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■ ヴァイロンの塔

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作者 [ ふぇ さま ]
ジャンル [ カードゲーム型ダンジョンRPG ]
容量・圧縮形式 [ 40MB・ZIP ]
製作ツール [ WOLF RPGエディター ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

オープニング デッキ編成 会話シーン バトルシーン

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 8 /10 8 /10 71/90 B
牛人 8 /10 8 /10 7 /10
赤松弥太郎 7 /10 9 /10 8 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:8

運も実力。運を引き寄せることが実力。

正直言って、今回のイチオシ「ヴァイロンの塔」は、あまり取っ付きの良い作品とは言えません。むしろ、前半ステージでなかなか勝てないことであきらめてしまう人が多く出てしまうと感じています。
もともとネット対戦に重きを置いたルールのため、プレイヤー同士の立ち位置は常にイーブンとなります。…すなわち、ルールに慣れていない序盤であっても、対峙するCPUは手加減しません…というより、できないのです。

本作「ヴァイロンの塔」の大前提として、「アタック>クラッシュ>ガード」の3すくみがあります。
いくら威力が高くても、「アタック」ならば相手が「ガード」を出すと無効になってしまいます。
ただし、「ガード」は「クラッシュ」には負けます。また、何の攻撃もしない「フォース」を出した場合やECが不足して「アタック」が発動しない場合では空ぶってしまい、恩恵効果を得られません。
対峙するCPUは、もちろんこの3すくみを理解してカードを出してきます。手札として持っている3枚のカードは、互いにアタック(剣)・クラッシュ(大剣)・ガード(盾)・フォース(何も描いてない)が何枚あるか分かるようになっています。
同種3枚だったら対策も組みやすい(しかし、こっちの手札で対処できなければダメージ必至)のですが、問題は種類がバラけていた場合。相手がどれを出してくるかは勘に頼るしかありません。
ただ、CPUには好みのカードがあるようです(たいてい対戦開始時のタイトルに書いてある)。数戦も繰り返していれば相手のデッキは大体予想がつくため、カードの模様と属性(カードの色)で「あっ、勝負どころのカードが来たな。」というのを判断して、止められるような手を考えましょう。

右も左もわからない初心者への配慮として、強力なアタックカード「プチメテオ」と「エレメンタルシュート」があります。しかし、これもスキルが少しでも充実してくる頃合いになると却って重荷になります。
「プチメテオ」は最大10ダメージという威力の高さがありますが、ECを限界まで溜めないとその威力は発揮できません。「エレメンタルシュート」はEC消費三つで7ダメージという破格ぶりですが、使用するECが赤青黄とバラバラなので、3属性のアタック・フォースを組み込まないと発動できません。
加えて、どちらもアタックカードなので、ガードで固めたデッキにはなかなか取り出しづらいものです。

正直言って、開始直後のデッキはクラッシュカードに難があり、相手のガードはフォースで空ぶらせる他ありません。アタックだけではどうしても力負けします。なかなか勝てないで悔しい思い…「クソつまんねぇ」という思いを抱かれる方もいるかと思います。
誤解していただきたくないのは、「ヴァイロンの塔」は「敗北を繰り返してプレイヤー・主人公ともに成長していく」バランスになっている点です。
戦闘報酬として、戦闘終了時に残ったECを成長・スキル購入用貨幣として獲得できます。敗北しても、自分の持っていたECは獲得できます。
どうしても勝てないと思ったら、デッキをスキルが成長できるようなECを取れるように編成し、敗北報酬でHPアップやスキル購入を狙うのも作戦の一つです。
もちろん、勝利すれば相手の持っていたEC、そして運が良ければ相手のデッキにあるカードを購入できる権利が手に入ります。カードの購入に使うECは、大体カードの属性=持っていた敵の属性に合わせているため、勝利後の購入は結構楽です。足りなければ同じ対策で再戦すればいいですし。

さて、そのように戦闘報酬を稼げるようなデッキを目指すとなると、ECが空になる「プチメテオ」は益々組み込みづらくなります。
そのころになると、「EC1消費でそこそこのダメージ」のアタックや、初期装備よりは遥かに強力なガード・クラッシュスキルが揃ってきます。
「ヴァイロンの塔」には属性によるダメージ補正はありません。カードが充実してくるころには、属性を絞った方が有利になります。
そのころには「敵や主力カードに合わせて、一番実力が発揮できるデッキは何か」を考える、カードゲームらしい面白さが待っています。

ルールに限らず、作者お手製の人物画もクセが強く、「万人に薦められる」とは言いにくいゲームです。
しかし、「ヴァイロンの塔」は「ルールがわかるほど、カードを集めるほど楽しくなる」まさに正しい意味でのカードバトルです。
とりあえずは☆2のキャラまでは進めてみましょう。そのころになるとクラッシュカード・ガードカードも充実してくるため、様々な戦法が組めるようになります。

 《 牛人 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:7

ルールを理解し、塔の謎に挑め

 初投稿です。よろしくお願いします。

 ハマれます。特にカード収集は夢中になりました。キャラクターの掛け合いも良くゲームの世界にのめりこみました。キャラクターの背景も断片的に明かされるので、想像力を刺激させられます。

 グラフィックはキャラ絵(自作)とカードが雰囲気が出ていて良いです。サウンドはよく憶えていません。

 カードを収集する楽しみ、相手に最適なデッキを組む楽しみ、主人公のステータスを強くする楽しみ、そして、相手のカードを読みながらカードを切るバトルの楽しみ、が本作にはあります。

 この中でこのゲームの肝になるのはバトルの部分になると思います。システムが少し複雑で、最初はやたらに敗戦を重ねることになりました。しかし、コツをつかめば、カードの三すくみや、カードを切ることで得られるECの意味、切り札カードへのつなぎ方などが分かり、一気に面白味が増しました。

 カードの収集については、カードは特定の条件がそろわないと入手可能な状態にならないので、夢中になりました。ただ、カードの入手条件が明かされず、入手できないカードがあるとそこでゲームがストップしてしまったので、ほどほどに。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:7 グラフィック:9 サウンド:8

昨日 今日 明日 未来 すべての涙を 宝石に変えてやる

 今回のイチオシは、TCGのRPG割りとでも呼ぶべき意欲作です。硬派なTCGファンから見ると異色作、でしょう。
 まあ、コンピュータTCGのシングルプレイは、大抵RPG要素を含んでいるんですがね。ランダムエンカウントでカードを入手するとか。
 しかし本作のように、システムがTCGの定石を逸脱して、RPG寄りに改変されてるゲームはそう無いんじゃないですかね?

 という本作の仕様は、おそらくTCGファンは面食らうでしょうなあ。
 逆にRPGしかプレイしてない人にとっては、「え? 何がいけないの?」ってなもんでしょう。RPGでは上位の装備によって下位の装備の意味がなくなる、なんて常識ですから。
 竹竿が鋼の剣になり、ロトの剣になる、というインフレの爽快感こそ、RPGの楽しみの本質です。
 一方TCGはそうはいかない。どんなに弱いカードでも、プレイヤーが自腹を切って購入していることに変わりはないからです。だから強力なカードには重いペナルティを課し、弱いカードでも使い道が出るようバランス調整を重ねます。それでも飛び抜けてしまったカードは使用禁止にする、なんて強硬措置もとられます。
 決められたルール、限られた自由度の中で、緻密な計算を重ねて最強のデッキを作り出す……その点でTCGの楽しみは、RPGとは逆方向という部分があったわけです。

 ……お気づきでしょう。
 ここまでの話は、カードをリアルマネーを投じて手に入れる、という前提があっての話であって。
 カード入手に一切金がかからないフリーゲームでは、一切無視できるんですよ。
 最終的に本作は、「10ターン目以降に出し、防御されなかった場合勝利が確定する」なんてトンデモカードが登場するところまでインフレします。10ターン突破なんて本作では普通によく起こることですから、たまったものではありません。言っておきますがこのカード、敵専用じゃないですからね。
 並のTCGでこんなカードが登場したら、間違いなくクソゲー呼ばわりでしょう。ただし、ラスボス戦で、相手がこのカードを使用した際に防御し、そのまま試合に勝った場合に限って低確率で手に入る、というクリア後のおまけ要素ならば、RPGとしては許容範囲なんですよね。
 豊富かつ複雑な状態異常判定も、コンピュータプレイ前提だからこそトラブル無く遊べる部分がありますし、「フリーゲームだから」という割り切りが本作独特の爽快感を産みだしたように思われます。

 TCGとしては異色の、本作のRPGらしい要素がもう1つ。
 そう、対戦相手キャラの掘り下げです。

 バトルとデッキ作りに集中するTCGでは、ストーリー性はないがしろにされるのが常でした。邪魔なものと考えられている節さえあります。
 塔の謎、ヴァイロンの謎、そして主人公の正体の謎を軸に展開する本作のストーリーは、そうしたTCGの平均から見るとずいぶんと骨太です。普段TCGを遊ばない層にもプレイしてもらいたい、という意欲はこうした部分からも感じられます。
 ただし、本作もあくまで主軸はバトルにあり、ストーリーは壮大な物語を断片的に語るような語り口ですので、メインイベントだけでは説明不足、消化不良の感も残るはずです。

 そこでヤリコミ要素ですよ。
 本作にはキャラ毎に、ある隠された縛り条件で勝つと経験値が2倍になる、シークレットミッションというヤリコミ要素があります。
 しかも経験値2倍だけではなく、戦闘終了後イベントが発生、それぞれのキャラの背景を掘り下げてくれる、というおまけも付いてくるのです。
 キャラの背景を理解すれば、因縁のある魔法で見せる様々な反応もきっと納得がいくでしょう。

ジュディ  まあ本作のストーリー、ちょっと暗い印象を受けるかもですね。
 開幕早々土ワイ並の早さで人が死んだり、最初に戦う2人とも幽霊だったりしたので、ボクも「ああ、あと28人成仏させなきゃいけないのか」と身構えてたんですが、そうでもありませんでした。
 30階建ての塔の門番は計17人。つまり13階分の門番は再登場、おなじみの顔です。
 それに、記憶の石は死者でも正確に再現しますが、再現された人間が死人とは限らないわけで。
 そして、この塔で負けても死ぬとは限らないです。シャドウのサポートを受けてる主人公はまだしも、サポートも受けてないのに何回もぶっ飛ばされて、何回も再挑戦してる人もいますからねえ。

 番人、かつてこの塔に挑んだ挑戦者達はみな、この塔に浅からぬ因縁を持っていました。
 したがって本作の登場人物は、時間軸を飛び越えて、塔を中心に結びつきがあると言えましょう。
 最初の2人、ポンシュとジュディを除けば、どこかで他のキャラと結びつきがある人ばかりですので、隠された人物相関図を埋めていく楽しみが味わえます。
 ……ある番人に言わせれば、「この塔に来る奴にまともな奴がいた試しはない」らしいんですけど。

ビビ  一番最初に出会う挑戦者、ビビからしてかなりキワモノですからねえ。
 初対面でいきなりぶつかる、なんてギャルゲ的出会い方をするところまでは良かった。そこまでは良かった。
 しかし一人称が「おいら」です。その一人称を選択するとは、ボク的にはかなりポイントが高いですが、一般ウケを狙うにはちょいとキビしいところがあります。オイラ系女子。
 ストーリーの立ち位置としてもかなり不憫、ぶっちゃけライバル(笑)なところが涙を誘います。終盤にかけてだんだんフェードアウトしていって、結局肝心なところでは蚊帳の外、という。
 設定的には大層な魔法使いなんですが、扱いが完全に設定負けしてます。今回は相手が悪かったと言わざるをえません。

 彼女に限らず、本作はどこか女子の扱いが不憫なんですよ。
 ココロが巷では人気ありそうなんですが、押しは弱いです。ファルマなんてぶっちぎりの人気最下位じゃないでしょうか。おいしいポジションですよね。
 総じて男性キャラの方が濃ゆくて素敵なので、どうかそちらに目を向けてほしいですね。

ハッシュ  まずは当たり障りのないところから。本作の萌えキャラ代表ハッシュきゅんです。
 見ての通りショタでございます。一応ポンシュもショタ属性ではありますが、人気はハッシュの圧倒的勝利なのは説明不要でしょう。

 なんか羽とか生えてますが、この子、人間ではなく精霊です。
 精霊というのは、術者の愛の力によって生み出される、魔法使いの半身のような存在です。他の魔法とはまったく違う体系の術なんですって。
 しかし相当な使い手揃いの門番たちでも、精霊の大きさはせいぜい肩に乗る程度。人間の子ども大のハッシュはつまり、とんでもなく大きな愛の力で生み出された、ということになります。
 だというのに、彼はご主人様とはぐれてしまって、すっかり泣きべそをかいています。「俺は捨てられちゃったの? いらない子なの? 」と泣きすがる姿にキュンと来るわけですなあ!
 こんなかわいい子を置き去りにする、なんてヒドいことをする、超強力な魔法使い……心当たりはありませんか?

 この子も一人称が「俺」というところがポイントになるキャラです。
 作者さんはホント、一人称の大切さがわかってると思いますね。

ハイド  続いてはサブキャラから、ハイドのおっさん。
 いい顔してるでしょ? おっさん勢は大歓喜ですよ。
 他のキャラはナヨナヨしてたり若造だったりで、こういう渋みのあるキャラはなかなかいませんからねえ。

 まあ、若造だらけなのは仕方のないことなんですがね。
 魔法使いにも「盛り」がありまして、それがおおよそ二十代前半。そこから先は体力も、精神力も、想像力もどんどん落ちていってしまいます。
 ヴァイロンの塔に挑む、なんて冒険は、だいたいその年代までに済ませておくことなので、記憶の石の幻もほとんどその年頃になるわけです。
 そしてごくごく一握り、二十代前半までに不老不死の奥義に辿り着く連中がいます。そうなるともう、見かけ上歳は取りません。シャドウもその一人です。
 ヤツらから見れば、不老不死は魔法研究の登竜門だと、100年程度で極められる世界ではないから、という理屈になるのですが、冗談じゃない、不老不死になんか誰がなるものか、と頑張っちゃったのがハイドさんです。
 世の中気合だ根性だ、不老不死などただの逃げ、生涯現役を貫き通す、と力説するハイドさん。実に暑苦しいおっさんであります。

 水魔法使いのスプラとは浅からぬ縁が……というか、この二人の話を総合して考えると、スプラの新しい一面が見えてくるような。第一印象からは見方がだいぶ変わると思いますよ。

シャドウ  さて、そろそろ本作のメインヒロインに登場していただきましょう。シャドウです。
 1Fで出会う塔の案内人、主人公のパートナー。会って5秒でわかると思いますが、真性のドMです。
 それ以降、主人公そしてプレイヤーは、シャドウから情報を聞くか、いぢめて遊ぶかの二択の間で心を惑わせることになります。
 それもこれもみんな、放置プレイをする度にカワイイ反応をしてしまうシャドウが悪いので、一切プレイヤーには落ち度はないのです。

 先述の通り、彼は不老不死ですので、見た目はこんなでも何万年も生きてます。
 主人公から見るとただのオモチャなんですが、いろんなところに因縁をバラ撒いて、魔法使いを塔に呼び寄せてきたので、ほとんどの挑戦者は快く思っていません。
 もちろん実力もずば抜けており、本気を出せば他の挑戦者とは一線を画す魔力で圧倒してきます。
 本当に若かった頃、実弟のレジー君と大戦争をやらかしたらしく、その時は悪逆非道の限りを尽くしたそうです。こんなカワイイ奴のくせにね。
 この塔の主ヴァイロンに対して含むところがあるようですが、はたして彼の目的は何か、というのが本作のメインストーリーになります。

 しかし、プレイヤーから見ると、どうにも憎めないヤツです。
 そのあまりに愛くるしいツンデレぶりから、本作の人気ナンバーワンとなってます。

レジー  しかし、シャドウと人気1, 2位を争う弟、レジー君だって負けちゃいません。
 見てくれは美青年ですが、底知れぬ腹黒さが垣間見える彼、真性のドSです。慇懃無礼のかたまりであります。
 初登場が20Fとずいぶん遅いので、オモテ面では影が薄いのですが、本領はウラ面に入ってから。そろそろシャドウいじりも飽きてきたかなーという頃合いで登場して、ウラ面の案内人を買って出ます。
 今まで通りシャドウいじめをしたい人は、引き続きシャドウも選べるのでご安心を。しかし特にこだわりがないのであれば、レジー君と付き合ってみると新鮮な気分が味わえますよ。

 しっかしまあ、レジーはほんとに兄上が大好きなんですね。
 シャドウとの大戦争以来、二人の間には深ーい確執が横たわってます。レジーも、シャドウも、互いに大切なものを奪い合ったような関係です。
 でも、不老不死と言うことは、無限に時間があるということ。互いに顔も見ず、無関係で過ごすには長すぎる時間なのです。
 まして二人は兄弟ですからね。どれほど時間が経とうとも、血縁からは逃れられないものですから。
 ……だからといって兄上の後をつけ回し、邪魔し続けるほど執着しなくてもいいじゃないか、と思うのですが。

 このかわいい顔で、慇懃にねぶられ続けるなんて想像しただけでゾクゾクしますね。実にけしからん。シャドウは恥を知るべきです。
 「僕は兄を憎んでいます。殺したいくらいに。」とかサラッと言っちゃうあたりもカワイイと大評判で、オモテ面からレジーが案内人になるパッチまで出回る有様です。
 こんなただれた兄弟関係を作り出してしまう、不老不死ってほんとろくなものじゃない、と痛感させられますねえ。

 と言った具合で、本作のストーリー・キャラクターの魅力について語ってきたわけですが。
 なんですが……ストーリーを楽しむという観点で見ても、少々問題点の目立つ作品ではあるんだよなァ……なかなか「チョーイイネ! サイコー!!」とは言いづらいところがあります。
 評点、プリーズ。

ハマリ度 : 7 / 10
 第一に操作性の悪さ。テキストの分量が割と多いくせに文字表示が遅い本作で、右ボタン押下で高速化、左クリックでページ送り(キーボード使用不可)という恋愛シミュツクばりの仕様は酷い。右腕が痛くてプレイ続行不能になることすらあった。
 本作の魅力はTCGらしからぬ、RPG的なインフレの過程にある。その点序盤は次々とSkill Getでき、MPも順調に上がる成長の喜びと、限られたECでどの魔法を習得するか頭を悩ませる愉しみがあるのだが、終盤になるほどSkill Getの確率が極端に下がり、MPがだぶつき、ECも収入が支出を遙かに上回り、かといってHPを上げようとすると黄のECだけ足りない、という頭打ち感が出てきてしまう。
 そのため終盤になるほど運ゲー・作業ゲーの匂いがきつくなる。クリアするだけでも、Skill Getのために繰り返し戦う必要が出てくる。さらにストーリーを楽しもうとすれば、条件がどんどん厳しくなっていくシークレットミッションクリアが必要になる。そもそもの条件探しも、最初は偶然達成できることもあるが、勝つだけでも一苦労の終盤ではパーフェクトを狙うのも無理、試行錯誤しようにも勝つまでが大変という茨の道。もっと序盤の快感を持続させられなかったものか。
 「習得したカードは何枚でもデッキに入れられる」「デッキの枚数以上にカードを手札に溜められる」等々、TCG慣れした人でも初見では戸惑う独特な仕様だが、それ自体は悪くない。綺麗にカードが被らず一枚ずつ入っている上にてんで弱い初期デッキを持たされ、デッキの組み方も教えずにいきなり戦わせる導入が悪い。必要十分な情報はチュートリアルに入っているが、誘導のやり方が悪くて損をしている。
グラフィック : 9 / 10
 無機的で鋭利なカード・背景画と、作者自らによるキャラグラフィックの組み合わせ。美麗な背景がますますキャラグラの味を引き立てている。
 だが文字表示の遅さ分はグラフィックからも減点せねばなるまい。右ボタン長押ししてようやく普通のノベル並の速度。HPが100を超える終盤では、右ボタンを押さないままでは5秒は待たないと戦闘が始まらない。
サウンド : 8 / 10
 全曲書き下ろし。テクノ基調でメロディアスではないのだが、特にキャラ別テーマは癖になる曲が揃っている。レジーのテーマ「悪貨は良貨を駆逐する」あたり、低ビットレートならではの音作りが感じられて面白い。
 ……なのだが、初期設定で音楽がミュート、効果音も最低レベルに絞ってあるのはどうしたわけか。せっかくの書き下ろし曲なのにあんまりな扱い。しかも音量設定はセーブファイル別なので、新規ゲームの度に設定し直さなければいけない。

 ただまあ、今までにない新しい魅力がたっぷり詰まった作品には違いないです。
 いままでTCGをプレイしてこなかった方も、騙されたと思ってやってみる価値はあります。TCGファンの方にとっても、プレイすれば新しい視界が開けることでしょう。
 めくるめくインフレの快感、ぜひ味わってみてください。

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