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■ イーザディアの迷宮

イーザディアの迷宮
作者 [ 編み星 さま ]
ジャンル [ アクションRPG ]
容量・圧縮形式 [ 597MB・ZIP ]
製作ツール [ RPGツクールMV ]
言語 [ 日本語 ]
備考 [ R-12指定(ホラー・ジャンプスケア表現あり) ]
配布元 ダウンロード先

イーザディアの迷宮 イーザディアの迷宮 イーザディアの迷宮

レビュワーハマリ度グラフィック サウンド合計総合判定
ES 8 /10 8 /10 8 /10 51/60 B
赤松弥太郎 9 /10 9 /10 9 /10

 《 ES 》  ハマリ度:8 グラフィック:8 サウンド:8

エンドコンテンツから始まる物語

本作「イーザディアの迷宮」は、かなり高難易度のアクションRPGです。高難易度の理由となる最大要因は、「強化がほぼガチャ運に頼られる」という点です。
一応、強化石と生命の石という固定値強化要素こそあるものの、どちらも下手なUR装備以上のレアアイテム。即座にHPがアップする生命の石はともかく、強化石の強化は装備に振り分けられるため、やはりガチャで強い装備を引くのが大前提となります。
正直言って、難易度「ノーマル」の段階では、103階層から早速出現する半魚人とコカトリスの時点で脅威です。本作のメイン攻撃は体当たり。1発殴れば、当然1発殴り返される仕様。「半キャラずらし」のような回避法は存在しません。1発ごとにごっそりと奪われるダメージを減らすには、装備の強化しかないのです。
SSR程度の武器ランクでは、相手の色に合わせた弱点を突いたところで、物量に押されて返り討ちに遭います。装備の切り替え、およびHP回復のためには、各所に配備されたクリスタルに触るほかありません。すなわち、本作で必要な攻略法は「ヒット&アウェイ」。必然的に攻略時間がかさむ仕様になっています。
うっかり囲まれれば、その「ヒット&アウェイ」での回復すらできません。HPが尽きても何も奪われず帰還でき、どこでもボタン一発で発動できる脱出魔法もありますが、それでも「攻略が一切進まない」ペナルティはかなりのストレスとなります。
また、マップ運によっては、宝箱どころか緑の魔法陣(階層移動)のある場所が、本来は「避けて通れ」とアドバイスされるレベルに強いモンスターが一本道にミッチリ詰まった先に配置される場合も。「運を天に任せる」=「簡単なマップ・レア装備・有利なイベントの発生を祈る」が攻略法の一つになるレベルに、本作は難しいのです。

…それが、1か月前にイチオシ告知した時点での評価でした。その直後の2024.06.13、本作の難易度が緩和されました。「イージー」に設定すれば、敵のダメージおよびレア出現率がかなり緩和されます。半魚人とコカトリスならばSSR装備であっても「囲まれても物量に押される前に露払いでき、HP回復場所まで生き残れる」レベルには難易度が下がりました。
ただし、その時点であっても104層の牛や赤スライム、106層以降の素早い飛行モンスターは相変わらずの脅威です。106層以降になると、敵の攻撃も単純な体当たりばかりではなくなります。透明化、凍結付きの飛び道具、自爆モンスター召喚など、敵の攻撃パターンも増えていき、そのどれもが対策必須となります。
この時点ならば、こちら側もレア装備による特殊効果が使えるようになります。能力強化・魔法攻撃・自動回復・一定時間モンスターを回避と言った強力な追加効果を発動できる武器が手に入るのです。
しかし、この特殊効果にも頼ってばかりはいられません。本作の特殊効果は「一定時間ごとに溜まるMPが満タンになったら発動」という仕様。発動タイミングを計り、発動していない時間は退避に専念しなくてはなりません。「ヒット&アウェイ」は、いくら攻略階層が進んでもいくら難易度が下がっても決しておろそかにはできないのです。

本作、強力装備を手に入れた時の無双感はかなりのものです。特に、盾はレア度による恩恵が高くなっています。敵の攻撃力を上回る防御力が手に入ればノーダメージで一方的に殴れますし、それでなくてもHPが尽きるまでの猶予時間が増すため、生き残れる場面が飛躍的に多くなります。
それは、逆に言えば「宝箱や泉ガチャで高レアが引けないと、ずっと同じ階層を右往左往する他ない」という停滞感にも繋がるわけで…。特に難易度が高かった初回バージョンでは、その停滞感が顕著でした。
「現在の最高階層で宝箱を探す」か「低階層を周回して集めた金で泉ガチャを回す」か、どちらが効率がいいのか分からない(公式情報が無い)というのが、本作序盤の悩みとなります。この点、イージーでレア出現率が上がって(個人の体感です)本当に助かりました。
「チャットルームにたむろする冒険者のアドバイス」など、プレイを進めないと解放されない情報が、本作には多数詰まっています。それを探し、またイベントをこなすために強くなることで、より深い攻略が楽しめる。本作はその点では「深い攻略要素を楽しめるアクションRPG」です。
ただし、深い攻略を進めると、まれにバッドイベントに遭遇する点には、改めてご注意を。ジャンプスケアのみならず、場合によっては(ゲーム内の)プレイヤーに損害が来る可能性もあります。

 《 赤松弥太郎 》  ハマリ度:9 グラフィック:9 サウンド:9

本当の自分へと 君となら走り出せる時が来る

タイトル画面

 ダウンロードして、起動するじゃないですか。
 「初回起動の時はカーソルをNew Gameに合わせておけよ」と毒づきながら、↑キーを押すじゃないですか。

Continue?

 おや? となるわけですよ。

オープニング

 なんかデモシーンで魔王倒されたんだけど。

オープニング2

 Stuffロールまで始まっちゃったんだけど。

「あなたの」名前を入力

 で、このタイミングで、あなたの名前を聞かせてください、とくる。
 このサイトを見ているようなプレイヤーなら、「ははーんそういうことか……」とピンとくるでしょう。

 起動からここまで、わずか1分足らず。このスピード感がたまりません。
 仮にこの時点でピンと来なくても、夢現の紹介文に書いてあるようなゲームじゃないことは伝わるでしょう。
 そして、その時点でピンとくるような人なら、なぜ夢現の紹介文の1行目に「――アプリゲーム『イーザディアの迷宮』紹介文――」とわざわざ書いてあったか、理解することでしょう。

 ……さて。
 ここまで書けば、ボクが以後、「『イーザディアの迷宮』というアプリ」と書いた場合と「本作」と書いた場合で別々のものを指すことはご理解いただけると思いますが、いかがか。
 ご理解いただけない方は速やかに読むのを止めて、本作をプレイしてきてください。
 誤解されちゃかなわないからね。

 『イーザディアの迷宮』というアプリについて、端的に言えば「悪趣味」の一語です。
 まず、大量に含まれているジャンプスケア
 なんの前触れも無く妙な画像を出したり、大きな音を出したり、宝箱を開けた瞬間に大きな手形で画面を覆ったりしてきます。
 あの手この手でおどかそうとしてきて、むしろ楽しくなってきます。が、普通に邪魔です。

 このアプリの妨害はその程度で収まるはずも無く、本当に悪意に溢れています。
 突如、絶対に勝てないレベルの敵が徘徊するフロアに飛ばされたり。
 呪いの武器を強制装備させられたり、一定時間後に死亡する呪いが掛けられたり。
 そんなものが序の口に感じられるレベルの、悪質そのものの仕打ちにも出くわします。
 笑って済ませられないのが普通じゃないかなあ。

 嫌がらせ無しでも、敵のインフレが極端すぎて、今まで100層クリアしたアイテムが全く通じない、今までの努力を否定する方向に行っちゃってますからね。
 ストーリーもほぼほぼ存在せず無味乾燥な様子で、苦行としての純度が高い。
 アプリとして行儀の悪すぎる振る舞いも目に余るし、アプリとしての『イーザディアの迷宮』は、まあクソアプリと言い切ってよろしいかと思います。

 では、本作はどうなのか、と言うと。
 そんな悪趣味アプリを舞台にする本作もまた、悪趣味なんじゃないのか? という疑問は、当然湧くでしょう。
 舞台もまた本作の一部である以上、否定できないところはある、と認めますが。
 しかしそこは、本作とあなたの間の信頼関係による、と言うしかありません。

 本作の作りそのものはとても丁寧なんです。
 アプリ『イーザディアの迷宮』の段階で、作中人物の言葉を借りれば「変なとこで律儀」でした。
 102層の敵は本作の基礎戦術、弱点武器に切り替えて倒すことを体験させてくれるチュートリアルです。
 2属性の敵しか出てこないし、きちんと両属性に対応した武器を初期装備として用意してくれてます。
 『イーザディアの迷宮』を100層までクリアしてる人に対してはこれ、不要なチュートリアルですからね。
 敵のインフレ率が異常とはいえ、その上昇に合わせた装備は手に入りますし、丁寧に攻略すれば1層ごとに強くなっている実感が得られるし、そのような達成感を誘導してくれます。
 「アイテム回収率を表示するってことは、時限アイテムは存在しないってことでOK?」といった、近年のお約束、行儀の良さを備えています。

 そして、アプリ『イーザディアの迷宮』に存在せず、本作にだけ存在する要素があります。ストーリーです。
 はじめはなかなか見えてこない要素ですが、迷宮の謎に迫り、作中人物と交流して見えてくるストーリーは王道そのものです。
 メタフィクションというと、どうしてもその形式でなければ表現できないような多層的な解釈とか、ぶっ飛んだギャグだとかを期待する人は、ボクの他にも多いでしょう。
 そうした方々には残念な知らせかもしれませんが、本作はその意味で、メタフィクションらしさの薄い作品と言えます。
 しかしその分、安心感があるのです。
 友情を信じ、努力が報われる世界を、悪意や誘惑に勝利して掴み取る……
 その本作の姿勢を信じられれば、仮にゲームごと強制終了しようと、セーブデータを書き換えられようと、必ずやその苦難を越える、面白いものを見せてくれるだろう、と期待できるのです。
 まあ、さすがにそのレベルの嫌がらせは、メタ的な警告を入れてくるとは思いますけどね……仮に、の話ですよ?

 理不尽はあくまで演出として、作品には信頼感を持ってもらう、なんて、字面を見ただけで相当な無理難題です。
 演出上の理不尽以外、プレイヤーが少しでも不信感を抱きかねないことは徹底して排除する、ということですから。
 本作がイチオシに内定したのはバージョン1.00の公開初日、2024年6月1日のことでした。
 それから1ヶ月あまり、バージョンは既に1.71にまで上がっています。
 少しでも親切に、わかりやすくと腐心してきたことが、更新履歴からも伝わってきます。

 ボクが難易度NORMALでTrue Endクリアしたのがバージョン1.20、バージョンアップして図鑑コンプを目指したのが1.61でしたが、そのバージョンアップでも目に見えて親切になってました。
 そこまで親切になってもまだ武器図鑑の最後の1つが埋まらないのは、もちろん最後の隠し要素だからですし、ボクがその程度のプレイヤーだからだと言わざるを得ません。
 ほんと、1箇所だけどこか見逃してんだよなーどこだろう……?

ハマリ度 : 9 / 10
 数値インフレには向いていないとされるアルテリオス計算式を採用、かつ一撃で倒せる敵であっても必ず一発はダメージをもらう仕様のため、本作では防御力が極めて重要。防御力を上げる手段は盾の交換以外にほぼ無く、HP回復手段も限られているので、いかにダメージを抑制して、より強力な盾などの装備を収集するかが、想定される本作本来の駆け引きだ。
 ただしその駆け引きを楽しむには、高度なシンボルエンカウント避け能力が必要になる。狭い通路の多い本作のマップは探究心を煽るが、シンボル避けに適しているとは言いがたい。「手強いが鈍重なので回避しよう」と評されている敵が、実際には狭い通路に居座ったりしてむしろ回避困難、という事態も頻発する。
 敵の弱点を突けば与ダメージが2倍になり、結果戦闘が短くなって被ダメージも軽減できる、という点は特に序盤で重要ではあるが、敵の種類を選り好んで接敵するのは至難の業。装備替えのクリスタルも分散している。ボクのような下手くそだと、「進行方向で多そうな敵の弱点に合わせよう」とか「このフロアで一番面倒な敵の弱点に合わせよう」程度の大雑把な戦略にしかならない。強い敵が弱点にかかわらず満遍なく出てくる終盤以降は、結局はステータスと強力なEXスキルが大正義、という方向に落ち着いていく。
 本作が提示している戦略的な楽しみは、実のところスイートスポットがかなり狭く限定的。むしろそれを覆す「抜け穴」、救済措置として用意された一段レベルの違う装備に、楽しみを見いだす人の方が多いのではないか。ボクもそのクチで、最序盤で手に入る救済武器、駆け引きをぶち壊す「魔剣ダーインスレイヴ」が無ければここまでは楽しめなかっただろう。
 ストーリーも含め多様な面白さを提供できているとは思うが、ストイックなリソース管理と、強い装備で敵を蹂躙するハクスラ的な楽しみは相反するところが多く、今ひとつどこを主眼にしているのかが見えにくかった。ハクスラに寄せるなら、もっと難易度上昇は控えめで長く楽しめた方が良かった。リソース管理を売りにするならもっと正確な操作ができるシステムにした方が良かっただろう。
 もう1点、「脇目も振らずTrue ENDを目指すと3時間」という情報は、初見プレイヤーにとってはあまりにも不親切・不正確。ボクが初見でTrue Endに到達した時、プレイ時間は15時間を超えていたので参考まで。今までのボクのレビューを読んでいる人なら、それがどの程度遅いのか推測できるでしょう。
グラフィック : 9 / 10
 書き下ろしのキャラ絵・一枚絵は、ともすると無機的な印象を与えかねない本作に、人の手のぬくもりを感じさせるという意味で効果的。
 風林火山刃の盾を装備しているかどうかは、ストーリー進行によってハッキリ分岐させた方がいいと思う。差分が会話によって切り替わるのは、ゲーム的都合を必要以上に感じさせて良くない。
サウンド : 9 / 10
 BGM・SEともに使用シーンが適切。選曲も安定している。
 本作では複数同種類のモンスターが出現するのが常、その時はSEがうるさく感じる。特にブライオンは予備動作を音で判断するモンスターだが、複数出現されると聞き分けが厳しい。突進時正面からだけでなく、背面から攻撃しても被ダメージが増加する点も含め、納得感に乏しい。

 導入から飛び道具を飛ばし、目を引く要素を多数備えた作品ですが、芯のところはまっすぐで、そしてアツい。
 この作品をプレイして、「ゲームってやっぱり面白い」と思えたなら、それこそが本作の本望でしょう。

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