリア状況や攻略パターンを探るためには、独自に録画ツールなどを見繕っておく必要があります。
先述の通り、本作はRTAに向いたゲームです。YouTubeなどを見ても、まだまだ本作の攻略動画はそれほど見られません。ぜひ、新しい地平を開拓してください。床めくり的な意味で。
《 赤松弥太郎 》 ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:7
張り詰めた時間のなか 一瞬のチャンス 男は狙う
リバーシをしながら、ひっくり返したパネルで乗っている敵を攻撃する。これが本作のルールです。
そのためにはまず、敵の足下にパネルを置く必要があります。
しかし本作の自機は遅い。最初のうちは見事に跳ね飛ばされることでしょう。
とっさの行動が取れないため、「敵の進路に立ち入る→パネルを置く→安全地帯へ逃げる」という一連の行動にかかる時間を読んで、行動しなければなりません。
しかし後半になると、敵の種類も数も増え、だんだんと手一杯になっていくのです……。
ゲームスピードは比較的ゆっくりしてますし、デザインも可愛らしいのですが、考えることはたっぷりあります。
- 敵を倒すためのパネル設置場所
- そのパネルを設置するための、2~3手先を読んだパネル設置
- そのパネルをひっくり返すまでの手筋
- そして、その間の安全確保とパネル設置タイミングの読み
……しかし、敵は待っていてくれません。
ジグザグ移動する敵が出てくるあたりから、考えるために立ち止まることも難しくなります。
走りながら考えるしかないんですね、これが。
盤の全体を見ながら、自機の安全も確保する視野が鍛えられます。
全10ステージ、初見の全クリアでも数十分ほどです。
しかし、ボクは本作にふさわしいボリュームだったと思います。
これ以上敵の種類や数を増やしても、複雑になりすぎるだけでしょうから。
むしろ、クリアした後のスコアアタックこそ、ボクは本命だと思うのです。
スコアアタックを目指すと、最初の不満点である自機の遅さにも、別の意味が見えてきます。
- 自機が遅いので、操作の再現性が高い。
- スコア稼ぎのために多くの敵を巻き込むには、よりリスクの高い地点に侵入し、パネルを設置しなければならない。リスクとリターンの駆け引きが成立する。
- ミスによる減点は一切無い(回数は記録されるが)ので、捨てゲーが容易。
これらの仕様によって、ストイックに最適解を探すゲームへと変貌するのです。
……ただ、肝心のスコアまわりのシステムが、正直あまり作り込まれてないんだよなあ。
評点に入ります。
- ハマリ度 : 7 / 10
- スコアアタックしかヤリコミ要素のない作品で、スコアが保存できないのは致命的。ネットランキングが無理でも、ローカルランキングくらいは実装できたのではないか。
そのスコアシステムについても、どうやらクリアタイムボーナスが存在しておらず、長々とひっくり返し続けた方がスコアが稼げるという問題がある。
スコアシステムをもっと洗練すれば、上述の通り、クリアした先も楽しめる作品になるはず。- グラフィック : 9 / 10
- わかりやすい、そしてかわいい。
チュートリアルでフォントが読みにくいのは問題点だが、絵だけで十分わかる。- サウンド : 7 / 10
- メインBGM1曲だけ、というのは小品にしてもさすがに寂しい。
曲調に華がないものの、落ち着いて考えられる点、SE含め、デザインコンセプトがしっかりしている点は評価。リバーシという変化球ではありますが、「攻めるためにリスクを負うか、リスクから逃げて守るか」という古典的命題をしっかり扱った作品です。
小品ではありますし、大作にはなり得ないアイディアかも知れませんが、十分に完成されています。
だから、一回だけクリアしておしまい、という作品にしてしまうのは、もったいないのです。
どうかもっと自信を持って、この枠内での完成度を高めて欲しいと願っています。