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■ 扉は君の鍵で開く

扉は君の鍵で開く
作者 [ 暗闇行灯 さま ]
ジャンル [ 学園探索アドベンチャー ]
容量・圧縮形式 [ 66MB・ZIP ]
製作ツール [ WOLF RPGエディター ]
言語 [ 日本語 ]
配布元 ダウンロード先

(補足)
2021.01.06:現在の最新バージョンは1.16です。

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レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 10/10 9 /10 52/60 B
赤松弥太郎 9 /10 9 /10 7 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:10 サウンド:9

開けも開けたり、12の扉。

本作「扉は君の鍵で開く」は、謎解きと聞き込みを重視したアドベンチャーです。それ故に、ネタバレに対する警告もかなり厳しくなっています。
「11話以降の画像使用は禁止」と、readme, 公式ホームページなどあらゆる箇所で警告しているほど、終盤への言及に慎重になっているのです。
当然、私自身もこの警告には納得しています。「流石にストーリーの最終盤をばらすのはダメでしょ」…そう思ってプレイを進めていました。
実際に最終盤までプレイして驚きました。「9話までがチュートリアル、10話までがオープニング」…そう断言できるレベルで、11話の展開は急転直下となります。このレビューをご覧の皆様には、ぜひ予備知識皆無の状態で11話を読んでください。

私がこのレビューで触れるのは、「なぜチュートリアルに9話も必要なのか」という点。それほど、本作の攻略法は複雑で導線を見失いやすいものなのです。
「依頼人や奉仕活動部員から得たキーワードを校内の人間に投げればいいんだな」…そう判断すると、いくら時間を費やしても終わらない無間地獄に突入します。大半の登場人物と大半のキーワードは、質問したところで「特に情報はなかった」と無味乾燥な反応しか返ってきません。「会話履歴」に溜まるキーワードのほとんどは、何一つフラグが立たないゴミ情報なのです。その中から選り分けた有効なキーワードも、ほとんどは他のシナリオでは使えず、解決後は同じくゴミ情報になってしまいます。
そう、本作の攻略手順は、「ほとんどが無価値で無責任な『うわさ話』の中から、かろうじて使える情報を選り分ける」という、それだけで専門職となる取捨選択力を要求されるのです。シナリオに応じて「使える情報」の基準も微妙に変わるため、スムーズに攻略できるかどうかは「刑事のカン」が当たるかどうかに掛かっています。
ただし、大体の「傾向」は存在します。

そして、依頼解決を進める中で「本筋には関係ない、解決すればお菓子がもらえるサブクエスト」と「聞き込みで獲得したキーワードを投げるだけでは立たないフラグ」が出てくるのが、更に頭を悩ませます。
それ故に、私はチュートリアルの9話で攻略Wikiに頼らざるを得ませんでした。「物で釣れ」と言う宗助のアドバイスから、(9話以外ではまず使用しない)持ち物>飲食物>渡すコマンドを使う…までは攻略なしで判ったのですが、手持ちのお菓子を渡しても全くフラグが立たない有様。演劇部員の一人が言う「のどが渇いた」という些細なセリフから何を渡せばいいか判別しなくてはいけないのです。
※ 上記は攻略のネタバレに触れていますが、「チュートリアルの9話だし構わないかな」と判断しました。
これに限らず、本作のゲーム内でのヒントは漠然とした箇所が多数あります。「○○に聞いたら?」というヒントから○○の居場所を聞くには更に質問が必要ですし、前の質問者と次の質問者で有効なキーワードが異なるケースすらあります。
「製作者のシナリオ」と「プレイヤーのカン」にズレが生ずると、無駄に展開が迷走する…本作はシティアドベンチャーに付き物の難点を抱え、それが最大の欠点となる作品なのです。

本作の「情報を1つずつ積み重ねて真相を推理する」システムは、上記の難点も抱えていますが、「カンが上手くハマった時の、とんとん拍子に話が進んでいく快感」も同時に抱えています。
本作では、最初から最後まで「考えてゲームを進める」姿勢が求められます。「道筋に従って、1つずつフラグを立てる」帰納法が通用しないのです。「有効なキーワード・有効なキャラをあらかじめ選別し、有効な情報が手に入ったらそのまま進み、進展がなかったら前提自体を変更する」演繹法が必要なのです。
「シナリオの『意図』や『裏』を読み取れない」人間だと、序盤の2~3話のクリアすらままならない危ういシステムを基本とした本格アドベンチャーですが、ウディコンで総合4位フリゲ2020で6位という高評価を獲得したあたり、やはりフリーゲームのプレイヤーはゲーム慣れした人が多いことが実証されます。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:7

世界なんてマインドの中で生まれ変わるよ

 ボクは本作、ウディコン結果発表後にプレイしたのですが。
 その時は、本当に残念なことをしてしまいました。
 とある事情でクリアを急いでいたボクは、11話の時点で時間切れになることを恐れて攻略サイトを見ちゃったんですよねぇ……。
 確かに、地頭の悪いボクでは11話の真相に自力で辿り着いたかも怪しいし、時間切れになるという予感は的中していたわけですが。
 しかし、もっともっと悩んで、悩み抜いた、という経験は、もう二度とできなくなってしまったのです。
 本当に記憶を無くしてやり直したいっ……!

 ボクのような人を増やしたくは無いので、当然ネタバレには自制的になるのですが。
 じゃあ、ネタバレせずに本作の何を語るのよ?という話になります。
 ボクは暗闇行灯のキャラの味付けが大好きで、ひとりひとりが生き生きと生活している同心円高校の魅力を伝えたいのですが、ネタバレ無しだとねえ……。
 ヤバい奴に見えて実はヘタレ常識人のアイツとか、アレとか、あんにゃろうとか、存在自体がネタバレで一言も触れられない、このもどかしさ。

 奉仕滑動部の4人に絞っても、どこからネタバレと言えるのか、判断は大いに分かれるでしょうが。
 そこは例によって、ボク判断で進めていきますよ!

とくのう・そうすけ

 なんでも同心円高校は、町外の人は変人でなければ入学できないという噂があるのだそうな。
 まあ実のところ、近山町出身者も変人揃いなので、あまり関係ないのでは? と思わなくもないのですが。
 そんな同心円高校の、「外部」4人だけで構成された奉仕活動部の中で、得能氏は変人ランク最下位に甘んじています。
 どんだけ世紀末なのか、まずは見てみましょう。

 理系クラスの特待生、テストの順位は学内1, 2位を争っている、ということなので、地頭もきっといいハズなんです。
 なのに、妙なところで頑固で、自分を決して曲げないところがあります。
 のど飴をめぐるエピソードが、その最たるものでしょう。
 本校は授業中、のど飴ならば舐めてもいい、という決まりなのですが、彼についてだけは禁止されています。
 その理由が、のど飴を噛み砕くのでうるさい、という。
 素直に舐めろよもったいない、と誰だって思うのですが、彼は決して曲がりません。今なお「飴は噛むもの」と断言して憚りません。
 お菓子の好みも、かみ応えや食い応えを主眼に置いており、味は二の次三の次。お前は犬か。
 そのくせ、ガムは吐き出すのが面倒とか言ってるあたり、ますます犬を彷彿とさせます。

 とても恵まれた体格の持ち主で、性格も沈着、言葉遣いも固いので、年齢が上に見られがちですが、これでも1年生です。
 趣味は筋トレ、とあります。きっと寮でやってます。
 筋肉は裏切らない、頑張れば頑張っただけの成果を出してくれる、という意味で、勉強好きな人がハマりやすい趣味みたいです。RPGだと延々とレベル上げし続けるタイプですね。
 しかし彼に言わせると、筋トレは「あんなの運動じゃねーよ」とのこと。
 いったい彼にとって、運動とはどんなものなのか。気になるところですよね。
 そして何より、運動部でもなければ知的とも言いがたい奉仕活動部に、なぜ彼が所属しているのか。それが謎です。
 詩織や楓と特に仲が良いようにも見えないのですが……?
 このあたりの謎は、本編をクリアしただけではわかりません。
 ぜひ、みなさんの足で調べて、解明してもらいたいと思います。

 彼の最大の欠点として、面倒くさがりである点が挙げられます。
 「これは、わからん。もう適当に済ませてしまえ」などと放言するので、主人公達の調査ではあまり役に立たない感じ。
 しかしそれでも、面倒見の良いヤツではあるんですよ。
 すっと気がついて窓を閉めてくれたり、醤油を取ってくれたりするので、寮ではおかんと呼ばれているそうな。

さとう・かえで

 「え、2番目がこの子?」と思われるかも知れませんが。
 まあ、4人の中で変人ランクではトップでしょう。学内でも屈指です。
 ただこの子、残している他の2人と比べれば真っ当なよい子なので、この位置での紹介となりました。
 奉仕活動部、ひいては本作の台風の目なのですが、台風も目の中に入ればとても穏やかだったり……しませんか? しませんか。

 彼女の特徴は、もう第一印象の通りです。ともかくうるさい。
 静かにしているということがまったくできず、黙ってろといくら言われても、思ったことをすぐ言動に移してしまいます。
 中学時代のあだ名が宇宙人でシカトを受けていた、という話も、さもありなん。
 何しろ危なっかしい、秘密を共有できない相手では、友達にはしづらいですし、生理的にムリ、という人も、多数いるでしょう。
 勉強は、中学時代はそこそこできていたらしいですが、今は下の上くらい。運動も得意ではありません。
 ちょっとずぼらで、精密さに欠け、興味の持てないことにはまったくだらしないんですよね。

 これだけだと、ただの前頭葉が弱い子で終わってしまいそうですが。
 しかし、上の画像をよく見ていただきたい。
 「空気が読ない」ではないのです。「空気を読ない」のです。
 つまりコイツ、意図的にぶっ壊してやがる。
 この子、乳幼児みたいに相手の顔をじ~~~~~っと見る癖がありまして。絶対バカな男子が勘違いするヤツだ。
 なので、自分が正直に発言すればどういうことになるか、わかってないわけが無いんですね。でもやっちゃう。その方が面白いから。
 空気を読んで、目立たないように生きていく、予定調和の世界なんて何も面白くないじゃありませんか。そこには進歩も成長も無い。
 だからこそ彼女に、起爆剤としての役割を期待する人達も、当然いるわけです。
 しかし、彼女がトリックスターになるか、ただのトラブルメーカーで終わるか、それは周りの環境次第であって、本人にはあまり関係ないこと、とも言えます。
 だって彼女、そーゆー難しいことはお構いなしで、自分にとって面白いかどうかしか考えないんだもの。そこがヤバいヤツなんです。

 漫画・アニメ・ゲームのオタク3要素を満遍なく愛しており、発言には時々ネットスラングが混じります。
 でもオーストラリア4連発はちょっと元ネタがわからない。地理の授業でもやっていたのでしょうか。
 またブルボン軍所属でもあります。ブルボンの菓子を持っていけば、並々ならぬ愛情を語ってくれるはずです。

はぶ・しおり

 さあ来ましたよ詩織ちゃん。
 画像で持ってるの、ポッキーですかね。それっぽく見えますね。
 彼女、ポッキーも好きだけど、実はポッキーよりもトッポが好きという話。最後までチョコたっぷりだもん。
 太らないように気をつけていて、本当はレモン系炭酸が好きだけどお茶で我慢しているとのこと。柑橘テイストの炭酸水とか、いいんじゃないでしょうか。

 ボクの乏しい人生経験から言わせてもらうと、ギャルってなんらかの理由でギャルになってることが多いのです。
 ギャルって、少なくとも「ふつうじゃない」んですよ。わざわざそうしないと、ならない。
 そもそもギャルでいること自体、リスクもありますし、それでも敢えてギャルでいる、というのは、「自分がふつうではない」というアイデンティティがどこかにあるのは、ほぼほぼ間違いありません。
 実際はどうか、というのはまた別の話ですが。
 あと、それを理由にしてボクがその人種に対してなんらかの感情を持っている、という話にもならないので、そこは念のため。

 ギャルであることと勉学には、全然、まったく、これっぽっちも関係が無いので、彼女が文系の特待生で、得能氏と成績1, 2位を争っていることは、驚きに値しません。
 乱暴に見えて人当たりがよく、人気もあり、先生からの評判もいい、しかも美人と非の打ち所がなく、かえって「完璧すぎて苦手」という人がいるくらいです。
 なので問題は、例によって、なんでキミが奉仕活動部なんかにいるの? という点に絞られます。
 本人は、「それっぽい奉仕活動をして内申点稼ぎ」などと、それっぽいことを言ってますが。
 本心がどこにあるのか、なんて、誰の目にも明らかです。
 友人から「嫌なら面倒見なきゃいいのに」と心配されるくらい、楓とべったり一緒にいますから。
 楓とは同中(おなチュー)だし、寮でも相部屋だから、奉仕活動部もまあ、自然の流れでって感じなんでしょうか。
 面倒見のいい詩織は、いつも楓に振り回されていて、とても気の毒ですね。

 いや、もうこれ以上は言えないぞ。これ以上は本編のネタバレになってしまう。
 終盤になれば、ツンドラに封じ込められたメタンガスのような勢いで彼女のヤバさが噴出します。しかも本編進行上避けられません。
 まあ、その前からちょこちょこと、ヤバさは醸し出してはいたのですよ。主人公が「変な商売しないでね?」と釘を刺す程度には。
 悪徳商法はともかく、生徒会長に立候補くらいは、現実的な路線としてありそうですよね。
 しかし、しないんだろうなあ。楓という名の枷がある限りは。
 本当に、楓が詩織のそばにいてくれて良かったって、ぼかぁ思いますよ。

 しかし反面、楓の側から見ても、詩織という制御棒が挟まっているのも事実であり。
 この3人で奉仕活動部を続けていたとしても、せいぜいみんなで菓子食ってだべる程度で、特に何事も起こらなかったはずなのです。
 でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ。

たまり・ゆう

 本作の主人公は、男女と名前を設定できます。
 男なら田鞠翔(たまり しょう)、女なら田鞠優雨(たまり ゆう)がデフォルト名です。
 そして珍しいことに、「女」の選択肢がデフォルトなんですよ。
 ボクは、初見で女性で始めたからというのもありますが、どちらかというと女性の方が面白いと思ってます。男性だと、ややメッセージがズレる感じがあるというか。
 もちろん、選択肢として用意されている以上は、選択を否定するものではありません。
 が、以下では主人公を「彼女」「優雨」呼びで進めます。

 上の画像では「フツーの転校生」と書いてありますが、「フツー」ほど怪しいものはない。
 案の定この直後、彼女はとてもフツーとは呼べないことが発覚します。「連絡先…交換してくだサイ…///」の一件ですね。
 ギャグかと思いきや、ストーリーが進むほどガチであることがわかってきます。
 これが恐ろしいことに、最後まで進めても、この時一体何が優雨ちゃんの心をズキューンしたのか、まったくわからないんですよね。
 この一点だけはプレイヤーは、彼女にまるで感情移入できないんですよ。

 優雨が楓を好きなのは、事実です。疑いようがありません。
 どのくらい好きかというと、ウンコの調査と言われてすごく嫌そうな顔をしていたのに、楓に「犯人捜しがんばろー」と雑に声をかけられただけで「🌸うん🌸」と満面の笑みで答えてしまうくらいです。
 では、これはラブなのか、というと……ラブなのか?
 ボクにはどうもそうは思えません。
 ボクが彼女の感情に一番近い言葉を選ぶとすれば、尊崇でしょうか。
 ドルオタが推しのアイドルを奉るような愛し方で、いわゆる恋愛感情とは質の違いを感じます。

 詩織は当初、優雨は押しに弱く、楓に流されているだけと見なしていました。
 甘かったですね。実にうかつでした。
 優雨は楓を全肯定します。
 独占欲も、甘やかしも、何も無い。彼女を深く知ろうとすらしていない。ただただ全てを受け容れ、肯定します。
 しかし一方では冷静で、楓が実際宇宙人で、同心円高校の地球人と交流すれば、文化的に摩擦が起きることもわかっています。
 だからこそ、一生懸命間に入ってフォローするのです。
 その結果、楓はその素質を遺憾なく発揮し、破壊者として開花していく方向に進み始めます。
 これはまだ、ほんの始まりに過ぎません。
 優雨が同心円高校に来てから、奉仕活動部も、高校も、近山町全体が、本来「そうありたい」と願っていた方向へと進み始めた気がするのです。

 頭が良すぎてバカになりきれないのが、最大の弱点でしょう。真面目すぎるんですわ。
 「変わってる」と言われた程度でバグって固まるようでは、先が思いやられます。
 自分が変人だと認めてしまえば、楽になれるのに、ねぇ?

 ええと、これくらいなら、ネタバレしてない範囲に収まってる、かな?
 ぜひぜひ、他のキャラについてはみなさんプレイして確かめてくださいよ。
 ボクの好きな伊藤凛ちゃんとか、名前もはっきりわからない生徒たちまで、とても個性豊かに仕上がっています。
 その個性豊かなキャラクターたちを引き立てたのも、本作の「質問システム」の醍醐味なのですから。

ハマリ度 : 9 / 10
 11話より前と、11話以降で、作風が大きく変わる。システムは変わらないが、シナリオも、プレイ感も、推理の質もまったく変わる。
 「11話こそ本作の真髄」と言う人の意見も頷けるが、「10話までの日常が好きだった」と言う人の意見もよくわかる。11話を始まってしまえば、もう10話以前の雰囲気には戻らない。11話になって行動範囲は広がるのに、どうしても閉塞感が拭えない。
 作品の幅という意味では、マルチエンディングのフリーシナリオで、いつでも実家に帰ってエンディングを迎えられた前作「落葉の大地を走れ」に軍配が上がる。比較するのも酷ではあるのだが。

 誘導に従って進めばクリアできた今までとは違い、自分の頭で推理しないと隠された真相に辿り着かず、その真相を知ることで12話が開始できる、という11話の構造は、12話をおまけと位置づけるなら良い着想だと思う。
 だがプレイヤーからすれば、11話の真相は「見えているゴール」なので、辿り着かないと割り切れなさが残る、というのが問題点。
 おまけはあくまでおまけ、知らなくて良いことと位置づけて、誘導の範囲内で、プレイヤーが全て知った、全て終わった気分になってスッキリ終われるエンディングであってほしかった。

 システム自体はこなれているし、どこまで作り込んでも果てが無いこのシステムを、なんとかまとめ上げただけでも評価できる。
 一部、ファンタジーに片脚突っ込んでいるのも確かだが、世界観として大きな不整合だとは思わなかった。それだけ、そこに生きる人々が豊かに描けていたということでもある。
グラフィック : 9 / 10
 キャラグラとUI担当のくらいさんの仕事には一貫性があり、わかりやすい。キャラチップ・マップチップの組み立てもこなれている。
 派手な演出がオープニングに集中しているせいで、息切れ感が出てしまっているのが残念。
サウンド : 7 / 10
 BGM書き下ろしの努力は認めるが、音の厚みが足りない。MSGSの貧弱な音色と相まってとても薄く聞こえる。
 曲想自体は静かで邪魔にならないのが良いが、そのせいで本作が地味な印象になっているのは否めない。本作のストーリー展開は十分にドラマチックなので、もっと過剰に演出しても良かった。

 いまいちシナリオとリンクしていないと言われる、本作のタイトルについて。
 なにかの「キー」で状況を拓く、というシチュエーションが印象に残っているか、というと、そうでもないです。
 ただ、山場を迎えるまでに最低数時間はプレイが必要になる本作が、とかく短期決戦型に有利なウディコンという場所に投下されたことは、新しい扉開いちゃった気がしています。
 本作が、点数という形での評価が振るわなくとも、多くの人の心に残ったことは、おそらく間違いないのでしょうから。

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